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「昭和スタイル」が未来の“あたりまえ”になる?リフィルステーションの試み

前回記事で、ユニリーバが掲げているプラスチックの削減目標、そしてその具体的なアプローチについてご紹介しました。

プラスチックを一方的に悪者にせず、そのポジティブな側面(軽い、壊れにくい、製造時や輸送時の環境負荷が少ない、など)をちゃんと認めた上で、「プラスチックがごみにならない循環型社会」をめざしていこう、というのがユニリーバのスタンスです。とは言うものの、プラスチックを使わなくてもいい場面では、極力使わないほうがいいことはたしかです。
そこで、ユニリーバでも、まだ実証実験の段階ですが、プラスチックをできるだけ使わない=「NO PLASTIC」の取り組みを少しずつ進めています。

その「NO PLASTIC」の取り組みのひとつ、シャンプーやボディウォッシュを量り売りする「リフィル(つめかえ)ステーション」について、前回と同じくユニリーバ・ジャパン アシスタント コミュニケーション マネジャーの新名司に聞いてみました。キーワードは「昭和スタイル」と「プラス1アクション」?

海外での「NO PLASTIC」の取り組み

――前回もユニリーバの「NO PLASTIC」の取り組みについてお聞きしましたが、海外では、シャンプーやボディウォッシュの量り売りを実施している例があるそうですね。

そうなんです。たとえばイギリスでは店舗内で量り売りを行う「リフィル(つめかえ)ステーション」を実験的に行っています。専用のサーバーを設置しているのですが、写真を見るとファミリーレストランのドリンクバーみたいですよね(笑)。消費者はこのリフィルステーションに空の容器を持参して、好きな量だけ購入します。

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チリでは、電動三輪車での移動販売を行っている「アルグラモ」社と提携して、シャンプーやボディウォッシュの量り売りを移動販売で行っています。アプリで登録しておくと巡回してくれて、自宅近くで購入できるというものです。この移動販売のシステムは、人混みも避けられるとあって、このコロナ禍で大きく成長しているようです。

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日本でも量り売りの実証実験がスタート

――量り売りは、海外のユニリーバで先行して進んでいるのですね。

そうなのですが、実は日本でも、今年(2021年)に入ってからシャンプーやボディウォッシュの量り売りの実証実験がスタートしています。

まず、2021年の2月から長野県佐久市で、リフィルステーションの実証実験をスタートしました。同市内で移動販売サービス「みんなのご近所さん」を展開する有限会社ジャンリッツと連携して、移動販売車の中にリフィルステーションを設置。同市内の道の駅「ヘルシーテラス佐久南」で毎月第4週の土曜日に「ダヴ」のシャンプーや「ラックス」のシャンプー、ボディウォッシュを量り売りでご提供しています。

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続いて2021年6月には、宮崎県新富町に国内2店舗目となるリフィルステーションをオープンしました。「新富町チャレンジショップ」という店舗内に設けたリフィルコーナーで、シャンプーやコンディショナー、ボディウォッシュを量り売りで購入することができます。

新富町はユニリーバ・ジャパンと地域連携包括協定を締結しており、サステナブルなまちづくりをめざして日ごろから協力し合っています。町内にあるJリーグチーム「テゲバジャーロ宮崎」のホームスタジアムも「ユニリーバスタジアム新富」という名称で、ユニリーバにとってはとてもゆかりの深い町なんです。チャレンジショップはそのスタジアムの近くにあるので、サッカー観戦に来られる方にもご利用いただいています。

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一周回って新しい?「昭和スタイル」

――長野県佐久市は移動販売。宮崎県新富町はサッカースタジアムの近くの店舗販売。エリアも業態も異なる2か所で、日本でもリフィルステーションの取り組みが進んでいるんですね。

実際に買いに来られたお客様からは「こういった量り売りがあるなんて知らなかった」「おもしろい!」と好意的な反応を頂いています。親子連れの方で「量り売りの体験をすることで、子どもとごみ問題について話すきっかけになりますね」と言ってくださる方もいます。

――新富町チャレンジショップの取り組みは、スポーツとの組み合わせという点もユニークです。

シーズンチケットを持っている地元サポーターの方は、何度も観戦にスタジアムを訪れるので、シーズン中にボトルを持参してリピートで買いに来ていただける可能性もありますね。スポーツのある場所と量り売りの仕組みとの親和性は意外に高いのかもしれません。

――佐久市の移動販売も、どことなく懐かしいような……。

そうなんです(笑)。ひと昔前は、お豆腐屋さんが近所を回っていましたよね。そこにボウルを持ち寄って豆腐やお揚げを好きなだけ買う……こういう「昭和スタイル」が、一周回って新しいのかもしれませんね。

「プラス1アクション」を“あたりまえ”にするには?

――とはいえ、日本の都市部にはちょっと歩けばスーパーやコンビニがたくさんあるので、「なくなったらいつでも買える」安心感があります。ネガティブな見方かもしれませんが、このリフィルステーションが新しい“あたりまえ”になるのはまだまだ先のような……。

おっしゃるとおりで、日本の市場では、都市部も含めて量り売りのスタイルが定着するには、まだ時間がかかるかもしれませんね。

量り売りを根づかせるには、普段の消費行動の中に、空の容器を持参するという「1アクション」をプラスする必要があります。この「プラス1アクション」の行動変容をどうデザインするかがポイントだと思います。

先ほどのお豆腐屋さんもそうですが、日本には昔から醤油やお酒の瓶を繰り返し使ったり、牛乳屋さんが家々を回って牛乳瓶を回収するような習慣がありました。こういう「もったいない」の精神がもともと日本文化のベースにはあるので、仕組みさえうまくデザインできれば、こういった量り売りのスタイルを定着させられる可能性は十分あると思います。

――「プラス1アクション」をどうデザインするか。その答えを見つけるために、こうして実証実験を進めているということですね。

「UMILEプログラム」のように、コラボグッズなどのインセンティブを設けるのもひとつの方法ですよね。

買い物の際にエコバッグを持参するのも、今日では“あたりまえ”になりました。また、他業種ではナッツやシリアルの量り売りがサステナブル志向の消費者に支持されている事例もあります。無理なく、楽しく「プラス1アクション」をしてもらえるための、消費者の皆さまとのコミュニケーションを引き続き考えていきたいですね。