2. ビジネス英語力について(その2) 聴く力:リスニングの基礎はフィジカルな力

ここで「聴く」、「話す」(この二つで会話能力)、「読む」、「書く」(この2つで文章読解、作成能力)と4つの能力がでてきました。
 
上ではひと固まりで扱いましたが、実際にはこの4つの能力には大きな違いがあります。
それぞれ、フィジカル(身体的)な力+知的な力(記憶力等)で構成されますが、日本人の場合は従来の学校での英語教育の中で我々が既にある程度身につけている能力と、かなり開発不足の能力があります。
 
それぞれの能力に対するトレーニングに関しては後述しますが、まずそれぞれがどういう能力でビジネスで使用するためにはどのくらいのレベルが必要とされるかを考えてみましょう。

Fig 6)

まず一番基礎的な能力は「聴く(リスニング)」能力です。
この力は2つの力、つまり聴力(音声を聴き取る力)+(その音声の)意味を認識する力から成り立っています。
 
聴力の部分は「知的」な能力ではなくフィジカル(身体的)な能力、つまり走ったりボールを投げたりする運動能力と近い能力が基本となります。
楽器の演奏もそうですね。
 
日本語の会話で相手の話を聞き取る場合、場合我々は相手の発声を一連の音として聴きながら、頭の中で聴き取った音節を既知の単語や文節として認識しています。
聴力=「フィジカルな力」とは、この音(相手の声)を「聴き取る」部分です。
英語の場合だと耳に入ってくる音を聴き、既知の単語やイディオムとして認識することが「聴く(リスニング)」能力です。
 
聴力は、サッカーでいえばインサイドキック(一番基本的なボールを蹴る方法)とトラップ(ボールを止める)やリフティング(足でボールを操ること)、楽器演奏でいえば音を正確な音程とリズムで出すといった基礎的な能力にたとえられるでしょうか。
この能力がある程度ないとサッカーは試合にならないですし、演奏はできないですよね。
 
また、それは年齢の若いころの方が習得が速く、大人になっても体が覚えている力となります。
サッカーでは(僕は少年チームのコーチをしています。そこで受けた講習によると)8歳から12歳を「ゴールデンエイジ」と呼んで、足元のテクニックのトレーニングをこの時期にやることが個人の力を伸ばすために重要なことだと位置づけています。
逆にある年齢に達してからでも一定レベルの習得は可能ですが、スポーツや楽器演奏の場合はプロフェッショナル、会話の場合はネイティブレベルに到達することは不可能であることも共通しています。
 
リスニングの話に戻ると、我々日本人はその経験が少ないため、「英語(ネイティブの発音)に対する聴力」がかなり不足しているのです。
そしてこれらのフィジカルな能力を身につけるには、個人差はあれども誰しも継続的に一定の時間をかけたトレーニングが必要ですが、逆にいえばある程度の時間をかければ誰でも習得が可能な能力といえます。
 
英会話の「聴く」のトレーニングはフィジカルな能力なので、留学して一日中英語漬けになることで短期集中的に効率を高めることは可能だと思います。
日本に留まって仕事をしながらと言う場合は、短い時間でも毎日ある期間(2年が目途)継続する以外の方法はないでしょう。
 
もちろん、最終的に相手の発音する音を言葉として認識するためには、英語のボキャブラリー(語彙)が必要です。
知らない単語の場合は、仮に音を聴き取れてもそれを意味のある言葉として認識できない訳ですから。
 
英語のボキャブラリーに関しては、我々が学校教育で学習し、記憶しているものが基本となりますが、それは日常会話から初歩的なビジネスのコミュニケーションには十分使えるレベルです(勿論レベルが上がるに従ってそれだけでは足りなくなりますが)。
ですので、まずは自分の知っている単語で構成される文章を聞き取れるようにすることが第一歩となります。
また、その学習の過程で改めて以前学習した言葉を覚えなおしたり、ボキャブラリーを徐々に増やしていくことも必要になります。
 
聴く力(リスニング能力)はフィジカルな聴力+記憶力(ボキャブラリー)で構成されます。
特に前者の力をつけるための継続的なトレーニングが必要です。

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