インドでiPhoneを落としたら見つかる?
iPhoneの行方
iPhoneを失くして旅を続けようと思うと、まず現在地が分からない。SNSは当然できない。パソコンはあるからWiFi環境があれば「X」や「Gmail」は可能。インスタのDMは送れるだろうか。「LINE」はQRコードを読めないから使えない。「WhatsApp」も同じだ。音楽も聴けないしメモ帳機能も使えないと、とにかく不便だった。中でも現在地が分からないのは非常に困る。ずっと以前はそれでもやれていたが、iPhoneは無理でも安いAndroidぐらいは手にいれたい。
ソナガチの街でスマホショップを見つけたので入ってみた。見たこともないスマホばかりが並んでいた。Androidのことはまるで分からない。そしてどれも安くはない……。
なぜ今の今まで気がつかなかったのか、自分の「LINE」に電話することを。誰かが出るところを想像できなかったからだろう。
ソナガチから移動しようというタイミングで友人がわたしの「LINE」に電話をかけてくれた。すると、予想外に相手が出た。電話を代わってもらう。
「ハロー」
「ハロー?」
「ハロー」
「ハロー?」
互いに周りが騒がしすぎて聴きとることができない。そして相手は複数人いるようだ。電話を代わるたびに「ハロー」を繰り返す。英語が通じていない気もする。しかしここで諦めるわけにはいかない。万にひとつのiPhone脱却のチャンス。
一度切れたらもうダメだろうと思っていたが、通信が途切れてしまっても何度も相手は着信に応じてくれた。
現在地を聴いて特定するのには苦労した。どうやらレストランにいるようだった。みんなで食事をしているのだろうか、それとも経営者だろうか。落とした位置から近距離だった。そこへ向かうのでとにかく待っていてほしい旨を伝えた。相手は承諾してくれたようにも思えたし、伝わっていないかも知れないという不安は残った。相手の名前を訊くと「アスワン」と名乗った。
すぐさまタクシーを捕まえる。しかしこんなときに限ってトゥクトゥクしか捕まらない。そしてまたそのトゥクトゥクの運転手には英語が伝わらない。他に乗客を捕まえようとして何度も途中で停まる。拉致があかないので降りて今度こそタクシーを捕まえた。
レストランはとても人気店のようで行列ができている。アスワンに到着した旨の電話をかけた。彼は少し待ってくれと言う。アスワンはここで働いているのかも知れないと思った。
わたしより先に友人が彼を見つけてくれた。そこにはわたしのiPhoneを持った青年がいた。その様子から従業員などではなく、ここで食べ終わって待っていてくれたか、もしくはここが有名店で目印になるからと、わざわざここを指定してくれたようだった。
彼の名前を聞いたときから、わたしは彼がムスリムではないかと思っていたが、訊くとそうだと答えた。やはりムスリムは親切な人が多い。
アスワンは英語が喋れないようだ。だから複数人いたのは、近くの人に代わって訳してもらおうとしたのだろう。iPhoneを返してもらい、彼にはお礼を弾んだ。
失礼だがこの国でiPhoneを落としたら見つけられるとは思っていなかった。拾ってくれた人が親切だったこともあるし、友人が一緒だったから見つけられた。電話をかけられない状況では見つけられなかったし、地図がなければ相手の居場所も分からなかった。友人には感謝しかない。
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