ホドロフスキーは観たのかなぁ?
U-NEXT映画部の林です。『DUNE/デューン 砂の惑星』、IMAXで観ました。あまりに素晴らしい映画体験に感動…を超えて、思わず感謝してしまいました。これは2020年代を代表する映画になるのだと思います。
十年紀の初めに、こうした象徴的な映画が生まれるもので、
2001年に『ロード・オブ・ザ・リング』が、
2010年に『アバター』が(封切りは2009年末)、
2021年に『DUNE/デューン』が現れたことになりますね。
「映像化不可能」と言われ続けた叙事詩的小説が素晴らしい完成度で映画化されたという意味では『ロード~』と、技術と芸術が奇跡的に融合したSF超大作という意味では『アバター』と、重なる部分があります。
監督のドゥニ・ヴィルヌーヴは、『ボーダーライン』『メッセージ』『ブレードランナー 2049』などで既に名監督と謳われていましたが、これでクリストファー・ノーランレベルの、「絶対観なきゃいけない監督」のひとりになったのではないでしょうか。ちなみにノーランも『DUNE/デューン』を、「あらゆる面で魅力的だ」と激賞しています。
文句なしの評価で、全世界興収では2.23億ドル(2021/10/26時点)と順調に大ヒット中。米国では先週10/22に公開され、劇場と同時にHBO Maxで配信されたことで批判含みの大騒ぎとなりましたが、それでもオープニング興収4000万ドル超の好スタートを切りました。
一方、10/15に公開された日本での興行収入は……あれ?このペースだと最終7~8億円で終わってしまう?全世界興収に占める日本の割合は、『ロード~』が9%程度、『アバター』が4%程度でした。『DUNE/デューン』はこのままいくと1%台となりそう。
いやいや、これではいけません!
日本の皆さん、『DUNE/デューン』は映画館で観ましょう!
近くにIMAXがある方は、必ずやIMAXで!
そして何度目かの確認目的で、恐らく数カ月後に配信開始されるであろうU-NEXTにてご覧ください。
さて、そんな今だからこそ、観るべき映画があります。
『ホドロフスキーのDUNE』です。
元祖カルトムービーと言っていい『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』を生んだ奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督が、1970年代に小説『デューン』を映画化しようと奔走し、撮影直前に頓挫した顛末を描いた2013年製作のドキュメンタリー映画です。
伝説の映画が作られた背景を描く作品なら多々ありますが、伝説の映画が「作られなかった」物語とはいったい??
これが掛け値なしで、本当に、爆発的に、面白いのです。90分でサクッと観られるし、先月書いた「いい映画とは?」にも通ずる内容。ホドロフスキーの狂気とも言える情熱に引っ張られた人たちの群像劇で、サルバドール・ダリ、オーソン・ウェルズ、メビウス、ダン・オバノン、ピンク・フロイド、ミック・ジャガー、H・R・ギーガー…ととんでもない才能たちの名前が次々と飛び出します。
そして、冒頭から繰り出されるホドロフスキーの名言の数々。
これだけ深遠なことを言いながら、「オレは『デューン』を作るぞ!『デューン』しかない!」と宣言した時点では原作を読んでいなかったりとか、デヴィッド・リンチ版の『DUNE/砂の惑星』がいまいちの出来だとわかった時のウルトラ大人げないリアクションとか、撮影時84歳(現在92歳)、この人は本当に何なんでしょう、チャーミングが過ぎるのです。
それでいて、ものづくりへの情熱とはどうあるべきかとか、永遠に失われてしまった幻の映画への未練や物悲しさであるとか、それでも、この時に蒔かれた種が、別の形でこの半世紀の映画史を変えてきた事実とか、笑い、悲しみ、切なさ、感動、それらをすべて内包した涙を流してしまう、傑作ドキュメンタリーです。
映画ファンとしては、「なーんで彼に作らせてあげなかったんだよー!」と思うけど、この企画を持ち込まれたスタジオ側、プロデューサー側の「ううううううううううキツイかも!」という気持ちも凄くわかって、
「情熱溢れるイノセント芸術家 VS アートを解さない冷血ビジネスマン」
みたいな単純構図で捉えられるとツライなーとも。
そういう意味でも、芸術と技術とエンタテインメントが、高次元でバランスしている2021年版『DUNE/デューン』は見事な創作物だと思います。そしてつい先日、10/27には第2弾の製作が正式に発表され、しかも次は「(同日配信ではなく)劇場だけで」ということも勝ち取りました。素晴らしい。
ということでまずは、『DUNE/デューン 砂の惑星』を観に、映画館へ走りましょう!
※ところで『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』は今どこでも配信できていませんね。リクエストをいただいているのも認識しているので、急いで権利の在り処を探します!