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【蓮ノ空ラブライブ!大会】決勝戦で感じた恐怖
ごきげんよう、明日賽と申します。
先日開催されました、2024年度ラブライブ全国大会を現地で観戦しました。
今回のラブライブ全国大会
昨年10月より繰り広げられた地区予選、地方予選を経て決勝戦の地に集った全国津々浦々の強豪スクールアイドルたち。その中でも特に注目を集めたのが、
長野の地から突如現れた期待の新星、瑞河女子高等学校Edel Note。
選曲『Edelied』
そして、我らが石川県金沢市が送り出した蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ。
選曲『AURORA FLOWER』
両者とも素晴らしいパフォーマンスを披露され、そして結果は前代未聞、まさかの両者同率一位、後日決勝大会のプレーオフが開催される運びとなりました。
観戦してみた感想
さて、わたくしラブライブ大会の決勝戦を現地で見届けられたのは今回が初の体験でございました。これから試合が始まるぞというあの緊張感、会場を覆う普段のスクールアイドルのライブを観ている時とは別物の張りつめた空気、それらは今でも忘れられず頭に残り続けています。
そんな大会を振り返って思うのは、なにもかもがあまりにも一瞬で終わってしまったなという体感でした。
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そこは、夢のおとぎ話のような場所でした。
光が瞬くように、風が流れるように。
すべては、あっという間の出来事で。
だから、今でも。
実感が、湧いてこないのかもしれませんーー。
わたしたちはようやく、1年前に日野下花帆さんが語ったラブライブ全国大会に進出した時の感想を身を以て知ることになります。
大会レギュレーションでは、例年出場校のスクールアイドルはそれぞれが用意した自作曲、その1番を披露することになっています。
配信映像を確認したところ、瑞河の演目は約1分30秒。
蓮ノ空の演目は約1分40秒となっていました。
短い。あまりにも短すぎはしませんか。
これは柔道や剣道のように、相手から一本先取して勝敗を決める競技ではありません。アイドルが自分たちのパフォーマンスでどれだけの人の目を釘付けにできるか、それを競う大会のはずです。
そのために許されたアピール時間があまりにも刹那すぎて恐ろしさを感じました。
決勝会場に居合わせるまで、ラブライブ大会に抱くべきドキドキ感はもっと別のものを想定していました。
たとえば、
「出場するみんなが無事に実力を発揮できるだろうか」
だったり、または
「この勝負に負けてしまったら、叶えたかった大きな夢がひとつ無くなってしまうことになるぞ」
だったり。
だけどそれとは別の「彼女たちが曲に込めた想いが、彼女たちの意図するまま審査員、会場または配信を観ている全国の視聴者に無事に届くのだろうか」という新しい不安が芽生え始めてきました。これは想定外の事態です。
この決勝戦の場に集う強豪スクールアイドルたちは皆、当然のこと絶対に勝つぞという気持ちでこのステージに立っています。スクールアイドルを育んだ高校生活が、仲間たちが、その姿をずっと見守ってくれた母校が最高のものであったと証明するために、それぞれが優勝を目指してここまで勝ち進んできました。
それら万感の想いを詰め込んだ楽曲がもし聴いた人の心に響かなかったら?万が一にもそんなことになってしまったら……そう考えるととても怖くなってしまったのです。
たった1分半のパフォーマンス、うかうかしていたらサイリウムを折る間もなく出番が終わってしまいます。高校時代の思い出をギュッと詰め込んで作った楽曲なのに、何を歌っているのか意図を理解する間もなく終わってしまう。一瞬でも気を抜いていたら彼女たちの高校生活を取りこぼしてしまう。競技として成り立つラブライブのステージはそんな刹那的かつ残酷な場所なのだとその時わたしは思い知りました。
幸い、蓮ノ空を応援するのが目的だったわたしの席の周囲には、志を同じくする人たちが多く固まっていました。彼女たちへの応援はとても熱意があり、とても頼もしかったです。
それでも、どうしても考えてしまったのです。
この日のために用意した曲『AURORA FLOWER』は間違いなく素晴らしいものでした。だけど瑞河の楽曲に対してボルテージの上がり方がいささか緩やかすぎるのではないか、フィーバーセクションが少々短すぎるのではないかという、スクールアイドルステージというゲームをこの2年間プレイしてきた身としてはそんなスコアの上がり方が気になってしまって終始落ち着きません。
そもそも、たった一曲という短い時間の中に学校生活3年間の思い出全てを詰め込むことが本当に可能なのでしょうか。メンバーそれぞれが抱いている夢、目標をたった一曲に押し込めるなんてことが本当に実現できるんでしょうか。ましてや大会では情感を最も昂ぶらせる落ちサビ、ラスサビを用いない中で、そんな物理法則を超越する魔法のようなことが本当に叶うのでしょうか。
故に、最後までこの舞台に渦巻いているのは「祈り」なのだと思います。
これまでの積み重ねたものが報われますように。
どうかこの想いが見ている人に届きますように。
そして、ラブライブで優勝できますように。
わたしもまた、ひとつの願いをもってその場に集まった者のひとりです。願わくば、わたしは蓮ノ空に完璧な勝利を掴んでほしかった。
乙宗梢をはじめとして、彼女たちが過ごした宝物のような時間がなにひとつ間違いではなかったと誰の目にも、それこそ彼女たちの存在を知らない層に対しても一目でわからせてやって欲しかったと切に願っていました。
結果、同率1位でプレーオフとなりました。快挙です。ですが、あれだけ周到に準備を重ねていた蓮ノ空が、それでもスクールアイドル最強の称号にはまだ手が届かずにいます。つくずく勝負の世界は恐ろしいと感じます。どれだけ祈っても、その優勝という願いが叶う学校はたった一校しかありません。そんな大勝負を前にした時、未来がわからないというのはとても怖いことなのです。
でも、そんな恐怖心すらステージに立つスクールアイドルにとってはとっくの昔に乗り越えてきた感情なんですよね。
プレーオフ開催を知った両校のスクールアイドルは、次に再戦しても会場を最も魅了するのは自分たちだと信じて疑いませんでした。ある者は、もう一度ステージに立てる幸運を喜びさえしていました。「今」を駆け抜けることを選んだ人たちのメンタルはこの程度では折れないのだという、彼女たちの姿に改めて逞しさを覚えます。
「今この瞬間を大切に」
蓮ノ空がこの勝負に挑む際、全員で掲げたスローガンだそうです。
繰り返しになりますが、わずか1分半の楽曲に高校生活すべての思い出を詰め込むことができるのか、わたしにはわかりません。けれど、今日まで積み重ねてきた「今」をこの曲に乗せることだったら可能なのかもしれない。きっとそこに、過去の大会優勝者と通じる何かが隠されているんじゃないかと思えます。
今回のテーマにもなったオーロラは太陽風と地球磁場の関係のほか、様々な条件が噛み合ったわずかな時間だけ見ることができる、とても「今この瞬間」を意識した題材だったと思います。もし次にそんな素敵な光景を拝めるならば、その瞬間をなにひとつ取りこぼすことなく享受したい。改めてわたしはそう強く思いました。
以上、この大会で感じた自分の心の弱さをプレーオフ前のこの場に残しておきたいと思います。
今年の決勝戦はまだ終わっていません。
笑っても泣いても次で優勝者が決まります。
どんな結果になろうとその瞬間を、しっかり目と耳と心に焼き付けたいと思います。
いや。
蓮ノ空が優勝を掴み取ることを、心から願っています。がんばれ!
おしまい