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誕生日のはなし。

むかしの記憶にある自分の誕生日の思い出は、
ピンクのラジカセ。だった。
あとはもう何も覚えておらず。
親には大変申し訳ないのだけれど(特に母)本当にごめんなさい。
覚えていません。

ラジカセって単語だけで年齢バレるけどいたしかたない。
わたしが小学校何年生の時だったか、父がラジカセをプレゼントしてくれた。
ずっとほしいとねだっていたのだと思う。きっとそう。ねだっていた記憶はないのだけれど。

それはかなりコンパクトで、でもとてもかわいかった。
わたしはたいそう喜んでまんべんの笑みで父へ言った。

すごくうれしい!ありがとう!

ここまで聞くと、なんだとてもいい父親じゃないかとお思いでしょう。
わたしもそう思う。だってほしいと思ったものをプレゼントしてくれる父親なんて
とても素敵じゃないか。

しかしうちの父親はこれで終わりではない。

「じゃあ、帰る!」

と言って笑顔で手を振りながら出ていくのであった。

お前の家、ここじゃないんか?

わたしの父親は寅さんみたいだと誰かが言ったことがある。
でもわたしは寅さんは好きだが、父親は好きではなかった。
だって、寅さんってさくらのことをとても大切に想っている。
それはどこからみてもすぐにわかる。なんなら寅さんが父親の方がよかったとさえ思っている。

父はほとんど家に帰ってくる人ではなかった。
たまに帰ってきたとて、2階に住んでいる自分の母親と姉(わたしにとってはおばあちゃんとおばさん)に先に挨拶をして、なんなら自分の好きなものではない晩御飯だったら2階で好きなご飯を食べる人であった。
そのためわたしの母親は
「今日のご飯なに?」と聞いただけでガチギレするようになった。

父がこうなったのはいつからなんだろうかと考えたことがあったが、
きっとわたしが小学生のときにはすでにこんな感じだった。
普通に半年帰ってこなかったりしていたので、母はいつも不機嫌だった。

でもなぜかわたしが覚えているのはピンクのラジカセだけなのだ。
一体なんでなんだろう。他にもきっとたくさんやってもらったはず。
母に。
それなのに思い出すのはピンクのラジカセ。

たまに今でも誕生日が近くなると思い出すのだけれど、
あれどこにいったんだろう。
覚えているけれど、大事にしていなかったのかな、自分。

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