🔖ポエティスム/詩上主義 44、“ブルース・メン”

44、“ブルース・メン”


コニャックの原酒がいい
そのまんまで
いい匂いなんてしなくていい
そいつを引っ掛けて

苦く焼ける舌に
思い出しても痛い
過去に苛まされる
一時でも忘れたいから

彼処のブルースマン
一曲やってる

思い出すのは嫌な事ばかり
気分良い事など滅多に思い出さない
“幸せ”なんて誰の話なんだ
そんなものあったら見せてみろ

誰彼から色々習った
誰彼から色々教わった
だがそれは全部嘘だった
そう、騙されたんだよ

彼処のブルースマン
ハープを気分良く吹いてる

良い事を思い出そうとする
無理して
眉間をにじらせて
でも思い出せない

だからまたコニャックを注ぐ
匂いなんてどうでもいい
毎日毎日嫌な事ばっかりだ
毎夜毎夜くったくただ

彼処のブルースマン
ボトルを弦に滑らせてる

そしてまた帰るのさ
そんな気分の方向だ
俺達に許されているのは
店に入る時間と出る時間だけ

小銭を出そう
ポッケを弄る
前来た時のレシートに
500円玉と数10円としわくちゃの札ビラ

あばよブルースマン
また聴きに来るよ

今度はグラスに氷を落とそう
喉がイガイガだ

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💻WEB文芸誌『レヴェイユ』/編集者 柳井一平
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