誕生日での出来事(JCワカバ編)
ワカバ(JC)の誕生日が近づいていた。
タケシ(パパ)は毎年、この日を楽しみにしている。
次女のワカバは明るくて感受性が豊かで、家族のムードメーカーだ。
今年も成長をお祝いしようと、タケシはプレゼントを選びながら、少し特別なことをしてみたいと考えた。
ある日、LINEで「お誕生日おめでとうのカードを送りませんか?」という通知が届いた。
普段あまりこうしたサービスを使わないタケシだったが、ちょっと面白そうだと思った。
メッセージを添えたカードなら、いつもと違う形で気持ちを伝えられるかもしれない。
タケシはカードのデザインを選びながら、メッセージを考えた。
「ワカバ、お誕生日おめでとう。今年もたくさん笑顔の年になりますように。」シンプルだけれど、気持ちを込めたつもりだ。
そして、ママも同じようにカードを送った。
ところが、その夜、ワカバが言った。
「パパ、カード消すね!」予想外の反応に驚いた!
理由を尋ねると「友達に見られるのが恥ずかしい」と小声で答えた。
タケシにもその時代はあったので理解はできるが心が痛んだ。
自分なりに考えた心のこもったメッセージが、彼女にとっては迷惑だったのだろう。
たわいもないことだけどその瞬間、タケシの心は深く傷ついた。
家族への愛情を言葉にして伝えることが、まさか彼女に嫌がられるとは思ってもみなかったからだ。
これまで、映画や遊びを通して家族で楽しい時間を積み重ねてきた。
大切に育ててきたと思っていた家族の絆や気持ちのやりとりが、どこかですれ違っているのかもしれない。
思春期だからと一言で言ってしまえば簡単だけど、上手く表現できないがそういう問題ではタケシにとってはなかった。
それ以来、タケシとワカバの会話は減り、何となく気まずい空気が流れていた。
でも、数週間後、タケシは思い切って話を切り出した。
「あの時、なんで削除したのか、もう一度教えてくれる?」
ワカバは少し困った顔をして「嫌だったわけじゃないよ。ただ、友達に見られるかもって思っただけ」と言った。
自分の気持ちが届いていなかったわけではない。
タケシは「わかった。これからも応援してるから、困ったことがあれば何でも言ってね」と伝えた。
ワカバは「ぎょっち」と造語かなんだか知らないが言葉を発して小さく頷いて、いつものように笑ったが目を見ると恥ずかしそうに視線をそらした。
ありきたりで、何気ない事だったがタケシは本当に心が傷ついた出来事だった。
文章にしてしまうと『お互いさま』と言うような気もするが、親子と言えどこころを大切にしないといけないと感じた出来事だった。
ワカバお誕生日おめでとう!
おしまい。