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ゼニちゃんとパパの秘密時間を見ているJKコズエの話。
「ゼニちゃん、おはよう!今日も元気そうだな~。夜は寒かったか?ヒーター効いてたかな?」
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朝の台所から、タケシ(パパ)の元気な声が聞こえてくる。
声の主はカメのゼニちゃんに話しかけている。
パパのタケシがゼニガメのゼニちゃんを飼い始めたのは、私が中学生の頃だった気がする。
あの頃はまだ可愛い小さなカメだったのに、今ではすっかり立派な甲羅を持つカメちゃんに成長した。
「パパさぁ、なんでカメなんか飼ってるの?」
かつて私がそう尋ねたとき、「この子、癒されるんだよ~」と返されたっけ。
そのときは「ふーん」なんて適当に返事をしたけど、正直なところ、私はカメに癒しを求める父親の気持ちが全く理解できなかった。
でも今はその姿が日常風景になりつつある。
今日もタケシはゼニちゃんの水槽をじっと覗き込みながら、なにやら話しかけている。
「ゼニちゃん、今日は天気がいいから甲羅干しするか?でも風邪ひかないようにな!あっ、水槽の中におやつ入れといたから食べてな~」
…え?
「おやつ」?カメっておやつ食べるの?
そんな父の姿を、私は少し距離を置いて見つめる。
まぁ、毎日カメと会話している姿はどう考えても「きしょ」い。
でも、ゼニちゃんに話しかけるタケシの背中から、どこか仕事や家族への責任から少し解放された、素の父親の姿が見える気もする。
「ねぇ、パパ。カメって会話通じるの?」
思わず聞いてしまった。するとタケシは振り返って、ニッコリと笑う。
「そりゃもちろん通じるさ!ゼニちゃんはちゃんと俺の話、聞いてるんだぞ?」
…マジか。本気でそう思っているならちょっと問題がある気がする。
私はあきれながらも「きしょっ」と口に出してしまった。
「おいおい、そんなこと言うなよ~。ゼニちゃんは家族なんだから。」
家族、ねぇ…。
カメと会話する父を見ていると、確かにバカみたいに見える。けどその姿には、なんだか少しほっこりするものもある。
私には父がカメと話している意味は分からないけど、ゼニちゃんと父の間には私が知らない何かが通じているのかもしれない。
結局、私はいつものようにそのやり取りを見届けながらリビングを後にした。
父がゼニちゃんに話しかけているのを「きしょい」と思いつつも、何だかんだその光景が好きな私がいる。
世の中には変わったお父さんもいるんだろうけど、ゼニちゃんと仲良しなタケシは私にとって、唯一無二の「パパ」だ。
「きしょ」と言いながらも、その日も私はほのぼのとした空気を感じていた。
娘JKコズエの出来事。
おしまい。
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