没ネタ祭「無題(棄作)」

丁度キリ良く50投稿目になりました。
親愛なるnote界の怪才、ムラサキさんが提唱し、鬼も泣く企画。
没ネタ・未完成作品を披露し合い供養すると云う「没ネタ祭」。
折角だから参加しますてへりぺろり。
下書きを精査した結果最も意味不明な鬼子をご覧くださいまし。
記録に依りますと、日付は本年4月16日です。
没になった理由は語るまでもありませんが、また後程。
(これは要するに、我らの文塚です。さあ眠れ、駄文どもよ)


「頭脳警察だ」と男が云う。

両目に眼帯をしている。
右の眼帯にはヒトデが、左の眼帯にはきゅうりが描いてある。
あらまあ斬新。

「否、五芒星と三日月だ」と男は云う。
嗚呼、流石は頭脳警察、脳内丸見えね。

なかなか奇抜な格好だが、正直ちょっとクールで格好良いぜ。
ぼくは迷わず手を挙げる。
「ハイ!入隊します!」
「勧誘に来たのではない」

あそう。

「逮捕する」と男は云う。
話が急だが構わない。ぼくは迷わず手を挙げる。
「協力します!」
「手を降ろせ」
「降ろします!」

哀れ我、逮捕される。

次第。
この国に思想の自由が保障されている以上、個人の脳内に干渉はできない。
そこに付け込んだぼくの脳内では、クーデターを目論む卑劣な輩が跋扈しており、絶対君主たるぼくを弑する機会を伺っていたのだ。やだ前時代的。

時、まさにわたくしお風呂上がり。
良い気分で秘蔵のハーゲンダッツ(ラムレーズン)を食べようと冷蔵庫の前にかがみ込んだ、その一瞬を狙った卑劣な蛮行だった。やだ野蛮人。
ぼくはアイスを取り落とし、あっという間に拘束される。

危うし、ぼくのハーゲンダッツ!お願いだから溶けないで!

「自分の心配をしろ」と男が云う。
「心配します!危うし、ぼく!」

「ぼくはこれからどうなるのでしょうか?」
「裁判を行う。その後、銃殺だ」
「裁判の意味ありますか?それ」
「では銃殺だ。覚悟は良いな?」

良いわけがない。

「罪状を!せめて罪状をお聞かせ願いたい!」
「駄洒落だ」と男が云う。
「駄洒落ですか?」
「そうだ。貴様はあろうことか世界に駄洒落を垂れ流し、長年クールでインテリな感じで売ってきた我が国の信頼を失墜した。万死に値する。死ね今」

ぼくはぼくの書いてきたものを思う。
ローガン卿と老眼鏡。やはりあれが不味かったのか。

「思い当たるな?」と男が云う。
ぼくは首を振るフルフルフル。

「貴様、また何か語呂の良いことを考えているな?」
「とんでもない。私はただ(思い付きだけど)友人のことを考えていました」
「友人だと?貴様に?」探るような声色で、男。
「友人です。コテージ三世です」

あ、やばい。なんか思いついちゃった。

「何がやばいのだ」
「やばくないですやばいことないです全然」
「コテージ三世とは誰だ。脳内に痕跡がないようだが」
「友人です友人です。しかしそれを語るには、まずあの大富豪、コテージ王のことを話さなくてはなりません色々と都合があるのです筆者も少し酔ってきてるのです」
「コテージ王。さて?」
男が眉を顰める。
きっとぼくの脳内に該当する記録がないのだろう。
当然だ。ぼくは今、この話を即興で話しているのだ。(即興で話しているのだ。だがリアルに眠い。まだ書けるかしら)
「どうもわからんな。話せ」

「コテージ王。いえ、彼がそう呼ばれるのはまだ先の事ですが。とにかく彼は戦後の混乱に乗じて非合法に、広大な土地を手に入れました」

ぼくは必死に話を繋ぐ。(眠い)

彼は広大な土地を手に入れた。
いつか来る復興の時、必ず訪れるであろうキャンプブームを予見して。
最初はテントの貸し出しから始めた。
これが当たった。
景気の上昇に伴うアウトドアブーム。
満たされ過ぎたが故のプチ自然回帰。

だが、天候に左右された。
そこで、思い切ってログハウスを建て並べることにした。
バンガロー村。一号二号三号と。
これも当たった。大当たり。

その人気は巷を賑わし、彼の残高増えっぱなしの天井知らず。
いつしか彼は、バンガローの王、『バンガ王』と呼ばれるようになった。

「頭脳警察だ!」と男が割り込む。
「なんですか、今いいところなんですよ」
「バンガローとバンガ王には、駄洒落の疑いがある」

まずい、バレている。
ぼくはこの話の着地点を出来うる限り先延ばしする必要に駆られる。(眠い)
「はは偶然です。そんな些細な語呂に反応するなんて、よっぽど駄洒落好きなんじゃないですか?」
眼帯に描かれたきゅうりが、じっとぼくを見つめる。
「三日月だ」と男は云う。
「まあいい。続けろ」

続ける。
だが豊かになって来ると、人々の嗜好は変遷し、魅力的に思われた自然の中の暮らしがただの不便な暮らしに思えて来た。
客足は遠のいた。
どうせ金を出して泊まるなら清潔なシーツと熱いシャワーのある観光地のホテルの方がいい。

バンガ王は即決する。(眠い)

冷蔵庫やキッチン、そして冷暖房も完備した、究極のコテージ。
あえて宿泊料金も倍にした。

これがまた、当たった。(眠い)

都会の生活に疲れ大自然の中でひとときの休息を得たい。だが風呂上りには冷たいビールが飲みたいし、蚊に刺されるのはまっぴらごめんだし、夜も真っ暗だと眠れないし、話題のドラマも見逃したくない、と云う層に大ヒットした。
そして、この国にはそんな人間が沢山いたのだった。どうでもいいけど眠い。もう良くないか。まだ続けた方が良いか?音楽が聞きたい。なぜ事務所のpcは音が出ないんだ。スピーカー下さい。アマゾンポチー。グレイプバインは年を経るごとに更に良くなるな。天才か。

コテージ村。
予約が殺到した。

「よやくよやく、予約をお願いしますッ!」
「三千年先になりますがよろしいですか?」
「構いません!!!!!!!!!!!!!」

狂想曲。

バンガ王は、コテージ王と呼ばれるようになっていた。
この世の、すべてを手に入れた。
昼に夜に、金が唸り声を上げた。
連日、右から左まで様々な政党が、参院選の立候補を打診して来た。
眠れなくなった。

飽いた。
当時まだ三十代だったひとり息子に家督を継ぐことにした。

「それが、貴様の友人か」と男が云う。
まずいまだ話がまとまっていないし眠いナリ
危険な賭けだとは思ったが、とっさにぼくは云う。

「いえ、とうぜんですがこれは二世です。コテージ二世。ぼくの友人はその息子でコテージ三世です。彼が産まれるまではまだしばらく時間がかかります」
「どのくらいかかるのか」
「このペースですと約3日ほど」
「はしょれ」と男が云う。
「はしょります!」

端折る。

二世には気の毒なことをした、とぼくは思う。
彼にだって様々なドラマがあり、しあわせな日々があったはずなのだ。
それを語らずにこうして逃げ去ることは心が痛んだ。

ぼくはいつか、彼について語らねばなるまい。

いや本気でそう思うけど


noteは基本的に。
気分の良い夜に計画も見通しもなくただ書き始めて。書き上げて。
そんな遊戯なのですが。
これは酔いと眠気に敗けて書き上げられなかった作品のひとつです。
書き上げられなかったし、翌日読み直してみたら莫迦莫迦しくてまったく手を入れる気分にもならなかったので放置しました。
今読んでみると語呂も語調も好みでないですが、その莫迦莫迦しさが莫迦莫迦しくて愛おしいですね。

この話を書き始めた時、私が考えていたのはただ、「コテージ三世の固定資産税」と云う駄洒落なのです。それだけなのです。

いつも公開前に消す、お遊び的切実な独り言も残っていましたので敢えてそのままにしておきました。ハズカシー。

でもグレイプバインは素晴らしいです。
ではまた、良くも悪くも自分だけは納得した作品で、お会いしましょう。
(皆様の文塚も期待しておりますうふん)


#没ネタ祭