かんどころ
「給湯室での会話はたまたま傍で聞いた者が、卒倒するかもしれないレベルのものに限る」社内に御布令が通達された。遵守した給湯室はうってかわって静まりかえり、極めて稀にボソボソと会話が聞こえたようだの時と同じくして、悲鳴や馬鹿笑い又は何かが倒れる音が響き渡るようになる。何故かそこらにあったスキー板とズボンでの毎回急ごしらえのタンカを目でチラッと追ってみることが発生するしばしば。届く範囲に居た者は耳のスイッチを自発的に切るようになり、何故か会社の業務成績が落ち込んでゆく。
給湯室でストレスを発散せんとガンバる猛者共の会話は次第にとんがってゆき、溶接したヤカンの蓋が軽々吹き飛ぶような、丹精籠めた名店の和菓子がいやおうなしに半つぶれの十連団子差しになって高貴な稀人に供されている事態を見届けるような、極めてショッキングなものになる。
Nは退社後の赤ちょうちんで日本酒を3合、いつものことであるので少しは義務的にカラダにまわしてポツリ。
「燗どころってのは難しいもんだな」
ご主人はもちろん素知らぬふりをする。
(*'▽')。