貧困を恐れる騎士の源泉 ユニコーンオーバーロード
ゲーム「ユニコーンオーバーロード」を遊んでいるといかにもありそうなお話が出てきた。
領主ガストンは飢饉を経験し、それから飢饉を恐れるようになった。
そのため領民の収穫の大きな部分を税として溜め込んでいたというお話。
直球で似た事例は聖書で確認できる。
以下、口語訳聖書の創世記41章あたり。
これはヨセフとその神の力を誇示する逸話だが、現実的な逸話でないと力を喧伝する効果もない。物語の舞台のエジプトでの飢饉はいささか信憑性に欠けるが、この話を見聞きしたであろうエジプト以外の地域の人々はある程度起こる話として聞いたことだろう。
こうした話をもとに考えれば、冒頭のゲームの設定は「いかにもありそう」と言える。
直球でなくて良いなら中世ヨーロッパに飢饉は溢れている。というよりは、現代の先進国を除けば古代でも中世でも近代でも-そして現代でも先進国以外は-常に飢饉の影がある。
世界史でも習うような有名な一揆のジャックリーの乱はじめ、「年貢が苦しくて起きた一揆」の多くの原因は不作であるとはよく聞くお話だ。
これが現代人なら各地の情報を瞬時に集め、「今年は不作だ」と理解し、その対策を農家と考えることができる。
これに対し、現代以前はなんらかの理由で不作が続いてもその事実を領主が理解することは難しい。そのため年貢は据え置かれ、その据え置かれた年貢が農奴には”重税であり圧政”に感じられたというお話である。
飢饉の最悪の事例の一つとして挙げられるアイルランドのジャガイモ飢饉である。比較的新しい時代ながら、「領主」である英国は効果的な対応を取れなかった。これに関しては政治の問題で、地主を支持基盤とする保守党は「年貢」を軽くするという発想がやはり薄かったと言われる。逆に保守党以外の議員は危機に気が付き、強力な支援を議会で求めた。
被害が大きすぎて正確な数字はつかめないが、辞書で語られるレベルなら100万人が餓死し、なんとか死なずに移民となった人々が200万人というのだから恐れ入る。
他方、フランス革命の際に貴族側につく農民が一定数見られたが、これは聖書で挙げられたような「領主が食料を備蓄し、非常時には配布する」という形式への恩義が理由の一つとして挙げられる。
今、飢饉が起きているか当時の技術では判断がつかなくとも、いずれ飢饉が来るということを経験的に人々は予見していた。
税というのは今でも嫌われているものだが、古代や中世の食料を徴収する税はしばしば飢饉に対しての備えであったとされる。もっとも、歴史に残る飢饉が相手では流石に有効に機能することは少なかっただろう。
それでも、一定数の農民の「自分たちの領主」と思わせる政策は比較的まともな領地なら行われたお話ではあった。-何より、そうでなければ領地と農奴は全滅したことだろう-
上記ゲームは日本のゲームである。なのでヨーロッパをその源泉とするよりは、日本の飢饉を例にするのが普通ではある。が、私が知り得る範囲はヨーロッパ史が中心なのでそちらに重きをおいて書いた。