「苦手な家事、不動のNO.1」の、はなし。#34
20代半ばからひとり暮らしをしているというのに、一向に好きになれない家事がある。それは、アイロンがけだ。
初めて借りた部屋には、小さな洗濯機が備え付けで置いてあった。しかし、これで一度洗濯をしてみようものなら、どんなにシワを伸ばして干しても、アイロンなしにはとても着られない状態の仕上がりになってしまう。
Tシャツやジーパンなど、手洗いしない洋服たちは基本的に洗濯機を使っていたので、洗濯後には渋々スチームアイロンを当てるわけなのだが、この時間がどうにも苦痛でたまらなかった。引っ越した今は、以前よりも性能の良い洗濯機を手に入れることができたが、アイロンがけが必要になることには変わりがないし、その苦手意識も変わらず健在だ。
すなわち、苦手な家事No.1の座は、かれこれ10年近く動いていない。
家事と呼ばれる作業にもさまざまなものがあるが、代表的なものといえば、料理・掃除・洗濯だろうか。私はこの3つに関しては、(料理は人並み以上に苦手だが、)いずれもそこまでの抵抗感はない。
これらはみんな、「おりょうり・おそうじ・おせんたく」と、丁寧な言葉で話せるように、時間をかけて心を込めてやることで、気分がスッキリしたり、居住空間が心地よくなるという確かな成果が得られることをわかっているので、面倒くさくても腰を上げられるし、作業の一つ一つに価値を感じられる。
「おかたづけ」も、ここに入るだろう。
定期的にモノを捨てて、身の回りを整理したり、部屋のレイアウトを変えてみるのも良い気分転換になるので、私は片付けという家事も、ぜんぜん嫌いじゃない。
しかし、これがどうにも、「おアイロン」とはならないのだ。
アイロンがけは、「シワシワな服で出歩くのが恥ずかしい」を払拭してくれるが、それをやることによって得られる快感、には到底及ばない。
もっというと、アイロンがけは100%・100点満点がいつも見当たらず、
玉ねぎってどこまで向けばいいの?と同じく、やってもやっても、
完璧なツルツル・パリッパリまで仕上がらないのも、なんとももどかしい。
最近は、性能の良いアイロンが各メーカーから登場しているのかもしれないし、それでいくらかこのアイロンアレルギーからは解放されるのかもしれないが、アイロンがけにお金をかけることにすら違和感を覚えてしまう。そのぐらい、距離を置いている存在なのだ。
料理は上手になれば褒めてもらえるし、レシピはそのまま私の経験値になる。
掃除はちゃんとやれば部屋がピカピカになるし、それだけで、窓から新しい風が通るような心地がして気持ちがいい。
洗濯を回せば、シンプルに、溜まったものがガサッとなくなる。これは少し弱いかもしれないが、爽快感と目にみえる成果は、ちゃんとある。
さて、アイロンは?
アイロンは一体、私に何をもたらしてくれるのだろうか?
アイロンがキレイにかけられる女は、いい女なのだろうか?
アイロンをかけている姿が色っぽい、なんて話は聞いたことがない。
アイロンを丁寧にかけることで、私の暮らしはアップデートされるのだろうか?
いったい1着に対して、どれだけ私の時間を持っていけば気が済むのだろうか?
しれっと洗濯の一部と化して、洗濯ってやっぱり爽快感あるよね?なんて顔をすることは、私は絶対に認めない。
おい、そこのところどうなんだ!
・・・という、答えのない義憤を誰かに伝えたくなった。
そんな、平日リモートワークの昼下がり。
どうあがいても、避けられない家事。結局、やるしかない。しゅん。