携帯型ポイントオブケア超音波による定量的肝脂肪評価: 成人における技術的実装とパイロット試験
Quantitative Liver Fat Assessment by Handheld Point-of-Care Ultrasound: A Technical Implementation and Pilot Study in Adults
Abstract
目的
成人の肝脂肪を評価するために、携帯型ポイントオブケアUS(POCUS)装置を用いて定量的超音波検査(QUS)を実施し、その実行可能性を検討し、その性能を評価すること。
材料と方法
この前向きIRB承認、HIPAA遵守のパイロット研究では、過体重または肥満の成人を登録した。参加者はプロトン密度脂肪率(PDFF)を推定するために化学シフト符号化磁気共鳴画像法を受け、1ヵ月以内に熟練ソノグラファーと初心者オペレーター(USスキャン経験なし)によるPOCUS装置によるQUSを受けた。POCUS装置で収集した肝臓の高周波データを、プローブ固有のキャリブレーションを用いてオフラインで解析し、2つのQUSパラメータ(減衰係数(AC)と後方散乱係数(BSC))を推定した。脂肪肝(PDFF≧5%と定義)の有無を分類するために、各パラメータのAUCを推定した。各パラメータとPDFFの間のスピアマン順位相関を推定し、その有意性を評価した。
結果
参加者18名(平均年齢43歳±14歳、女性17名)のうち、8名が脂肪肝(PDFF≧5%)を有していた。ACおよびBSCはいずれも脂肪肝を正確に分類し、そのAUCはエキスパートで0.96-0.97、初心者で0.88-0.89(いずれもp<0.01)、PDFFとの相関はエキスパートでrhoが0.65-0.69、初心者で0.58-0.65(いずれもp<0.02)と有意であった。
結論
QUSはPOCUS装置で実施可能であり、過体重または肥満の成人において限定的なトレーニングの後、熟練者でも初心者でも実施可能であり、有望な初期結果が得られた。
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WFUMBの雑誌Ultrasound in Medicine and Biology 3月号からです。前回紹介した携帯超音波装置IQ+を使用した研究です。このプローブで減衰、後方散乱から肝脂肪定量を測定する、というものです。手法としては現在の先端の主流の方法です。本装置に備わったアプリケーションではなく、RF信号とBモードを取得装置外のPCのMatLabで解析したようです。測定は右肋間操作で肝を描出して、ボタンを押すと5~10秒の息止めでデータを取得するそうです。ROIは手動で置きますが、この際、肝の端や各種音響陰影は避けますが、血管は避ける必要が無いということで、それについては既報[20]で報告済みとのことでした。
結果はAbstractに示す通りで、PDFFとの相関も良さそうです。こういった携帯装置でこれだけの精度であれば、据え置き装置の立場が無いというか...。装置に実装されれば一気に普及するかもしれません。