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恋の始まり200m【第一話】月9風連続小説

【第一章】出会い

都心から少し外れた住宅街の一角に、洒落たカフェ「Branch tip」はあった。

店長の名前は永尾タケシ。

ちょうど昼のピークを終えた店内で、一息ついていた。

この店の名前も「Branch tip」枝先と言う意味だが店長の永尾が『太陽を見つめて伸びる枝先の様に私たちもお客様を見つめてお店を伸ばしていこう』と言う想いを込めて名付けてとても強い思い入れがある店だった。

店長の永尾は、いつか自分の店を持ちたい。と言う独立心が強くあった。今は、「Branch tip」で店長としての経験を積んでいた。

白のシャツに深緑色のエプロンをスタイリッシュに着こなしてカウンターから時計を見る店長永尾の姿があった。

「そろそろ来る頃かな・・・。」

そんな彼のもとに、今日、新しいアルバイトが面接に来る予定だった。

数日前に届いた履歴書には、赤名ミドリと書かれて、今までの経歴が綺麗な文字でサバサバした感じに色々と書いてあった。

経歴には飲食店の経験なしかぁ。
出来れば即戦力の人材が必要だったので経験者の方が有難かった。だから永尾は正直、採用後の不安の方が大きかった。

ガラスの扉が開く音がして、店長の永尾は顔を上げた。

「こんにちは。失礼します!」

元気な声が響く。

現れたのは、肩まで伸びたストレートの髪を揺らしながら、少し緊張した面持ちの女性だった。

面接用にきちんと整えて来たのだろう。
白のブラウスに黒のパンツとジャケット、シンプルだがどこか品があった。
そして意思がしっかりとしてそうな眉、大きな瞳が、まっすぐ店長の永尾を見つめた。

「面接に来ました、赤名ミドリです!」

「「Branch tip」」の店内には、宇多田ヒカルの「Prisoner of Love」が静かに流れていた。

彼女の姿を見た瞬間、タケシの胸がかすかにざわめいた。
だが、それを表情には出さず、淡々と椅子を示す。

「そこに座って」

赤名ミドリと言う女性は素直に頷き、椅子に腰を下ろした。

永尾は、『始めまして店長をしている永尾タケシです。』と名乗り早速面接をしだした。

基本的な履歴書を確認した後に永尾が赤名と言う女性に聞きたかった事を聞いた。

「飲食の経験は無いと履歴書に書いていましたが、飲食業は思っているより重労働です。勤務時間も長く、お客様からのストレスもたまります。正直キツイですよ。それでもカフェで仕事をしたいですか?」と赤名と言う女性にストレートに店長の永尾は聞いた。

「はい。でも、人と接するのは好きなので多少の苦労は問題ないです!」と赤名と言う女性は、永尾の目をしっかりと見て伝えてきた。

「でも、好きと、仕事は、違いますよ。」
カフェでの仕事にプライドがあり、たかがバイトでも仕事を甘く見てもらいたくない永尾は厳しめな口調で言った。

永尾の厳しい言葉に、赤名と言う女性の表情が一瞬くもった。
しかし、すぐに真剣な眼差しで永尾を見返した。

「それでも、やってみたいんです!」と赤名と言う女性は永尾に笑顔を浮かべながら言ってきた。

その強い意志と笑顔に、永尾はわずかに口角を上げた。

永尾は、飲食店の労働時間やサービス内容、わがままなお客様対応など、飲食店の厳しさを、赤名と言う女性に更に厳しい口調で伝え最後にもう一度、赤名と言う女性に聞いた。

「赤名ミドリさん。本当にカフェBranch tipで働けますか?」と。

赤名と言う女性は、先ほどと同じように強い意志がある言葉と、笑顔で「はい!がんばりたいです。」と永尾に伝えた。

その力強い瞳と笑顔から永尾は、少し目をそらしながら赤名と言う女性に伝えた。

「じゃぁ これからお願いします赤名ミドリさん。」

こうして、赤名ミドリは「Branch tip」の一員となった。

だが、この時はまだ、赤名ミドリと言う女性に出会った事で、永尾タケシの人生にまで深く関わることになるとは、永尾タケシも赤名ミドリも想像していなかった・・・。

つづく

※平成での労働環境ですのでご容赦願います。
※次回の更新は月曜日を予定しております。


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ぱぽこめ
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