バラナシは変わったのか?
朝の車内の様子
「チャーイ、チャイ、チャイ、チャイ、チャーイ……」
「チャイ……チャイ、チャイ、チャイ……」
朝になると、いや、朝にならなくても名物チャイ屋さんやってくる。乗車したときから何度も聴いてきたフレーズだが、「朝になると」と言いたくなるのは、まだまどろみの中にいるころから呪文のように繰り返し脳に刷りこまれてきたからだろうか。わたしはチャイを注文する。
インドの列車はトイレが地獄だ。なぜそうなるのか理解しがたいが車両と車両の間にあるトイレ4つすべてがう〇こ盛り盛りだった。
開けて閉めて、開けて閉めてを繰り返し、その中でまだ一番マシな個室に入った。すぐさまフラッシュする。フラッシュがあるのだ、フラッシュすればいいのに。そう思うのはわたしだけなのだろうか? そうは言っても他の3つはフラッシュしたところで……。こんなところで大をするのは至難の業。とてもそんな気になれない。
バラナシで宿を探す方法
列車がゆっくりとガンジス川を渡る。駅はこの先にある。どうやら早く着くことなく、逆に恐ろしいほどオンタイムで駅に入っていった。
バラナシに来るのはこれで3度目。初めて来たのがもう11年前……。あのときのことは今でもよく憶えている。列車から一歩出た途端、両脇に見知らぬインド人がふたりいた。まるでわたしの友人かのようだった。そのまま彼らのトゥクトゥクに乗せられ宿まで連れていかれた。わたしが予約していたわけでもない知らない場所だった。彼らはそうすることによってホテルからコミッションをもらえるようだった。
2度目にやってきたのが4年前。そのときはこの仕組みを利用して街の中心まで連れていってもらおうとした。紹介された宿が気にいらなければ断ればいいだけのことだ。ところが、だいたい彼らに連れていかれるところで問題ないから不思議だ。条件を伝えれば条件どおりのところへ連れていってくれる。
そして3度目の今回。当たり前のように列車から一歩出ると男が待っていた。訊かずともトゥクトゥクのドライバーだと分かる。わたしたちは希望の条件の宿を探そうと思っていた。バラナシでの宿代は友人が持つと言ってくれたので、一気にホテルのグレードは上がった。ガンジス川沿いに泊まろうということになった。
トゥクトゥクのドライバーは希望に合った宿を複数箇所回るという条件でまあまあ高い運賃を提示してきた。普通に街の中心まで出て自力で探したほうが安いことには間違いないが、希望の条件の宿が見つかるまで紹介し続けると言うのなら、まあ悪くはない……。わたしたちは彼の後についていった。
ガンジス川沿いの宿
これは多分ガンジス川ビューというところに価値があるのだろう。過去インドで泊まったことのないレベルの高級宿だった。当然友人のおかげである。
面白いのはインドではツインの部屋を見つけにくいということ。これを条件にすると一気に検索幅が狭まる。コルカタでもダブルだったし、ここもダブルだ。宿のオーナーからはツインにもなる部屋だと言われていたのだが、部屋に通してくれた男は、ベッドのマットをふたつに分けてかけ布団のようなものをもう1枚くれただけだった。形の上うえではダブルベッドのままだった。
バラナシは変わったのか?
相変わらず迷路のように細い路地が張りめぐる。見た感じ、前回来たときと然程変わっていない。道が整備されベンチが置かれているなどとも聞いていたが、それはいったいどこのことなのだろう。
大通りは……そもそもこんな通りはあっただろうか? 以前から交通量は激しかったがこんな感じではなかったと思う。前後から来るリクシャー、トゥクトゥク、車などで落ち着いて歩くことができず、またそのクラクションのけたたましさで頭が痛くなった。以前は牛の糞を踏まずに歩くことは不可能なほど糞だらけだったが、それはほぼ見かけない。それどころか、あれほど闊歩していた牛が見当たらない。前はどこかの店にまで頭を突っこんでいるありさまだったのに……。
以前歩いていた通りがこの通りなのだろうか。もっと細い通りを歩いていた気がするが、それは牛がいなくて車両がこれほどまでにうるさいからだろうか。でなければ、やはりこの数年でこの街は変わったのだろうか……。
ゴードリアの交差点まで行くと変わらぬ光景があった。人、人、人、人。以前もこうやってカメラを上げて写真を撮った。