【どこよりも詳しい】スワローズ新外国人ライネル・エスピナル投手徹底分析
こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎
セリーグ連覇を果たした東京ヤクルトスワローズ。オフの話題と言えば、新しい戦力である外国籍選手の獲得でしょう。12月早々、第1報が入ってきました。
先発候補としてライネル・エスピナル投手を獲得しました。
背番号は58。今年まで長岡秀樹選手がつけていましたが、過去はオンドルセク投手がつけていた番号でもあります。
※12/13に背番号58→99への変更となりました。蔵本選手以来で、高津コーチ時代の番号ですね。
優勝を飾った2022年体制からスアレス投手・A.J.コール投手・マクガフ投手・キブレハン選手の4人が退団することが発表され、特にマクガフ投手は当初想定では残留見込みだったもののMLB志向が強く、最終的に球団として送り出す決断を行いました。
4年連続で50試合以上の登板を果たしたマクガフ投手が居なくなることは非常に痛いですが、実はコール投手の一軍34試合36イニングで防御率2.75の離脱分もかなりの痛手となっています。スアレス投手も一・二軍合わせて77イニングを消化しており、スワローズとしてはその穴埋めを考えなくてはなりません。
エスピナル投手が補強の第一弾となり、記事によるとさらに2人の投手を予定しているとのこと。
エスピナル投手がどんな投手なのか、スワローズにどうフィットしていくのか考えていきましょう。
0.ライネル・エスピナル投手のプロフィール
エスピナル投手はドミニカ共和国出身、190cm/97kgの大型右腕です。1991年生まれの31歳で、スワローズで言えば高梨投手・西浦選手と同い年の選手です。
スワローズ在籍3年目のシーズンとなるドミンゴ・サンタナ選手とは同じドミニカ出身で、年齢も1個差。来日前にアドバイスなどあるかもしれません。
20歳でヤンキースに入団し7年間在籍した後、2019年にルール5ドラフトでレッドソックス傘下へ移籍。この年、トミージョン手術も受けています。2022年にはスワローズ移籍前の最終球団となったレッズを含め3チームに在籍していました。
また、2021年の東京オリンピック世界最終予選のドミニカ共和国代表に追加召集され、初戦ベネズエラ戦で先発登板(3.0回4失点と試合は作れず降板してしまいました)を果たしています。
スワローズとは1年契約で年俸65万ドル(約8700万円)とのこと。前年獲得のコール投手・スアレス投手とも80万ドルだったことを考えると、メジャー経験が少ないこともありやや安価な契約となりました。
1.ライネル・エスピナル投手の投球成績
次に、エスピナル投手の投球内容を見て行きましょう。
直近のMLBおよびAAAでの成績は次のようになります。
MLBでの登板は全3試合に留まり、また結果も残せていません。AAAを主戦場としているのでこちらに目を移してみると、トミージョン明けですが21年・22年と2年続けて20試合100イニング以上の先発登板を果たしています。
防御率に関して、2021年は3.44、2022年5.50と書いてあるとかなり悪く見えますが、AAAはかなりの打高の状況となっている点を考慮しなければなりません。
21年のAAAインターナショナルリーグ防御率3.44はリーグ3位の好成績で、22年はリーグを跨いでいますが主に登板したAAAパシフィックコーストリーグ(PCL)におけるリーグ平均防御率は5.40です。
今年、かつて日本に在籍した投手も何人かPCLで投げているので、比較してみましょう。
ライネル・エスピナル 83.1回 防御率5.29
ザック・ニール 116.2回 防御率6.87
ロビー・アーリン 77回 防御率7.10
有原航平 74回 防御率4.86
少なくともエスピナル投手はAAAクラスであれば十分先発投手としての役割を果たしていたと言ってよいでしょう。
エスピナル投手の成績で特に注目すべきは奪三振率の高さです。AAAでは稼働している3か年連続で20K%を超えており、先に挙げた同一リーグのNPB経験者3人と比べてもトップの数字です。
トップリーグであるMLBでの登板でも打者21人に対して5奪三振で23.8K%。スワローズが今年課題としている三振を取れる先発投手という像に近しい投手を狙ったと考えて良いのではないでしょうか。
2.ライネル・エスピナル投手の投球内容
続いては具体的な投球内容について見ていきましょう。
2022年、MLBで投じたボールは次のようになります。
2試合4.2イニングだけなのでサンプル数が少なすぎるのですが、持ち球はMAX153km/hで平均149km/hのフォーシーム、それより10km/hほど遅いチェンジアップ、130km/h台半ばのスライダーの3球種です。
Sox Prospects.comのスカウティングレポートによると落差のあるカーブボールも持っているとのことですが、MLBでの登板では投げる機会がありませんでした。
投げ方としてはテイクバックの大きなスリークォーターで、映像を見るとかなりのクセ球です。
フォーシームの変化量を比べてみましょう。アームアングルが低い分、シュート方向への変化量はかなり大きく、いわゆるシュート回転するストレートとなっています。
22年に在籍していたA.J.コール投手もテイクバックの大きな投手でシュート成分の多い投手でしたが、エスピナル投手はそれ以上となっています。
ただ、現代のNPBを見ていればシュート成分が大きいことは必ずしも悪い事でないことは言うまでもないでしょう。それが外からど真ん中に入ってくれば別ですが。
こちらはエスピナル投手の全投球の変化量マッピングです。
フォーシームとチェンジアップはかなり三塁方向にシュートしていき、スライダーは一塁方向に変化するボールとなっています。スライダー、チェンジアップともに落差は大きくありません。
投球の組み立てを見て行きましょう。
3球種だけでシンプルなのでBaseball Savantのデータをベタ張りですが、こちらが最も分かりやすいでしょう。
フォーシームは高めに集め、チェンジアップを低めに落とし、スライダーでゾーン関係なく緩急をつける。2登板だけの結果なのでサンプル数として不十分ですが、AAAでも大きく構成は変わらないようです。
追い込んでからはフォーシームかチェンジアップの二択で、スライダーは実際に被打率も悪くカウント球という位置づけです。
やはりMLBで高めのフォーシームを主体にピッチングを構成し、スワローズでも中村捕手がしっかりと高め要求で今や先発の軸となっているサイスニード投手同様、エスピナル投手についても高めのストレートを怖がらずに要求していく度胸がキャッチャーにも求められます。
これはスワローズがここ最近獲得している外国籍投手に共通することですが、どの球種もリリースポイントが近しく、独特なテイクバックから繰り出される動くボールで打ち取ることが出来れば日本での成功も見えてくるのではないでしょうか。
3.ライネル・エスピナル投手に求められる役割
最後に、エスピナル投手がスワローズで果たす役割についてです。非常にシンプルで、とにもかくにも先発投手として成立することを願うばかりでしょう。
セリーグの投手成績を比較したのがこちら。
スワローズは連覇を果たしたものの、先発投手の防御率・イニング数はリーグ最下位。貯金をつくれたものの、リリーフ投手に大きな負担を年間通してかけてしまいました。
こちらは2022年のスワローズの先発投手のイニング数×QS率をグラフ化したものです。
奥川投手の右腕の状態が未知数であること、そして今年運用した「ゆとりローテーション」を来年も継続していくであろう予測を立てると、それこそスアレス投手に代わる先発投手が出て来て欲しいところです。
サイスニード投手が着実に2021年→2022年で成長を果たしてローテーション投手になった一方、コール投手は変化球の精度に、スアレス投手はストレートで空振りが取れない故に一軍の先発投手としては計算できなかったのが2022年の外国籍先発投手事情です。
2023年、エスピナル投手には奪三振能力に優れた先発投手要員としての役割を振られることになります。
契約内容やこれまでの実績を考えても先発5~6番手候補の一人としてチームは編成していくことになります。怪我無く年間通して一軍・二軍で先発として生き残れるかが大事ですね。スアレス投手の一軍21イニング+二軍55イニングの計76イニング、これを消化するところが最低限の評価軸と考えて良いでしょう。
懸念はやはり球種が限られている点でしょう。
カーブが使い物になればだいぶ話は変わってくるのですが、フォーシーム・チェンジアップ・スライダーの3球種で先発として回るにはよほどキレがないと難しいです。NPBの先発投手を見ても、3球種で先発として回っているのは左投手ばかり。右投手では投球構成のアクセントでも良いので緩急を更に付けられるボールが必要になっています。
もしくは、ナチュラルに強いシュート成分を持っている点を利用し、シュートボールを磨いていくというアプローチもあるかもしれません。
木澤投手がシュート回転しやすい球質を利用してシュートを習得しブレイク。前年には近藤投手がやはりシュートでブレイクするなど、チームとしてこの球種の完成度を上げていくノウハウはあります。
来日一年目のためまずは今までのピッチングを披露していく形になりますが、他球団の事例では阪神のケラー投手が二軍でフォークを習得し再昇格後に安定したピッチングを見せました。日本の野球に順応し、変化していくことをポジティブに受け入れられるマインドの面も困難にぶつかった時は大事になるでしょう。
なお、リリーフなら(キレがある前提で)3球種で十分なので、キャンプ~オープン戦で先発適性を見極めていくでしょう。
4.さいごに
ここまでエスピナル投手について投球成績・投球内容、そして2023年に果たすべき役割についてみてきましたが、いかがでしょうか。
正直、エスピナル投手が補強の目玉とは言い難いのですが、ただAAAでの実績は先発投手としてしっかりと残しています。昨年のスアレス投手、コール投手ともにAAAクラスでも先発投手としては残れていなかったことを考えると、路線変更はありだと思いますしやはり三振を取れる投手は実際潰しも利きます。
192cmと長身のスリークォーターから投げ込まれる高めのフォーシームをどこまでゾーンの際どいところに投げ込めて、かつ空振りが取れるか。それが一番大事になるでしょうね。
最後に、公式サイトでのエスピナル投手のコメントを紹介します。
スワローズ3連覇に向けて、活躍を期待したいです。がんばれ!!
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