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Day.3 腹水の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<腹水は見つけたら鑑別する>

腹水の原因となる疾患は、ざっと上げるとこんなもんです。
1)肝硬変☞約8割はコレです。
2)心不全
3)悪性腫瘍
4)結核
5)膵炎
6)低アルブミン血症
7)甲状腺機能低下症
8)消化管穿孔
9)腹膜炎(SBP(特発性細菌性腹膜炎)など)
……
なので、これらでないかを順に確認していけばよいことになります。

<”通常”に追加する評価項目>

まず、肝硬変を探しに行く必要があるので、通常の診察に加えて、黄疸やクモ上血管腫といった肝硬変の身体所見を確認。
また、輸血歴を始めとするHBVやHCV(採血もチェック)の感染経路も確認します。
心不全や膵炎、甲状腺機能異常も原因になるので、採血にはBNP、アミラーゼ(と、リパーゼ)、TSHも追加を検討しましょう。

<腹水穿刺をしたのなら>

腹水穿刺では、下記の検査項目を提出します。
1)細胞数・分画☞好中球数≧250/μLならSBP(特発性細菌性腹膜炎)を疑う
2)総蛋白
3)アルブミン
4)糖☞感染や悪性腫瘍では低下する
5)アミラーゼ☞膵炎や消化管穿孔で上昇する
6)LDH
7)ADA☞39UI/L以上の時は結核性胸膜炎を疑う
8)細胞診☞悪性腫瘍を探しに行く

あとは、SAAG(serum—ascites albumin gradient:血清-腹水アルブミン勾配)を計算してみます。
[SAAG=(血清アルブミン濃度)-(腹水アルブミン濃度)]
≧1.1g/dLの場合は門脈圧が上昇しています。
☞肝硬変や心不全が疑わしくなります。
<1.1g/dLの場合は、門脈圧は上昇していません
☞癌性腹膜炎や結核性腹膜炎、膵炎等が疑わしくなります。

<初手の治療介入>

1)肝硬変だったなら
スピロノラクトンを中心に使用(フロセミド併用)します。
◇スピロノラクトン 25~50mg 1日1回
◇フロセミド 10~20mg 1日1回
それから、肝障害が出る薬剤が内服で入っていないかを確認します。

2)SBP(特発性細菌性腹膜炎)だったら
◇セフトリアキソン1g 24時間ごと

<Column>

〇肝硬変だった場合は、腹水を抜くと一時的に患者さんが楽になります。但し抜いているのは、へばりかけの肝臓が作ったなけなしのアルブミンを大量に含む液体です。だからこそ、腹水を抜くのは原則として診断目的と考えるべきです。それか、泣く泣く最低限の症状緩和のために抜くかというところです。抜いた腹水から必要成分を濃縮して血中に返すCART(腹水濾過濃縮再静注法)という手もないではないですが。

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