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IT活用のごみ分別回収×紙おむつの水平リサイクル!~小田急電鉄とユニ・チャームによる、東京都町田市での紙おむつのリサイクル実証事業~

「使用済み紙おむつから紙おむつ」の水平リサイクルを目指す、RefFプロジェクトの取り組み。

こちらのnoteでは主に九州エリアの活動をお伝えしてきましたが、実は、東京都町田市でも「紙おむつの水平リサイクル」を行ったことがあるんです!(このときは、小田急電鉄さんと協力し、ITを活用した使用済み紙おむつの回収にチャレンジしたんですよ)

2021年の東京都町田市で行われた「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」の様子。一般家庭を対象に約2500世帯で3回(3日間)の実証事業を行いました。 素材提供:東京都町田市

今回は少し時間をさかのぼって、2021年度(令和3年度)に、東京都町田市で行われた「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」についてご紹介したいと思います!


東京都×小田急電鉄×ユニ・チャーム!紙おむつリサイクル推進へのアクションとは?

まず、実証事業の内容と、それぞれの役割について簡単にご説明しますね。

東京都:2021年に「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」の公募を行いました(こちらの公募に小田急電鉄とユニ・チャームが共同事業として応募し、採択。実証フィールドとなったのが町田市です)。

参照:東京都公募「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」に小田急電鉄との共同事業が採択

●小田急電鉄:ごみの収集・排出サポートシステム「WOOMS」により、使用済み紙おむつの効率的な回収を実現しました。
●ユニ・チャーム:一般家庭から集められた使用済み紙おむつを、RefFプロジェクト「紙おむつの水平リサイクル」の実証実験に使用しています。

東京都、小田急電鉄、そして、ユニ・チャームのRefFプロジェクトの各担当者にインタビュー。実証事業の内容について詳しくお伝えしていきます!

[東京都]未来へのアクション。使用済み紙おむつのリサイクルという可能性

最初に、東京都が「紙おむつのリサイクル」を推進する理由と、今後の展望について、東京都環境局 資源循環推進部 清野さんにお伺いしました。

ー「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」を公募された経緯について教えてください。

清野さん「公募当時、使用済み紙おむつは、東京23区の清掃工場において可燃ごみの約4%にもなると推計されていました。今後、社会の高齢化に伴い、紙おむつのごみの量も増加することが見込まれています。『使用済み紙おむつのリサイクル』は、資源の循環的利用に向けた重要な課題のひとつです

2021年に東京都町田市で行われた実証事業の様子。素材提供:東京都町田市

ー公募により、小田急電鉄とユニ・チャームの共同事業が採択されました。実証事業の結果に関して、手ごたえはいかがでしたでしょうか。

清野さん「ごみ収集車が使用済み紙おむつの回収地点を確認し、タブレットなどのITを活用し地点を入力。オンタイムで専用のルートをつくり、回収することを実証し、使用済み紙おむつのみを効率的に収集・運搬しました。結果、回収された紙おむつ専用のごみ袋には異物が少なく、水平リサイクルに適した品質を確認することができました

ー東京都として、紙おむつのごみに関する現状と、これからの展望をお聞かせください。

清野さん「使用済み紙おむつのリサイクル技術は発展途上にあり、処理施設もほとんどなく、認知度が低いなどの課題もあります。都としては、共同検討会を通じて、実証事業の結果を区市町村等に情報提供しています。
今後は、使用済み紙おむつのリサイクル事業を普及していくために、区市町村が実施する、使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた調査・普及啓発事業に対して、必要な財政的支援を行っていきます

[小田急電鉄]ITを活用したシステム、WOOMSでごみの分別回収をスムーズに!

続いて、ごみの収集・排出サポートシステムのWOOMSを提供した、小田急電鉄株式会社 デジタル事業創造部 加賀さんにインタビュー。町田市の実証事業に参加された目的やWOOMSの強みを伺いました。

小田急電鉄株式会社 デジタル事業創造部 加賀さん。もともと、RefFプロジェクトの取り組みに興味があり、ユニ・チャームと意見交換をしていたことから、今回のタッグが実現しました。

ーWOOMSはどのような目的ではじまったサービスなのでしょうか?

加賀さん「デジタル事業創造部では、“デジタルを活用した社会課題の解決”を目的とした、新規事業の立ち上げを行っています。WOOMSも地域の発展と持続可能な社会づくりを行う“循環型社会の形成”の一環。地域のインフラの支えとなる、新たな共創を目指しています」

ー街づくりの一環としてはじまったプロジェクトなんですね!WOOMSのサービス内容について教えてください。

加賀さん「ごみ収集業者にタブレットとパソコンを用いた、ごみの収集システムを提供しています。デジタル上でのデータ管理により、ごみ収集のルートを最適化。回収もれを防ぎ、より効率的な回収を可能にしています

ー町田市での実証事業では、WOOMSをどのように使用されたのでしょうか?

加賀さん「もともと、町田市では紙おむつのごみは分別されており、自宅の前に出す戸別回収が行われていました。集められた紙おむつのごみは、一般ごみ(燃えるごみ)とともに、ごみ収集車に回収され焼却処分されます。

町田市の実証事業では、WOOMSのシステムを活用して、一般ごみ/使用済みの紙おむつ、それぞれを集めるごみ収集車を分け、紙おむつのみを効率的に回収しました。参照:「WOOMS」の廃棄物収集ノウハウを活用した実証収集スタート 素材提供:小田急電鉄

ですが、紙おむつのごみは約1割の家庭からしか出ません。そこで、実証事業ではWOOMSを使用して、紙おむつのごみを出す家庭だけをマーキングし、使用済み紙おむつを効率的に集めることができました。

ごみは分別して集めるとリサイクル可能になります。本システム的にも得意とするところであり、良い循環を生み出すことができました」

ー紙おむつのごみに関する現状と、これからの展望を教えてください。

加賀さん「木草や生ごみのリサイクルを行う自治体は増えていますが、使用済み紙おむつのリサイクルは、手つかずの自治体がほとんど。 水平リサイクルはユニ・チャームさんしか取り組んでいないことで、思いとしてとても共感しています。ぜひ、関東にも工場をつくっていただきたいです」

[ユニ・チャーム]家庭からの紙おむつごみの分別回収で、水平リサイクルを目指す

最後に、RefFプロジェクト 渉外担当の織田さんから、実証事業の目的や手ごたえを語ってもらいました!

ユニ・チャーム Recycle事業推進室 渉外担当の織田さん。「リサイクルの町・大崎町の取り組みレポ!」にも登場しています。

ー町田市での実証事業には、どのような目的があったのでしょうか?

織田さん「以前にも、東京都東大和市で高齢者施設など事業系施設での紙おむつの水平リサイクルの実証事業を行っています。町田市の実証事業では、『一般家庭から出る、使用済み紙おむつの分別回収がWOOMSにより効率的にできるのか』を検証しました

ー実証事業の手ごたえを教えてください。すでに紙おむつの分別回収を行っている鹿児島志布志市・大崎町と、今回の東京都町田市で、地域による違いはありますか?

織田さん「実施前は都市部の家庭では、紙おむつの分別は難しいのでないか』とも考えていました。ですが、結果的には、町田市でもとてもよく分別されていました。良い意味で予想を覆されましたね。
町田市は、紙おむつ専用ごみ袋を配布し、戸別回収を行っていたので、自治体、住民の積み重ねもあったのだと思います。回収された使用済みの紙おむつは、鹿児島に送られて、水平リサイクルの実証実験に使われました」

東京都町田市での戸別回収の様子。素材提供:東京都町田市

ー小田急電鉄との共同事業として、WOOMSを活用された感想は。また、今後、紙おむつのリサイクルを進めるには、どのような方法があるでしょうか?

織田さん「分別回収の効率性も重要だと思います。紙おむつを出す家庭が10軒に1軒だとした場合、その1軒だけ、専用のごみ収集車が回収した方が効率が良いですよね。そうした効率的なシステムは必要不可欠だと思います。町田市の事例のように、都市部で分別回収を行う際に、ITを導入するのもそのひとつです。
また、それぞれの地域にあった形でリサイクルができるように、行政側にも、支援や後押しをしていただけるとありがたいですね」

あとがき

東京都で行われた実証事業について、あらためてお聞きし、リサイクルの分野でも、ITの力が活用されているんだ!という驚きがありました(この先、ごみの分別回収やリサイクルの分野でも、こうしたITのシステムがどんどん取り入れられていくのかもしれませんね)。

私たち、RefFプロジェクトの大切なキーワードに「共創」があります。「リサイクルの町・大崎町の取り組みレポ!」でもご紹介したように、リサイクルの取り組みは、さまざまな企業や団体、人との協力体制があってこそ、実現できるもの。異なる強みをもつ企業と連携し、協力することで、RefFプロジェクトのチャレンジは、前に進んでいくのだと思います!