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ユネスコエコパークへの期待 ~松本市ユネスコ活動の広がり~

日本では全国各地にユネスコ協会・クラブが存在し、地域に根差したユネスコ活動が行われています。今回は、長野県・松本ユネスコ協会の濵幾郎さんに、ユネスコエコパークを取り入れながら、松本市でのユネスコ活動を広げていくご経験を共有していただきました。


Q:今回はご協力をありがとうございます。はじめに自己紹介をお願いします。また長野県内のユネスコ協会の活動について教えてください。

2023年、松本ユネスコ協会の会長を拝命しました。副会長であった2022年、会長代理で長野県ユネスコ連絡協議会の役員会に初めて出席しましたが、この時、県内の2つのユネスコ協会が長野県ユネスコ連絡協議会を退会と聞き、当協会も会員が減少し、活動も停滞する中、他人ごとではないと感じました。

長野県ユネスコ連絡協議会の会議は長年開催されていませんでした。そこで活動内容を精査してみると、中部東ブロック・ユネスコ活動研究会(ブロ研)の開催のみ確認できたため、今後もブロ研に係る活動で連携する方向に話がまとまりました。また長野県ユネスコ連絡協議会の会長はブロ研を主管するユネスコ協会が務めることとなりました。

長野県ユネスコ連絡協議会からは2つのユネスコ協会が退会することとなり、次回のブロ研は我が松本ユネスコ協会が主管することになります。会議を重ねたうえで、東ブロック大会開催と長野県ユネスコ連絡協議会会長を、不安の中受諾することとなりました。

Q:どのようなきっかけでユネスコエコパークを松本ユネスコ協会の事業に取り入れることになったのでしょうか。

2024年6月の長野県ユネスコ連絡協議会総会の折、それぞれの協会活動報告をいただきました。皆活発に活動していて、活動麻痺を起こしている松本ユネスコ協会には大変参考になりました。そしてこの時、ユネスコエコパークとジオパークの存在を知りました。松本ユネスコ協会の会員たるもの、もっと早くこの事業を知っていればと悔やみつつ、同月行われる松本ユネスコ協会総会に提案すべく準備をしたところ、会員の中からエコパーク、ジオパークに関連する企画の提案があり、パンフレットまで示されました。私が説明するまでもなく事業計画として期待が高まりました。

7月の松本ユネスコ協会役員会でまずエコパークを知る学習会を行い、秋には研修視察を行う計画がまとまり準備に入りました。

ありがたいことに、長野県には志賀高原・南アルプス・甲武信ユネスコエコパークの3地域の登録がされていました。県内のユネスコ協会でもエコパークへの関心は高く、飯田ユネスコ協会は南アルプスユネスコエコパークに、長野県ユネスコ連絡協議会を退会した長野ユネスコ協会、上田ユネスコ協会は1980年日本初登録の志賀高原ユネスコエコパークに関心を寄せていたようです。登録されたそれぞれ核心の山に勝るとも劣らない山、八ヶ岳・御嶽・乗鞍、北アルプスの山々がエコパーク事業の取り組みのないユネスコ協会の近くにそびえ、「我山も仲間に入れてくれ」とユネスコ協会に呼びかけているようです。山国長野県のユネスコ協会にふさわしい取り組みであり、山に応えなくてはと行動を起こしました。

志賀高原 木戸池

Q:具体的にはどのような活動をされたのでしょうか。

まずは長野県が関係する3地域の情報を集めました。志賀高原は山ノ内役場に、南アルプスは韮崎市役所に、甲武信は川上村役場にお邪魔して取り組み状況の確認をしました。またユネスコエコパークに係る展示のある自然保護センター、道の駅、ビジターセンターも訪ね、地域の取り組み状況を肌で確認し、当協会の活動として相応しい事業になるのか、学習会の方法、研修先について構想を組み立てました。

9月の学習会では、日本ユネスコ協会連盟から紹介いただいた信州大学教育学部附属 志賀自然教育研究施設 准教授の水谷瑞希先生に、ユネスコエコパークの解説をいただきました。日頃見聞きしている熊・猿など鳥獣害の話から導入、動植物との共存共生の必要性の話からユネスコエコパークの紹介へと話をすすめられ、エコパークについて初めて耳にする皆さんに興味を持っていただけた90分であったと感じました。私が感じたことと同じく、こんな世界があったのかと興味を示してくれた参加者もいました。

今回の学習会は広報が間に合わず、ユネスコ協会関係者のみでしたが20名の参加がありました。これは日頃の活動の連携の効果だと感じました。連携というのは、子ども食堂の「支援」を「自給」へと変えたこと、つまり自分の食材を自分で賄うことに着手したことが挙げられます。一部だけではありますが、農産物を生産する学習と自分で作ったとの満足を感じてもらいたいとの思いから、農業関係者の組織「農家組合」の指導をいただき、玉ねぎ・馬鈴薯の植え付け収穫の事業を2023年から行っています。その連携の成果もあり、今回の学習会には農家組合の皆さんの参加が多くみられました。

10月26日には子ども3名、大人16名の参加をいただき、志賀高原ユネスコエコパークの研修を行いました。志賀高原自然保護センターでは展示資料を使い、志賀高原の地形の成り立ち、自然環境、人間生活の歴史など話を聞きました。スキー場と温泉の良さを知ってのことかGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)がここを利用していたことは意外でした。

この会場ではクラフト体験も行いました。自然の中で集めた松ぼっくり・木の実・枝を使い、小さな飾り物を作るひと時。私はあまり期待していませんでしたが、子どもたちにとってはその日一番の思い出となったようです。作る体験は参考になりました。

クラフト体験の様子

Q:今後の活動の抱負をお聞かせいただけますでしょうか。

ユネスコエコパークの存在を知り半年、取り組みを開始したことは松本ユネスコ協会の活性化に役立ちます。また長野県ユネスコ連絡協議会についても今月9日(2024年11月9日)に役員会があるので、松本ユネスコ協会の状況を説明し反応を探ると共に、今年エコパーク事業の取り組みを行っている飯田ユネスコ協会の状況を聞くのが楽しみなところです。ユネスコエコパークやジオパークについても可能性を感じた今、調査と学習会を行い、輪を広げることを私の人生としたいと思います。


DATA
話し手  松本ユネスコ協会 濵幾郎さん(2024年11月書面インタビュー実施)
聞き手  ユネスコ未来共創プラットフォーム事務局