開幕直前!どこよりも詳しく東京六大学野球2022年秋季リーグの見どころ伝えます!
こんにちは、シュバルベです✌︎('ω'✌︎ )
9月10日(土)から東京六大学野球の2022年秋季リーグが開幕します。開幕を前に各大学の見どころ・注目選手をまとめて行こうと思います。
なお、春季リーグ直前にも紹介記事を書きましたが、大きな反響を頂きました。ありがとうございます。
この春のリーグ戦は明治大学が6季ぶり41回目の優勝を飾りました。順位表はこちらの通り。
コロナ前の2019年以来の勝ち点制に戻るシーズンとなった中で、明治大学は全5大学に対して勝ち点を奪取する強さを見せつけました。慶大戦・法大戦では初戦を落とすも2試合目以降で勝利を重ねており、分厚い戦力層を見せつける結果となりました。
以下、各大学の秋季リーグの見どころを投打の概要+ドラフト候補の観点で書いていきますので、お付き合いくださいませ。
1.明治大学
明治大学が前回優勝したのは2019年春季リーグ。森下暢仁投手(現・広島東洋カープ)、伊勢大夢投手(現・横浜DeNA)、竹田祐投手(現・三菱重工WEST)の強力な3投手と、アベレージ型の野手陣を揃えた切れ目のない打線で、6月に行われた全日本大学野球選手権も制したシーズン以来の優勝を飾ったのが今年の春季リーグでした。
ポイントは以下の4つだと考えています。
チーム防御率、チーム盗塁数の2つでトップを走り、投打の噛み合ったシーズンとなった春季リーグでした。さて、秋はどうなるのか。投打の紹介から行っていきましょう。
1-1.明治大学投手陣
先発の軸となるのは2人の3年生右腕、蒔田稔投手(九州学院③)と村田賢一投手(春日部共栄③)です。
各カードの初戦を任された蒔田投手はこの春9試合61イニングに登板。7度の先発起用は立大の荘司投手と並ぶトップタイで、61イニングはリーグで頭一つ抜きんでています。
昨年までは合計10イニング程度しか投げていませんでしたが、21年オフで大きく成長し、球速も変化球の変化量・制球ともに格段に良くなりました。フォーシームは試合終盤になっても140km/h台中盤を計測し、6試合で100球以上を投げたスタミナも魅力の一つ。初戦を安心して任せることのできる右の本格派投手となっています。
明治大学OBの柳裕也投手(現・中日ドラゴンズ)にも似たゆったりとしたフォームは立ち姿が美しく、春季ベストナインも獲得した蒔田投手は来年のドラフト上位候補の一人とも言って良いでしょう。
もう一人のエース、村田投手は蒔田投手とは少しタイプの異なる投手です。
この春8試合45イニングに登板し、奪三振率は13.0K%とあまり高くないのですが与四球率は蒔田投手を大きく上回る5.1BB%。ツーシーム系のボールを低めに制球し、打たせて取るピッチングが明大内野手陣の守備力ともマッチし春はリーグ最多の5勝を挙げました。
高校時代に見た時から気持ちの強さを感じる投手でしたが、21年秋季リーグの慶大戦であと一人の場面から北村謙介選手に同点弾を浴びた悔しさをやり返すような春の慶大戦での登板は今まで以上の気迫を感じました。
リリーフ投手は上級生から下級生まで、タイプの違う投手を揃えている点が明治大学の強みです。
4年生右腕の髙山陽成投手(作新学院④)はこの春リーグ戦初登板でしたが、140km/h台後半のフォーシームと「全然来ない」独特なカーブボールを武器に7試合14イニングに登板。ロングリリーフもなんのそので「血の明法戦」2回戦では8回から5イニング無失点の力投を見せ、ビハインドゲームを引き分けに持ち込みました。
希少な左サイドの渡部慎之介投手(桐蔭学園③)もこの春に頭角を現した投手で、制球力にはまだ改善の余地が残されているものの左打者に対してインコースと外のスライダーのコンビネーションを見せ4試合投げ1失点と力を見せました。
下級生では松島元希投手(中京大中京②)と千葉汐凱投手(千葉黎明②)の両左腕が初登板を経験しています。フレッシュリーグでの好投を評価された久野悠斗投手(報徳学園①)は1年生ながらリーグ戦後の全日本大学野球選手権大会の佛教大学戦で3.1イニングを投げるなど、新戦力の成長にも秋は期待がかかります。
これらの投手陣にさらに厚みを加えられるとすれば、渡部翔太郎投手(千葉黎明④)の復活でしょう。21年は春・秋で9試合に登板しましたが、この春は2試合2イニングの登板に留まりました。ツーシームが特徴的な投手で、髙山投手とも違うタイプの渡部翔投手は、現状左腕主体のリリーフ陣の中入ることで更に盤石な投手陣を形成出来るでしょう。
勿論、いうまでもなく、昨年の主戦投手の一人だった藤江星河投手(大阪桐蔭②)の復帰があれば非常に大きいですが、彼が居なくても戦力として充実している明治大学投手陣の強さは歴然としています。
秋の登録名簿では1年生の菱川一輝投手(花巻東①)が背番号31を得ており、こうした新戦力も楽しみですね。
1-2.明治大学野手陣
春季ベストナインを4人が獲得した強力野手陣の中でも、宗山塁選手(広陵②)はやはり特別な選手だと言えるでしょう。
ボールをキャッチするまでの足さばきとハンドリング、捕ってから投げるまでの速さ、送球の強さ、どれも六大学トップクラスの遊撃守備を誇り、打撃面でも唯一の打率4割越えで首位打者。本塁打も3本放つなど、率だけでなく長打の部分でも優れた宗山選手。
この夏、大学日本代表にも選ばれハーレム国際野球大会でも多くの試合に出場しました。そこでの感想を次のように語っています。
夏のOP戦では2戦連続本塁打も放っているようで、国際試合で受けた刺激をさらにプレーに還元できる選手だと思います。守備の要であるとともに、中軸もトップバッターも担うことのできる「究極の便利さ」は明治大学の打順・作戦面でチーム随一の貢献を果たしています。
1年生から4番に座り、やはり大学日本代表に選出された上田希由翔選手(愛産大三河③)。
この春リーグ2位の15打点を挙げ、リーグ3位の打率.368に5盗塁と総合的な能力の高さを見せてやはりベストナインを獲得しました。序盤こそ1~3番の上位打線に起用されたものの、法大戦を境に4番の定位置にもどるとその試合から5試合連続で打点を記録。秋もこのチャンスでの強さを発揮できれば安定して高い得点力を野手陣はキープできそうです。
宗山・上田に加えて、3季連続で打率3割越えのプルヒッター山田陸人選手(桐光学園④)、大学代表候補に選ばれた蓑尾海斗選手(日南学園④)の2人の4年生がダイヤモンドを担っています。ベストナインに輝いたこの4人のコアプレイヤーが秋も明治大学野手陣を引っ張っていくでしょう。
固定メンバーで組む内野とは対照的に、外野は層の厚さゆえの流動性をもった起用が続きそうです。春は4年生の明新大地選手(明大中野④)と長南佳洋選手(八戸学院光星④)の2人がともに打率3割を超える成績を残したものの、日置航選手(日大三④)・中村奎太選手(日大三④)の日大三高コンビ、さらには1年生から結果を残した西川黎選手(履正社③)も控えています。
ただですら渋滞状態の外野に1年生の瀨千皓選手(天理①)が加わり、初出場の東大戦第1打席でホームランを放つ活躍を見せました。春季リーグ終了時点で10試合38打席に立って打率.268としっかり率も残しました。犠打が多い点は期待している将来像とは少し異なる方向性な気はしますが、その作戦遂行能力の高さは秋も重用するにたる結果でもあるでしょう。
チームとしては俊足巧打の直井宏路選手(桐光学園②)を次世代の丸山和郁選手(現・東京ヤクルト)に育てたいという思惑が見えますが、出塁率には優れているものの2季続けて打率1割台とやや打撃面で物足りない中で上級生sはスタメンを簡単には明け渡しません。
こうしたチーム内競争が明治大学の強さであるのは間違いなく、秋もまずチーム内のレギュラー争いを勝ち抜きスターティングラインナップに並ぶメンバーがどうなるか楽しみです。
また、上記以外でも今の六大学野球で最も守備に優れたセカンドと言える堀内祐我選手(愛工大名電③)がウィークポイントだった打撃面で打率.286を記録し台頭の兆しを見せています。
勝負所でのプレッシャーに強い西山虎太郎選手(履正社④)も代打で結果を残すなど、控えまで含めた層の厚さで明治大学を上回るチームは無いのではないでしょうか。
1-3.明治大学のドラフト候補
史上最長の12年連続でプロ野球選手を輩出している、アマチュア球界の名門中の名門が明治大学です。既に挙げた選手たちの中でも4年生はプロ志望届を提出すれば指名される可能性は当然あります。
しかし、実際のところ今年指名される可能性が最も高いのは春は怪我明けでわずか3打席の出場に終わった村松開人選手(静岡④)です。
昨年は春秋ともに打率.360台と非常に高いアベレージを残し、課題だったパワーツールも三浦銀二投手(現・横浜DeNA)から逆方向にホームランを放つなど進化を見せました。走攻守に高いレベルを残し、主将として臨むドラフトイヤーは高い期待を背負ってきたと思いますが、その中で春季リーグ怪我でほぼ出られなかった悔しさは想像を絶するものでしょう。ただ、明スポのインタビューには次のように語っています。
シーズン終盤で代打で出場した時のスタンドの雰囲気はやはり村松選手ならではだと思いますし、ベンチの最前列で声出しする姿は多くの選手・ファンを魅了しています。
多くの明治大学卒の選手がNPBで活躍する、その系譜を継げる選手だと思うので最後の秋に躍動する姿を見たいですね。
2.慶應義塾大学
21年は春秋ともに優勝を飾り史上初の四冠にもあと一歩のところまで手をかけた慶應義塾大学。キャプテンだった福井章吾選手(トヨタ自動車)を筆頭に、チーム力で見ればアマチュア球界最高クラスのチームを構成していました。
投打の主力だった四年生が卒業したものの、それでもなお強さを維持してリーグ二位でフィニッシュした慶應義塾大学の春季リーグをまとめると次のようになります。
強力打撃陣を擁していながら惜しくも二位で終わった悔しさを秋に見返すか、秋季リーグのみどころを以下に書いていきます。
2-1.慶應義塾大学投手陣
下級生から多くの登板機会を積んできた3人の四年生投手が主軸となる予定でしたが、いくつかの誤算が発生したのが春季リーグでした。
一つは、開幕投手を任された橋本達弥投手(長田④)が東大戦で常にランナーを背負う苦しい投球で再度リリーフ転向せざるを得なかったこと。それでも中継ぎに回ってからはロングリリーフもこなし、強力なストレートとフォークの2球種で支配的なピッチングを見せて最優秀防御率を獲得。大学代表としてオランダでも活躍をしましたが、当初の構想とは違った形だったのは否めません。
二つ目は、主戦投手である増居翔太投手(彦根東④)がシーズン通して不調で、多くの試合でゲームメイクを出来なかったこと。特に与四死球が41回で30個と非常に多く、6被弾もリーグワーストでした。
三つ目は、リリーフエースである速球派左腕の生井惇己投手(慶應④)が登板2試合目で肘を故障してしまったこと。
これら3つの状況ではなかなか投手力で勝ち進むのは難しい春季リーグとなりました。秋は主戦投手である増居投手の復活はまず欠かせない要素になります。生井投手は復帰できておらず、橋本投手もオールスター直前に選手入替が発表されるなどやや厳しい状況なのかもしれませんが、彼らの力なくしてはなかなか優勝するのは難しいでしょう。
この春に力を発揮できたのは下級生投手たちです。先発二番手に入り奮闘した一年生の外丸東眞投手(前橋育英①)はその代表で、多くの試合でゲームメイクを果たしました。
高校時代から140km/h台前半のストレートに、制球力の高いカーブ・スライダー・カットを投げ分けていた姿そのままに大学でも力を発揮しています。橋本投手の代わりにオールスターにも出場し、この秋も淡々と抑えるピッチングが期待されます。
リーグ戦初登板を春に果たした左の森下祐樹投手(米子東③)は来年以降の主戦投手になってほしい選手の一人ですし、浮橋幸太投手(富岡西②)も力強いストレートを武器にリリーフの一角に入ってほしい投手でした。
夏のオープン戦では1年生の前田晃宏投手(慶應①)にも登板機会があり、読売ジャイアンツ三軍との試合は配信もあったので私も視聴しましたがチェンジアップに多くの打者がタイミングを狂わされていました。フォームも綺麗ですし、お父様はかの前田智徳氏なので親譲りの身体能力の高さも期待しています。
2-2.慶應義塾大学野手陣
捕手以外のポジションをほぼ固定選手で運用できた野手は、この春非常に力を発揮できたシーズンとなりました。OPS1.000以上が3人スタメンに並ぶ強力打線で、秋も同様のラインナップを揃えていくことでしょう。
大学代表にも選ばれた萩尾匡也選手(文徳④)はその筆頭格で、春は5本塁打17打点を記録し本塁打王・打点王の二冠を獲得しました。
3年生まで30K%を超える三振率をマークしてしまっていましたが、この春は19.0K%まで下げることに成功し確実性も備わってきています。何より、法政大学戦で先頭打者ホームランとサヨナラホームランを打ってしまったように、一人で試合を決めてしまう勝負強さが魅力です。足も速いので1番バッターも任せられる選手で、センター守備もだいぶ板についてきたように見えるので、主力選手として秋も活躍が期待されます。ヤクルトスワローズの塩見選手が理想型だとずっと思っています笑。
萩尾選手に次ぐ4本塁打を放ったのが廣瀬隆太選手(慶應③)です。1年生からスタメンに名を連ねていますが、この春は初めて四球>三振となり確実性も上げてきました。二塁守備はレンジ・送球面で危うさがあるものの、来年の「その先」を見据えれば今の段階から多くの経験を積んでおくのは良い事だと思います。
「萩尾選手・廣瀬選手の2人で合計10本本塁打を打て!」と堀井監督はシーズン前にお話しされていたそうですが、あと1本届かなかったものの秋も同じだけ打ちそうな気配も感じるのでやはり凄い強打者2人ですね。
浪人で入学した山本晃大選手(浦和学院④)はリーグ戦前から監督の期待値が高かった選手ですが、改めてこの春に大化けした選手の一人です。1番バッターや5番打者として起用され、2本塁打を含む長打率.620は規定到達打者の中でリーグ4番目の数字でした。
こうしたパワーヒッターの間に出塁型のアベレージヒッターを配することで慶大野手陣は”打線”になっています。
選球眼に優れ出塁率.400を記録したキャプテンの下山悠介選手(慶應④)、明大の宗山選手と首位打者争いを繰り広げた朝日晴人選手(彦根東④)、やはり出塁率4割越えでUT型の古川智也選手(広島新庄④)が間に入りつなぎ役をしていくことでチームとしての得点が増えていきます。
残されたポジションは少ないですが、秋の注目ポジションの一つは捕手です。ともに3年生の善波力選手(慶應④)と宮崎恭輔選手(國學院久我山③)が激しくポジション争いを演じており、善波選手が春はメインで起用されたものの慶早戦では宮崎選手がマスクをかぶりました。夏のOP戦でも2人とも起用されており、正捕手争いはこれから卒業まで続いていきそうです。
新戦力が加わる余地は少ないものの、外野では齋藤來音選手(静岡③)・栗林泰三選手(桐蔭学園③)・吉川海斗選手(慶應③)の3人の3年生が春も少ない打撃機会で安打を放ち虎視眈々とポジションを狙っています。下級生でも本間颯太朗選手(慶應②)は代打起用で7打数3安打と結果を残しました。
こうした選手の突き上げがチーム力を上げることを明治大学が証明しているので、秋の慶應義塾大学でもベンチメンバーがどこまで活躍しレギュラー陣を脅かすかに注目してみるのも面白いかもしれませんね。
2-3.慶應義塾大学のドラフト候補
3年連続で直プロ選手を輩出している慶應義塾大学ですが、今年も実績豊富な4年生がドラフトにかかる可能性は十分高そうです。中でも有力なのは大学日本代表に選出された橋本達弥投手と萩尾匡也選手の2人でしょう。
橋本投手は先発転向こそうまくいきませんでしたがリリーフでは変わらず安定した投球を見せており、特に野球伝来150周年のプロアマ記念試合では藤原恭大・ブライト健太の2選手から三振を奪うなど1イニングパーフェクトピッチング。リーグ戦ではロングリリーフの経験も豊富で、150km/hに迫るストレートと鋭く落ちるフォークの2球種は即戦力リリーフ投手の可能性を秘めています。
萩尾選手は既に詳細を記載済みですが、純粋なパワーの強さと走力を兼ね備えた選手で、昨今の右の強打者が評価されやすいNPBドラフトにおいては上位指名も十分視野に入ってきそうです。
秋のリーグでどこまで評価を伸ばせるか、期待していきたいと思います。
3.立教大学
下級生から多くの出場機会を得た選手が4年生のラストイヤーを迎え、今シーズンは優勝候補筆頭だと思っていた立教大学。春は明大・慶大の上位2チームから勝ち点を取れませんでしたが、他のカードでは1試合も落とさなかったので本当に惜しかったなと思います。
春季リーグをまとめると以下のようになるでしょう。
メンバー的には充実した戦力を誇る立教大学、秋はどのような戦いで頂点を目指していくのか。以下見ていきましょう。
3-1.立教大学投手陣
今年の立教大学のエースは荘司康誠投手(新潟明訓④)です。
昨シーズンまで未勝利でしたが、この春は7試合に先発し2勝を挙げました。そのうちの6試合で7イニング以上投げており、最後のカードとなった明治大学戦では1戦目・3戦目に先発し計17イニングを自責1に抑えるなど非常に高いパフォーマンスを発揮しました。
六大学野球オールスターでは坊っちゃんスタジアムで157km/hを計測もしたそうで、「球の速い変化球ピッチャー」は更に進化を遂げそうです。大学日本代表にも選ばれ、飛躍のシーズンとなったラストイヤー、。秋もエースとしてチームを牽引するピッチングを見せてくれることでしょう。
おなじく4年生右腕の島田直哉投手(龍谷大平安④)も今春初勝利を記録。
荘司投手同様に背丈のある、ピッチャーらしい体格の投手で、投球フォームの綺麗さはこの世代でもトップクラスだと思っています。先発した試合でまだ6イニングを投げ切ったことが無く、この春も防御率は4点台と数字には現れていませんが、150km/h近い速球と落差のあるカーブボールなど持っているモノは素晴らしい投手なのでこの秋に覚醒が期待されます。
21年の主戦投手だった池田陽佑投手(智弁和歌山③)が初戦で負傷してしまった穴を埋める活躍を見せたのが、2年生ながら背番号11を背負う沖政宗投手(磐城②)です。
立教大学の全12試合中10試合に登板し、23.1イニングを投げて防御率は1.54。打者のタイミングを狂わす「魔球」チェンジアップを武器にフル回転でチームを支えました。秋は先発2戦目での起用も増えるかもしれませんね。
立教大学は昨年から実績のあるリリーフ投手が多かったのですが、左腕の宮海土投手(國學院栃木④)の調子が上がらず、昨年12試合に登板した野口裕斗投手(東海大相模③)は春季リーグ出場無しに終わりました。1年生の吉野蓮投手(仙台育英①)らが出場機会を得たものの、荘司・島田・沖の3投手にかなり依存度が高い投手起用となってしまった感は否めません。
秋季リーグの登録選手では野口投手もしっかりと背番号14が割り振られていますし夏のOP戦でも好投を続けているようですので、リリーフ投手陣の再構築が立教大学の秋季リーグの鍵となってくるでしょう。
3-2.立教大学野手陣
冒頭でも書いたように、下級生からレギュラーを掴み主力として戦ってきた選手の多くがラストイヤーを迎えるのが今年の立教大学の野手陣です。
中でも、主将の山田健太選手(大阪桐蔭④)は東京六大学野球を代表する選手の打ちの一人でしょう。
大学日本代表でもキャプテンを担い、1年生から積み上げてきた実績と、端麗な容姿はスター選手と呼ぶにふさわしい選手です。この春も打率.310、出塁率.463とまずまずの結果を残しましたが、どこか物足りなさがあるのは0本塁打4打点に留まってしまった部分ではないでしょうか。やはり1年春のリーグで打率.375、2本塁打、7打点という成績を残している姿を知っている分、4年間の集大成としてキャリアハイをこの秋に見せて欲しいというのは六大学を見ている多くのファンが切望しているところでしょう。
山田健太選手と高校・大学で一緒にプレーする宮﨑仁斗選手(大阪桐蔭④)もやはり1年生から多くの出場機会を貰っていますが、この春は課題だった出塁率を大きく上げることに成功(出塁率.446)しました。初めて四死球の数が三振の数を上回り、粘り強いバッティングが出来るようになった結果、キャリアハイとなる打撃成績を残すことが出来ました。足の速さは指折りですし、3番バッターとして秋も中軸を担うでしょう。
昨年から正捕手を担う黒岩陽介選手(静岡④)、シュアな打撃で両翼・三塁の複数ポジションで守れる吉岡広貴選手(広陵④)も揃って打率3割を記録し、この黄金世代の打者の持っている力の強さを感じさせました。
このようにどの選手も打率を見れば悪くない成績を残したのですが、長打という部分で上位2チームとは大きな隔たりが出てしまいました。春の立教大学はチーム打率3位、出塁率2位でしたが、長打率.311はリーグ5位。本塁打数3本もリーグ5位となっていますし、その内の2本は荘司投手によるものでした。
秋季リーグで順位を上げるキーとなる選手の一人がトップバッターの道原慧選手(駒大苫小牧④)でしょう。
センターとして守備範囲・肩・足に優れた選手ですが、打撃はデビューシーズンとなった3年春の打率.316から2季続けてパフォーマンスを落としてしまい春は打率.226に留まりました。強く振るスイングで昨年は2本塁打を放ちましたが、この春は長打0本。盗塁は5つ決めているものの、持っているポテンシャルからは大きく乖離してしまっています。上位打線で塁を進め中軸で返すという野球のセオリーを考えても、1番打者の道原選手の活躍が秋に見られれば結果はついてくるのではないでしょうか。
ショートで7試合にスタメン出場し失策0、レンジの広さも見せた柴田恭佑選手(東明館②)や、春季リーグ開幕戦から中軸でスタメン出場を果たした西川晋太郎選手(智弁和歌山③)、昨秋は全試合スタメン出場の田中祥都選手(仙台育英②)など、黄金世代に割って入らんとする選手はいずれも守備でいいプレーを見せてくれました。
一方で、打撃面では結果を残せておらず、打力でレギュラー陣に殴り込みをかけられる選手が出てくれば秋は本当に面白いチームになるだろうなと考えています。
その候補となるのが、夏のOP戦で4番も担った畑敦巳選手(浦和学院)とフレッシュリーグで活躍した鈴木唯斗選手(東邦①)です。畑選手は高校時代に非常に良いなと思ったキャッチャーで、あのコロナで延期する前の20春リーグ戦登録メンバーでもありましたが出場機会無く、この夏Aチームでついに出場機会を増やしています。鈴木唯斗選手は読売ジャイアンツ三軍戦でもスタメン出場するなど新進気鋭の1年生で、この秋見られるのが楽しみです。
3-3.立教大学のドラフト候補
高校時代から名前を知られた4年生が多数在籍する立教大学ですが、今年のドラフト候補の中でも上位指名がほぼ確実と言える選手が二人います。既に投手編・野手編で多くの分量を割きましたが、右腕の荘司康誠投手、キャプテンの山田健太選手です。
荘司投手は常時140km/h台後半のボールを試合終盤でも投げ続けられるスタミナを持っている一方で、カーブ・スライダー・カット・フォークといった多彩な変化球も精度良く操っています。
奪三振率22.2K%、与四死球率11.9BB%というスタッツは歴代のBIG6→プロ入りを果たした投手たちと比べて突出したものではないですが、十分上位指名に足るレベルにあります。ハーレムベースボールウィークでは二度の先発がともにアメリカ戦で、チームのエースとして起用されているなと感じました。
4年生になってからの本格的な台頭ですが、DeNA入江大生投手が1位指名でプロに行き今や150km/hを超える速球を常時投げてリリーフに欠かせない存在となっていることを思えば、荘司投手も十分に最初の12人に入ってくる可能性を持っているでしょう。
山田健太選手についてはこの秋が非常に大事になってきます。
リーグ戦でも代表でも、いい場面で回ってきたときに仕留められないシーンがこの1年ちょっと続いています。二塁守備のレンジやスローイングでのアドバンテージは少なく、足で稼げる選手でもないことを考えると、圧倒的な打力で上位指名を勝ち取る必要があるのは間違いありません。
4年間リーグ戦に常に出続けて安定した出塁率を稼ぎ通算OPS.847は立派ですが、繰り返しとなってしまいますが1年生春で六大学野球を震撼させた打撃を思い出すと一段高いレベルを求めたくなってしまいます。
特に立教大学が18年秋以降一度も勝てていない慶應義塾大学戦で、山田選手が打ってチームを勝たせるような試合を観られたら多くのファンは胸を熱くさせることでしょう。
4.法政大学
2020年春の優勝以降、4季続けて順位表の下位に沈んでしまっている法政大学。しかし今年の春の法政大学はかなり雰囲気が変わってきていて、これから強くなっていくのではないかという期待感がありました。
春を簡単にまとめるとこちら。
4位ですが、これからの展望は比較的明るいチームなのではないかと考えています。以下、投打見ていきます。
4-1.法政大学投手陣
三浦銀二投手(現・DeNA)の卒業後、新チームのエースは篠木健太郎投手(木更津総合②)です。
2年生ながら大学日本代表にも選出、オランダでも結果を残しました。沈み込むダイナミックなフォームから繰り出される150km/hを超えるストレートは非常に力があり、既にリーグトップクラスの質を誇っています。あのフォームはご自身で考えたそうで、それだけで凄みに溢れたエピソードですよね。
スタミナ的にも1完投を含む7試合で先発登板を果たし、そのうち4度は6イニング以上投げています。セットになってからリズムや制球を乱し、一挙に3~4点を取られてしまうシーンもあるため防御率は3点台でフィニッシュしましたが、2年生にして既に今のドラフト上位候補に混ぜても違和感のない投手の一人です。
何より、試合の前後含めて闘志も出せば笑顔も見せる、表情豊かに野球を楽しむ姿は多くの人の目を惹きつけています。スター性という項目が評価軸にあれば間違いなく10点満点でしょう。昨年の法政大学はビハインド時にベンチが暗くなってしまうことがあると法政スポーツで三浦投手が語っていましたが、篠木投手は「ムードを作る」投手でもあるように思います。秋も笑顔満点、好投を見せて欲しいなと期待しています。ᕙ( ˙-˙ )ᕗポーズ見せて欲しいですね。
二戦目の先発に多く起用されたのは尾﨑完太投手(滋賀学園③)です。
春は8試合28イニングに登板し防御率1.93。左ピッチャーですがオリックスの山岡泰輔投手のような投球フォームで、140km/h台前半のストレートと緩いボールで緩急をつけるピッチングが魅力です。こちらも闘志を全面に出すピッチングで、秋も主力投手の一人として登板を重ねていくことでしょう。
春季リーグを支えたのはフル回転した2人の3年生リリーバーです。右の塙雄介投手(常総学院③)は試合中盤を担い、10試合21.1イニングに登板。左の武冨陸投手(日大藤沢③)はクローザーとして9試合14イニングに登板しました。
登板数とイニング数の通り二人とも回跨ぎを前提としたピッチングで、接戦でも点差があっても投げてきました。左右両輪で秋季リーグでも法政投手陣の穴を埋めるピッチングに期待したいです。
下級生では篠木投手の同級生の吉鶴翔瑛投手(木更津総合②)が春季リーグで初登板を果たしました。秋の登録名簿にも背番号21で掲載されており、木更津総合出身の2人の投手が法政大学のこれからを支えるとムネアツですね。
また、外野手登録ではありますが野尻幸輝選手(木更津総合④)が夏のOP戦では投手起用を複数回されているようで、彼の起用もこの秋は注目です。木更津総合リレーも見られるかもしれませんね笑。
4-2.法政大学野手陣
昨年は打撃・守備共に芳しくなかった野手陣ですが、今年の春はポジションをだいぶ固定できるようになってきてかなりのレベルアップが見られました。
トップバッターで起用される宮﨑秀太選手(天理④)は打率.367でリーグ4位の高打率を記録。49打数14三振と三振も目立ちますが、2本塁打を含む長打5本を放っており積極的に振っていくスタイルは変えずアグレッシブな一番バッターとして取り組んでほしいと思います。
クリーンアップを担うのは主将の齊藤大輝選手(横浜④)、浦和博選手(鳴門③)、今泉颯太選手(中京大中京③)の3人の内野手です。いずれも打率は2割台、特に齊藤選手は昨秋4割台を記録するほどの打力を持っていたのでこの春かなり苦しみましたが、それでもこの3人で6本の本塁打を春季リーグで放った点は素晴らしいです。
中でも今泉選手は現在はサードをメインとしていますが、遊撃手の経験も豊富で来年のドラフトイヤーでは注目を集める強打の右のショートになるでしょう。最終カードの東大戦では2試合続けて4番に座り、その期待感はベンチも抱いていると思います。
キャッチャーの村上喬一朗選手(福岡東④)も昨年と比べて打撃・守備で大きく成長を遂げました。打率3割越え、守備でも投手陣を鼓舞しつつブロッキング・スローイングといった捕手としての基本動作を忠実にこなしており安心して投手が投げられる環境を創っています。
3年生の内海貴斗選手(横浜③)はこの秋にポジションを取ってほしい選手の一人で、春季リーグでも放った安打はサヨナラタイムリーとホームランの2本。昨年見たフレッシュリーグではやることが無い状態だったので、リーグ戦で起用する頻度を上げて欲しいなと個人的には思います。
今年はショートに海﨑雄太選手(埼玉栄④)、サードに今泉選手がいるのでなかなか難しいかもしれませんが、秋は三遊間のポジション争いに注目するのも面白いと思います。
また、前年と比べて守備の力が非常に増したなと感じました。個々の守備範囲・送球は勿論、もっと根本的なカバーリングまでしっかりと徹底されるようになってきていると思います。
チームとして10本の本塁打がありながら、打点を10点以上稼げた選手が居ない点は、法政大学が春に上位に入れなかった原因の一つかもしれません。打線の組み方もそうですし、チャンスでの三振やランナーを進められないアウトが多くみられたので、秋には先に挙げたパワーヒッターたちの間に器用な出塁型の選手が台頭すると一気に得点を伸ばせるでしょう。
すでにリーグ戦出場経験のある西村友哉選手(中京大中京②)や、中津大和選手(小松大谷②)ら下級生がレギュラーに食い込む可能性もありますし、秋の登録名簿で背番号がついている福岡大真選手(筑陽学園③)や伊藤勝仁選手(常葉大菊川③)ら高校野球時代から注目された強打者がベンチに控えるのは楽しみです。
明治大学並みの選手層はあるチームなので、部内での熾烈なレギュラー争いも見られたらもっと強くなると思います。今年のチームの雰囲気の良さは見ている誰もが感じるところですし、浦選手は次のように話しています。
3年生以下の選手が伸び伸びやれるのも4年生の雰囲気づくりあってこそみたいなところはあるので、今年の幹部生の努力を感じますし、力のある選手が揃っているので溌溂としたプレーを秋も見せてください。
4-3.法政大学のドラフト候補
今年のドラフト候補という観点では、セカンドを守り通算打率3割越え、出塁率も長打率も今年の候補の中で5本の指に入るキャプテン齊藤大輝選手が挙げられます。
ヤクルトスワローズの山田哲人選手のようにインコースのボールさばきが上手く、軸回転で綺麗に回ってレフトスタンドに放り込む打撃は天性のもので、今春のホームランもやはりライナー性のレフト方向へのホームランでした。
セカンド守備については肝心なところでミスが出てしまったり秋に進化した姿を見せて欲しいなと思いますが、齊藤選手には足があります。この春だけで6盗塁、通算14盗塁の脚力を持った強打の二塁手という位置付けができれば他の二塁手のドラフト候補とは大きく差別化出来るでしょう。
横浜高校、法政大学と名門でキャプテンを務め、特に今年の法政大学の雰囲気を作り上げているのは齊藤選手の力も大きいでしょう。右打ちの強打者かつキャプテンシーのある選手ということで多くのチームが欲しい人材であることは間違いないので、10月楽しみですね。
5.早稲田大学
昨秋は2位でフィニッシュしたものの、今年の春はメンバーが大きく変わったこともあり5位に沈んでしまった早稲田大学。センターラインの選手と先発の主戦投手が卒業したことで、まだチームとしての完成度が上がらないまま春のリーグ戦を迎えてしまったように見えました。春はこのようにまとめられます。
個人的に今年は野手が厳しいのではないかと見ていたのですが、春季リーグはチーム打率.232とチーム出塁率.326はともにリーグ5位。盗塁5個はリーグ最下位で、チーム打点31は4位立教大学と12打点も開いています。ひときわ目立ってしまったのは17の失策でした。
以下、投打でみて行きましょう。
5-1.早稲田大学投手陣
春季リーグが始まる段階で早稲田大学は左右の3年生エースを揃えることに成功しました。
右のエースは加藤孝太郎投手(下妻一③)。
この春は6試合43イニングに登板し防御率1.67でした。球速で押すタイプではないですが、左右に投げ分けるコントロールの良さと変化球の精度の高さ、ピンチでも動じず安定したピッチングを続けられるマウンド度胸など他の投手とは一線を画する好投手です。43イニングで被安打29、いかにバッターが加藤投手からヒットを打つのか難しいのかが良く分かります。秋も初戦を任されるのは加藤投手になるでしょう。
左のエースは齋藤正貴投手(佐倉③)です。
シーズン前に行われた横浜DeNA二軍との試合では5回無失点。春の初戦の先発にも抜擢され、今年の主戦投手として考えていたと思いますが、法大戦・明大戦で3敗を喫し続く東大戦では2戦目起用に変更となるも3回5失点。故障なのか不調なのかは分かりませんが、この試合を最後に春は登板無く大きな誤算となってしまいました。
夏のOP戦では復帰し中継ぎでの登板をしているようなので、秋はリリーバーとしてマウンドを踏むことになりそうです。
齋藤投手の不在の穴は埋まり切りませんでしたが、その間に投げた3年生以下の投手たちは早稲田大学の未来は明るいなと感じる内容でした。
2年生右腕の中森光希投手(明星②)は6試合10イニングに登板、そのうち東大戦での先発を含め5試合は自責0で抑えて光るところを見せました。3年生の伊藤大征投手(早稲田実業③)も今春リーグ戦初登板でしたが7試合に登板、しっかりと140km/h台を記録しています。
早慶戦ではさらに鹿田泰生投手(早稲田実業②)が145km/hを超える強いボールを投げており、夏はソフトバンクホークス三軍との試合で先発登板も経験しています。
左腕の清水大成投手(履正社③)が久しぶりの先発登板を果たしたのも早慶戦です。結果はついてきませんでしたが、履正社時代以来の公式戦での先発が伝統の早慶戦になるあたり、清水投手のポテンシャルの高さは小宮山監督からも認められるところでしょう。
また、次代のエース候補伊藤樹投手(仙台育英①)は6試合に登板、150km/hを超える強いボールで六大学ファンの目をくぎ付けにしました。
六大学オールスターに選ばれた1年生は慶大の外丸投手と伊藤樹投手だけで、この世代を引っ張っていく早慶エースになれる予感を感じさせます。
こうした下級生の台頭がある中で、秋にどう順位を上げていくか。投手力という部分では先発2番手問題が悩ましく、リリーフの頭数を揃えて全員で戦っていく形になっていくでしょう。特に4年生の左サイド投手、原功征投手(彦根東④)の使いどころは重要です。経験豊富ですし、春も後半は自身のペースを掴み多くの試合を無失点で抑えています
守備から流れを掴み接戦を取っていく戦い方が秋の順位を上げるには正しいのかなと思っています。
5-2.早稲田大学野手陣
今の六大学最強バッターと言っていい蛭間拓哉選手(浦和学院④)を擁しながら、得点力に乏しかったのが今年の早稲田大学です。
蛭間選手は今年徹底したマークを受ける中で一定の結果を残すことが出来ました。打率こそ.279ですが出塁率.456、長打率.628は十分すぎるほど強打者で、これで不調と言われるのだからやはり蛭間選手の能力は頭一つ抜きんでています。物足りなく感じさせるのは2本塁打放っているにもかかわらず打点が4に留まっている点でしょう。ただ、多くの投手が蛭間選手に対して四球OKの攻めをしていたことは留意すべきです。秋も蛭間選手は変わらず強打者で、大学日本代表のチームにおいても一人だけ既にプロに片足突っ込んでいると感じました。
結局、蛭間選手の前後を打つバッターが大事になってきます。春は多くの試合で3番に中村将希選手(鳥栖③)を据え、5番は野村健太選手(山梨学院③)や生沼弥真人選手(早稲田実業③)が起用されたものの最後まで定着させることが出来ませんでした。
早慶戦でヒントが少し見えたのかなと感じていて、初戦は1番に蛭間選手を置くことで勝負をする回数を増やし、2戦目では3番中川卓也選手(大阪桐蔭④)、4番蛭間選手、5番吉納翼選手(東邦②)というクリーンアップを組みました。
キャプテンの中川卓也選手は出塁率が高くこの春は.351、通算でも.328を残すバッターです。蛭間選手の前にいかにランナーを貯めるかということを考えれば、秋は中川卓ー蛭間をくっつけることが必要なのではないかと考えています。
ただ、蛭間選手の後ろを打つバッターは秋も苦しむだろうなと思います。長打を打つポテンシャルのある野村選手と生沼選手がメインで使われるとは思いますが、春は共に打率1割台でOPSも4割台。身体も大きく、長打を打てる能力はあるので秋に覚醒してくれると大きく戦い方が変わっていくでしょう。
捕手としての負担が大きいですが、思い切って春に打率.349の好成績を残した印出太一選手(中京大中京②)を抜擢するのも可能性としては出てくるかなと思います。
ただ、春はスローイングを中心にバッテリーとしての課題もあり、守備面の強化が第一と早稲田スポーツで本人が次のように話しているので打順は敢えて上げないでしょう。
春季リーグで早くも2人の一年生が代打で起用されました。前田健伸選手(大阪桐蔭①)と尾瀬雄大選手(帝京①)です。ともに1年生と思えないほどがっしりと身体が出来上がっていますし、秋も出場機会を与えられていくでしょう。
個人的に期待をしたい選手が外野手の森田朝陽選手(高岡商業③)です。
フレッシュリーグ出場時からセンターを守る強打の左打者として活躍をしてきましたが、この春にリーグ戦初出場を飾ると12打数5安打と大当たり。5番~6番バッターのポイントゲッターとして出場させてもいいですし、トップバッターという線もあるように感じています。
打撃面以上に春に目立ってしまったのが守備面です。主将の中川卓也選手がセカンドにコンバートするなど動きがあったものの、チーム17失策は明らかに多すぎです。秋は中川選手は元のサードに戻ると考えられ、また送球面で難のあった中村選手は外野手登録となっています。
また、1年時から遊撃についてきた熊田任洋選手(東邦③)もやや攻守に精彩を欠いてしまった春季リーグとなり、夏の試合ではセカンドでの出場もあったようです。中村敢晴選手(筑陽学園②)と山縣秀選手(早大学院②)の2年生遊撃手が秋は背番号が振られており、この辺のポジション変動も楽しみにしていきたい部分ですね。
今まさに夏のラストスパートですが、締まったゲームを秋は見せてもらいたいなと思います。
5-3.早稲田大学のドラフト候補
早稲田大学のドラフト候補は言うまでもなく蛭間拓哉選手です。大学生ナンバーワン野手だと私は思っています。
生で見る蛭間選手のスイングスピードの速さは「レベチ」ですし、早慶戦の大舞台でこれまで結果を残し続けてきたハートの強さは大学代表として出場したハーレムベースボールウィークでも、プロアマ記念試合でも発揮しました。
センターにプロのレベルで残れるかは分かりませんが、肩の強さは確実にプロレベルです。3年生までは怪我にも苦しみましたが、このラストイヤーでは夏のハードな代表戦含めて離脱せず出場を続けています。
ドラフト会議の一番最初の順位で指名されることを心待ちにしています。
6.東京大学
春は残念ながら1勝をあげられなかったですが、早稲田大学とは2度の引き分け試合を演じるなど多くのファンの心を掴んだ東京大学。春のリーグ戦をまとめると次のようになります。
昨年は春秋ともに1勝ずつをあげ今年もそこに肉薄した戦いぶりを見せた東京大学。ただ、中身は昨年と大きく変わったなと感じています。改めて秋の展望を以下に書いていきます。
6-1.東京大学投手陣
投手陣を引っ張るのは2年生からエースとしてチームを牽引してきた”偉人”井澤駿介投手(札幌南④)です。
年々ビルドアップし身体が大きくなっていますが、今シーズンは安定して140km/h前後のストレートを投げるまでに成長を続けています。累計で133イニングの登板は現役選手最多で、ランナーを出してもカットやスライダーなど変化球も駆使しつつ粘り強く投げ込む姿はエースとしての姿を体現しています。
春は7登板35イニングに登板。早稲田大学との初戦で9回2失点完投を見せ引き分けになった試合は最終回ツーアウトで追いつかれてしまった悔しい試合だったと思いますが、持ち味を最も出せた試合だったでしょう。
六大学オールスターでは1イニングを投げて3三振。早大の蛭間選手からも空振り三振を奪うなど更に成長していく姿がまぶしいです。”偉人呼び”を流行らせてしまった責任を感じて秋もたくさん応援しに行きます(笑)。
冒頭のまとめに書いたように、この春に東大投手陣は他大とは全く異なる投手運用を行い、実に5人の投手が先発登板を果たしました。もちろんリーグ最多です。4戦目まで縺れた早稲田大学戦の3回戦が象徴的ですが、この日は0-4で負けたものの7投手を投入、7回まで0-0という接戦で東大投手陣が層の厚みを備え始めた試合だったように思います。
今年リーグ戦初先発を果たした4年生投手たちが頑張った結果、ある程度の運用が可能になったと考えています。
チーム2番目の3先発を果たした小髙峯頌大投手(筑波大付④)、早稲田戦で1先発を含む3試合6イニングを2失点に抑えた綱嶋大峰投手(筑波大付④)、リリーフでサイドスローから左のクロスファイアに投げこむ齊藤祐太郎投手(筑波大付④)の3人の筑波大付出身選手はその筆頭格でしょう。
春に大きく経験を積むことができた彼らに加え、井澤投手同様2年生から活躍する副将の西山慧投手(土浦一④)、左の古賀拓矢投手(修道④)も控え、4年生が秋はリリーフを担っていくのかなと思います。
七大戦という旧7帝大の試合で東大は今年3戦全勝を飾りましたが、そこで先発を担ったのが井澤投手と3年生の松岡由機投手(駒場東邦③)・鈴木健投手(仙台一③)です。
この左右の3年生二枚看板が秋は先発起用主体になっていくと考えていて、ともに140km/hを超えるストレートを武器にリーグ戦でも経験を積んでいます。春は序盤の試合で打たれたら止まらない状態になってしまったこともありましたが、試合を重ねるごとにいいピッチングが出来るようになっていきました。秋は最初から素晴らしいピッチングを見せてくれると信じてやみません。
6-2.東京大学野手陣
東京大学の野手陣は昨年までと今年で大きくスタッツが変わりました。野球においてインプレーの打球は運に左右されますが、逆にフェンスを越える本塁打、インプレーにならない三振・四死球は純粋な選手の能力と考えられています。
今年の春、東大野手陣は三振を大きく減らし、四死球を大きく増やすことに成功しました。四死球の数÷三振の数をBB/kと表記しますが(※実際は四球÷三振なので死球を含む私の数字は疑似です)、その値は次のようになります。
これはとてつもない革命だと感じていて、ここまでチームとしてのアプローチが一冬で変わることはどのステージでもなかなか無いでしょう。※ちなみに2022年のBB/Kは実は5位で、東大の次に明治大学の0.61となります。一位は立教大学の1.01です。
ちょっとした数字を出しましたが、四球が増えて三振が減った、これだけで素晴らしい事なのは言うまでもありません。しかも東大野手陣はゲームでしっかりとスイングしており、法大の篠木投手や慶大の橋本投手を相手にしても多くの外野フライを飛ばしていました。
今年の東京大学の野手陣は強打の選手が多く在籍しており、トップバッターを担う宮﨑湧選手(開成④)はその筆頭でしょう。
春は打撃好調で打率.250、出塁率.375を記録。昨年までBB/K=0.12と三振の数が四球を大きく上回っていたのですが、春はBB/K=0.80と大幅に改善。6盗塁は法大齊藤選手に並んでリーグトップタイで、出塁をすることで投手に圧力を掛けられる選手でもあります。クリーンアップを担うこともありますが、一番多く回る打順に置くことが一番最適なのかなと感じています。
思い切りの良いバッティングと、選球眼に長けているのが阿久津怜生選手(宇都宮④)です。
アメフト部出身として話題にもなりましたが、身体能力が非常に高く今年の春は早稲田大学戦で9回に起死回生の同点ホームランを放ちました。打率こそ.205ですが、野手の正面を突く強い当たりも多く、打球にあと少し角度がつけば長打を量産できる予感に満ちています。
また、この春はBB/K=1.80、出塁率.354と非常に高い出塁能力を示しました。通算では17四死球20三振でBB/K=0.85。東大野球部所属の直近10年の選手で50打席以上で通算BB/Kが1.00を超えたのは2016年春にベストナインを獲得した桐生祥汰氏ただ一人(BB/K=1.00)です。宮﨑選手ー阿久津選手の2人はやはりコアの選手なのでぜひくっつけていきたいですね。
秋の見どころの一つが三塁手争いです。春は最終的に浦田晃佑選手(金沢泉丘④)が打率.269で二塁打3本の強打と守備力でレギュラーを勝ち取りましたが、序盤で起用された赤井東選手(浅野④)も打撃に強みのある選手ですし、UTプレイヤーの伊藤和人選手(城北④)や守屋大地選手(暁星④)も候補に挙げられます。高いレベルでのレギュラー争いがチームを強くするので、どの選手にも頑張ってほしいですね。
秋季リーグで悲願の最下位脱出に向けて必要不可欠なのは、春に不振だったキャプテン松岡泰希選手(東京都市大付④)と中井徹哉選手(土浦一④)の打撃復調です。
ともに下級生から多くの試合を経験し、センターラインを守る守備も重要視され他大学からのマークもきついとは思いますが、やはり今の東大の勝利には松岡泰・宮﨑・阿久津・中井の四年生4選手が打撃面で打線を引っ張ることが求められます。
チームの風土として足を使っていくことはこの1年半ほどでかなり浸透しており、伊藤翔吾選手(開成④)のような代走で存在感をみせつつ守備にも入れる選手が出てきています。他大学の牽制やマークもきつく走るのは勇気がいりますが、純粋な打力ではどう考えても勝てないのでギャンブル性を含んででもアウトと引き換えでない進塁は必要になる戦い方は正しいと考えます。あとはランナーを返す打撃をどれだけ多くの選手が出来るかにかかってきます。
3年生の既にレギュラーを掴んでいる2人の選手もこの秋にキャリアハイを目指してほしい選手です。
180cm87kgのがっしりとした体を持ち、チームの4番を担う梅林浩大選手(静岡③)は特に期待の大きい選手で、打球の速さはチーム一番でしょう。
一塁の守備も昨年に比べてかなり上達していますし、チームの軸となる選手として秋は暴れて欲しいと思います。オールスターに選出も、直前で選手変更となってしまったのが不安ではありますが、どうにかコンディションを整えて欲しいですね。
別府洸太朗選手(東筑③)がもう一人の3年生の中軸打者候補です。
21年秋に代打中心に起用されると7打数3安打の結果を残し、この春に出番を一気に増やしました。打撃の確実性が非常に高く、センターの守備でも好捕を数多くしてきました。シーズン当初は下位打線でしたが、結果を残したことで最終カード法大戦では5番を担い、夏の七大戦でも良いバッティングが出来ているようです。
主に代打で出場し10打数4安打と結果を残した大井温登選手(小松③)は梅林選手の代わりにオールスターに出場、この秋も代打で一番期待できる選手になるでしょうし状況によってはスタメン起用も十分視野に入ってきそうです。
守備面では二遊間の守備に注目です。春はチーム23失策、特に内野手が多くのエラーを喫してしまい無駄なランナー・得点を許してしまいました。中井選手は勿論、4年生の清永浩司選手(佼成学園④)・林遼平選手(甲陽学院④)・林英佑選手(土浦一④)らの良いプレーが沢山みられると本当に勝利が近づくと思うので、秋とても期待しています。
秋の登録選手の中では、別府選手と同じ東筑高校の秀島龍治選手(東筑③)と藤田峻也選手(岡山大安寺中等②)の2人がリーグ戦未出場選手で背番号を割り振らています。秀島選手は以前フレッシュリーグで拝見した時によく声がけをするショートだなと思った選手ですし、藤田選手はもし出場できれば内田開智選手(開成②)に次ぐ2人目の2年生野手になるので楽しみです。
春のフレッシュリーグで1年生ながらホームランを放った杉浦海大選手(湘南①)も状態によっては秋に顔見せがあるかもしれないので、新戦力も楽しみなシーズンです。
野手が先に点を取って継投で勝つ、東大野球部が最下位脱出にはこの形が必要だと思うので、秋本当に楽しみにしています。
※なお、ここまで書いて東大新聞の春季リーグ総括を読んだら同じようなことをデータ×まともな文章力で書いてありました。違う視点にすればよかったかな笑。まぁ考えることは近しくなりますよね。
6-3.東京大学のドラフト候補
そもそも東京大学から硬式野球を継続する時点で超人だと思うのですが、昨年の卒業生は井上慶秀選手(現・三菱自動車岡崎)、奥野雄介投手(現・三菱自動車倉敷オーシャンズ)、高橋佑太郎選手(現・高知ファイティングドッグス)の3名が硬式野球を続けています。
今年の選手では井澤投手がプロ志望届提出を明言しています。
「育成選手としてでもプロになりたいと思っています」と力強く語っていますが、まずその覚悟が凄いですね。やっぱり偉人です。
2年生の初登板から見ていますが、シーズンごとに身体の厚みが増して、球速や変化球もブラッシュアップしていっている成長速度には目を見張るものが有ります。今年のオールスターの3者三振は後日動画で見たものですが、また夏の間に進化したのかと楽しみになっています。
東大卒のNPB選手は過去6人。宮台投手を輩出して以来のNPB選手として10月指名されることを強く望みますし、この秋にぜひ個人として3勝以上あげてチームの順位を上げて欲しいですね!
7.最後に
なにごともなく20000字を超えていますが、もっと伝えるべきことが沢山あるような気さえしてきます。それだけ東京六大学野球は面白いので、ぜひ神宮球場にみなさん足を運んでほしいですね。
特に秋は各大学の4年生のラストシーズン。一球一打に集中して見届けたいと思います。どの選手も怪我無く、全力でプレーできますように。がんばってください。
そういえばドラフト候補については昨年末に投打でまとめてnote書いておりますのでこちらもぜひ笑
■出典
写真は筆者撮影。
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