紙炉(SSS15篇)

Don't judge a book by its cover.
とまでは言わないけど。

集初出キャプションより

四、五年前にぽつぽつ呟いていたポエム擬きです。140字あるかないかなのでとても短い。
読み返すと当然自分の文章なので自分の好みに合っていて、好きだなあ……と思ってしまいます。



わたしはわたしを分かっていないし人間もわからない。他人も分からないし世論も正義も道徳も、そして何もかもが解らないのだ。理解はいつも遠いところにいる、星のような何かだ。

/明日の夜明けを探しにゆけ




電灯に照らされてしろく光っている。教室の中はしろく、そして眩しいのだ。片側には壁がそびえていて、どうしようもなくもう片側を見ると幾多の視線に晒されているような心地がする。そんなはずはないのに。

/変わって化ける




人生の選択肢をずっと、逃げの手しか選んできませんでした。逃げは逃げでも、そのなかのいっとう悪手です。楽でした。その代わりにわたしの意思は成長せず、図体どころかこころさえもこどものまま。ゆいいつこの手で選んだのは「読書」ということだけな気がします。

/悪魔




出力だけが便りでしょう。明日を知らずに生きているなら、わたしたちはきっと昨日をも知らなかったのです よだけが今日を見ていました

/スノードーム




自慢できるようなものではないが小説を書いています、なんてことを言えるようになりたいな
これもある種の夢といえるだろう

/願望




ざくざくと音を立てて進む。雪が降っている。故郷にいる幼馴染の顔が浮かんだ。電波塔が見える。今日の宿はあそこにしようか。……そうだ、ポストカード。買っておいて忘れていた。明日どこかでポストを見つけたら投函しようか。

立花舞/ねどこ




明日を生きることを恥じた。そうして終わる今日に後悔を遺した。なればこそ、昨日に手を伸ばさずにはいられない。そのくせ、こんな自分を笑ってくれ、と願った自分がいちばん疎ましいのだ。

/どっちつかずでいればいい




じりじりと焼けた空気に尻込みする。隣でのんきに寝こけていた昔馴染みはいつの間にか起きていて、何の気なしに一歩を踏み出しているから見ているこっちが慌ててくる。ぱんと何かが弾けるような破れるような、そんな音がして場面が切り替わる。ぐるりと昼と夜とが入れ替わるように世界が回った。

/ホット・ジャンプルーレット




世界ばかりが回っている。時間は巡っている。立ち止まっている私は、横断歩道で青信号の点滅にいつまでも足踏みをしている。

/流れに乗りきれないから足踏みする




ジリジリと焼けるような熱が身を焦がす。辺りを見渡しても人っ子一人見つからない。ひとりだった。ゆらゆらと陽炎が蠢きそうなアスファルトの上で、母に無理やり被せられたつばの大きい帽子に何となしに手をやる。当然のように汗で湿っていて、ざらざらとしたあの触感はもう味わえそうに無かった。

/夏の岐路




ばちり。そんな幻聴がして、ひかりは夜へとぐるり廻る。一二三数えば無数の星々。きっと遠い先、甘く煮詰めた金平糖たちがきらりと零れてくるんじゃないか。なんて、そんなことを考えた。

/星を食べたこども




バニラアイスの舌に残る甘さ。ミルクチョコレートの、どろりと口の中の熱で溶ける繊細さ。醤油煎餅のばりり、と豪快な音をたてる凡そ理想的なかたさ。

/五感、もとい味覚




調子は長くつづかない。これは本当のところ、ぼくではないのかもしれない。でもぼくだ。失ったような、握りしめたままのような、そんないつかのぼく。自覚しない夢は、いったい何処にいくのだろう。

/天鵞絨のゆめ




春は一番口から零れやすい季節だ。本当は、特に好きな訳では無いのだけれど、やっぱりすきなのだ。虫は嫌いだけど。秋も素敵。夏は降ってくる。冬は積もる。

/色彩




誰が見ているのか、こんなよくわからない終着点を。主張がない限りわからないし、それもきっと通りすがりでしかないのだろうな

/衆目


ありがとうございました!


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