私大専任待遇は辞められないよ(小野リース事件)
小野リース事件とは、平成22年に最高裁判例が出された事件です。当時の営業部長がアルコール中毒により、平素の勤務態度はおろか、重要な取引相手との商談に寝過ごすなど会社に対して大きな損害を出していたのですが、彼を解雇としたことの合理性が問われた内容となっています。
判例の意義
最高裁判例としては、「解雇の違法性はなし」です。心情的には当たり前だろ、と思うかもしれませんが、最高裁判決までもつれているのは、単純に解雇に至るまでの相当性に関しての議論に加え、それよりも日本の雇用慣行における正社員の待遇が確たるものである証であると考えられます。
専任待遇は凄まじくすごい
ここから大学教員・職員の話に入っていきますが、専任教員・職員の待遇の良さは(私立大学に限って)。凄まじいものがあります。国立大学や公立大学は経済的に支えているのが国や地方公共団体ということもあって、待遇はあまり良くありません。それどころか先生方にとっては業績や論文執筆数などの教員評価が厳格に行われるので、昔気質の方には辛いかもしれませんね。
さて、どれぐらい凄いのかと言えば、地方の単科大学であったり、学生数が少ないということでもない限りは、50歳になる頃には1000万に届くのではないでしょうか(職員は役職者)。あくまで肌感覚ですが、こんな感じです。もらいすぎです・・・よね・・・。本当に申し訳ないとも思いますが、ありがたいことです。
専任になったら基本辞めない
こんな待遇で辞める人がいると思いますか?先生方はより良い研究環境があれば、他に行くこともあるでしょうが、職員に至っては基本辞めません。稀に辞める方もいますが、そういうのは、大体入職したばかりであまりにもひどい社内文化に絶望したり、人間関係が酷すぎて辞めるなどといった理由です(すべての大学がそうとは思いません)。
しかしですね、上述の待遇であれば、30歳を過ぎた職員で退職を決意するには余程のことがない限りありえないですね。しかも最近では私大職員人気も非常に高いので、「入職できたらゴール」みたいな風潮はあります。
さらに先生方にとってもそれは同じことです。正直に申し上げて、一流の研究者というのはわずかです。私の勤めている大学が中堅レベルなのもあるかもしれませんが、一部の先生たちはお荷物などとはとても申しませんが、研究者としては今一つな方々もまだまだいらっしゃいます。その理由は、第二次ベビーブーム(1970年初頭に生まれた方々)が大学生になる1990年前後は空前の大学ブームが到来し、大学業界においては絶大なバブル時代に突入しました。そこで足りなくなるのは教員ということで、言葉が悪くて本当に申し訳ありませんが、そこそこの先生でも大学教員になることができたのです。
今の時代の若手研究者の競争は凄いと思いますよ。その中にあって、かつてバブル時代に雇用された上述の先生方が辞めるかというと決して辞めることはありません。
日本は雇用規制が厳しすぎる
日本には正規雇用がとても守られている特徴があります。欧米ほど雇用市場に流動性がまだまだなく、そして大学のように公益性が高くお役所的な性格の強い組織においては、どんなに研究者・教育者としていまいちな人でも一度専任待遇で雇ってしまったからにはそうそうクビにはできないのです。
ましてや冒頭の判例を見てお分かりのとおり、とんでもなく勤務態度が酷くない限りは解雇にはできません。私立大学の支出の5割〜7割は人件費ですが、まだまだ圧迫している層は健在でありますので、大きな改革や夢のある教育プログラムに資金投資する機会は先になりそうな気がしています。