邦画: 下妻物語
一見正反対の世界に生きる二人の少女、ロリータファッションを纏う桃子(深田恭子)と、バイクに乗るヤンキーのイチコ(土屋アンナ)の物語。ロリータとヤンキー、まったく異なる価値観を持つ二人が織りなすストーリーは、自分を貫く強さや輝くような友情が鮮やかに描かれる。
違いを尊重しあう
桃子とイチコは、外見も性格もまったく違う。下妻という地方で、周囲から浮いた存在である二人。桃子は趣味の刺繍でイチコの特攻服に刺繍を入れ、イチコは桃子の才能を信用し褒める。違いを尊重し、お互いの好きを突き通す姿が眩しくかっこいい。
ひとりでも生きていけるけど
一見すると冷たい考えだが、イチコは桃子のこの生き方に強く惹かれて友達になったのだと思う。既存の考えを押し付ける社会が嫌で、自由に走るためにレディースに入ったイチコ。”ひとりになる”という選択肢が無いと、自分が望んでいないタイミングで他人に合わせることになる。誰に迎合することもなく、自分の好きにまっすぐに向き合う桃子の姿は誰が観てもかっこいい。
桃子が後ろを向いて、泣いている姿を見ないふりして答える。強がりたい気持ちとどうしようもなく悲しみが溢れてくるイチコ。ひとりでも生きていける桃子が、ただ自分を必要としているイチコの側にいるという選択をする。桃子の中で、イチコが大切な友達であるということが分かるこのシーンは私のお気に入りでもある。
優雅なロココの精神
桃子が愛するロリータファッションの背後には、中世ロココの精神が流れている。彼女にとってロリータはただのファッションではなく、優雅で自分らしい世界観を生きること。彼女が一貫して守り続けるのは、「他人がどう思うか」ではなく、「自分がどう感じるか」。
周囲の目に左右されず、自分の世界を生きようと決心しても、実際は人の目を気にしてしまうことの方が多い人が多いだろう。そんな中で甘味料が詰まった弁当を持参し、髪色は金色で、ロココ時代の貴族同様刺繍に心酔する姿は、とても新鮮でカッコいい。
本当の強さとは
桃子とイチコの友情は、他人の目に囚われることなく、自分らしさを守り抜くことが大切だと教えてくれる。世間から浮いて見えても、自分の信念や美意識を貫いて生きることが本当の強さなのだ。