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【3回目のバンコク国立博物館】タイの建築様式について調べてみた

1回目は初めてのバンコク旅行で、2回目は「タイの重要な仏像展」を見に行った、バンコク国立博物館。

今回は通信大学で仏教美術と学芸員課程を学び始めて半年経ったため、授業で学んできた資料の実物と、他国の博物館展示方法を見ることで、知識を定着させたいと思い3回目の訪問となりました。

せっかくなので、日本語ガイド開催の日に合わせて行ってみました。

プッタイサワン内の釈尊の一生を描いた壁画の説明は的確でしたし、菩薩系の図像解説や時代毎の仏像の特徴についての説明も非常に分かりやすく、ボランティアといえどしっかりと勉強なさって取り組んでいらっしゃり感服しました。

個人的にはメトロポリタン美術館から、タイに返還された2点の彫刻を見られて感動しました。

昨年から加速している、略奪や違法密売で海外流出していた資料を返還する「文化財返還問題」は今後も見逃せないトピックのひとつです。

どちらもクメール王朝時代の彫刻、金メッキのシヴァ神の像と、祈りを捧げる女性の像です。

公開直後は一目見ようと大混雑だったようですが、現在は落ち着きを見せています。

さて、タイトルの件。
バンコク国立博物館内には「赤い家(プラタムナックデーン)」という、王族のお住まいが展示されているのですが、中部タイの古い建築様式で建てられています。

そこで、ガイドの方が「扉は台形になっているのが特徴です」と解説されたのに対し、ある参加者の方が「なぜ台形なのですか?」と質問があったのですが、初めて受ける質問だったのかはっきりとした回答はありませんでした。

ここで断っておきたいのですが、博物館内には膨大な資料がありますし、専門家ではないので全ての質問に答えられないのはガイドさんが悪いわけではありません。

しかし私はその質問を聞いた後、なんで台形の扉なんだろう?とずっと頭を離れません。

そこで、論文などで調べてみると、扉の形とその効果に触れたものは見つけられなかったのですが、建物の形状そのものに影響しているのではないかと考えました。

タイにある寺院や伝統的な木造住宅は、家屋自体が台形に建てられています。
最初の頃は、寺院を撮影した写真を見返すと、正面から撮ったはずなのに煽ったように写っているのを見て不思議に思っていました。

Wattana Boonjub, The Study of Thai Traditional Architecture as a Resource for Contemporary Building Design in Thailand

急勾配の3段階に分けられた寄棟屋根と、大きく張り出した軒、地面から2m程度の柱でベースを作る高床形式は、雨季の豪雨から家を守るための工夫です。
急勾配の寄棟屋根は雨が速やかに地面に落ちると共に1か所に溜まってしまわないために、高床は害虫や害獣の侵入を防ぐためだけでなく洪水時に家屋を守る働きがあります。

この屋根形状はBTSの階段の屋根も同じ働きをしています。

画像左に注目!

屋根の勾配はモンスーンが長い南部ではさらに角度があり、北部は少しなだらかな形状になっているそうです。

家屋の柱とそれに伴う壁を三角に近い台形にすることで、雨による加重を分散しているのではないかと考えます。
そうすると、必然的に窓も台形にならざるを得ないのではないでしょうか。
家全体の形状に対して長方形の窓を作ると強度も低くなり、また、外観も損ねてしまいますね。

サイアムソサエティーの内部
真っ直ぐな壁面に台形の入口を設置すると
やっぱり違和感ありますね

この建築様式を調べているときに、窓の数にも色々と決まりや傾向があることが分かりました。
人間には、9つの開口部(目・耳・鼻孔・口・肛門・性器)があるため、その数に対応した数の入り口や窓は縁起が悪いとされていて、9以外の数になっているそうです。

寒くなる季節がある北部では窓も小さく、数が少ないとか。

こうしてみてみると、日本でも台風の多い沖縄は背の低い平屋が多かったり、東北部では雪の重みに耐えられるよう急勾配の屋根になっていたりと違いがあるように、タイ国内でも地域に合わせた工夫が凝らされているのが分かって楽しかったです。

色々調べるきっかけをくれて、あの時質問してくれた人にありがとうと言いたいです。

建築を専門としているわけではないので、窓が台形である理由が他にもあるかもしれませんが、自分なりの見解を書いてみました。

もし台形窓のもたらす効果をご存じの方がいらっしゃったらぜひコメントでお教えいただきたいです。

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