世界遺産、タラゴナのイースター行列
スペインではキリストがエルサレムに入場したパーム・サンデーからその1週間後のイースター・サンデーまではSemana Santaと呼ばれる聖週間で様々な宗教行事が開催されます。
特にイエス・キリストが処刑された日であるグッド・フライデー(viernes santo、聖金曜日)は一番大きな行列が行われる町が多いようで、スペインでは特にアンダルシア州の行列が有名です。
宗教関連の行事はバルセロナでは規模が小さいため、今年はバルセロナから南に100キロほどのところにあるタラゴナの聖金曜日のProcesión del Santo Entierro(神聖なる埋葬の行列という意味)と呼ばれる宗教行列に行ってきました。
ちなみに去年はマタロという町の行列を見学しました。
タラゴナとそのイースター行列
タラゴナはローマ時代にタラコという名で栄えた町。町中にローマ時代の遺跡が点在し、それら遺跡は世界遺産に登録されています。
キリストが亡くなったのはローマ帝国支配下のエルサレム。当時のタラゴナも同じくローマの支配下で、イベリア半島で最も古く、そして最も栄えていたローマ帝国の町と言われています。事実、イベリア半島にあった3つのローマ帝国の属州の一つヒスパニア・タラコネンシスの州都として機能し、初代皇帝アウグストゥス本人もタラゴナで数年過ごしたそうです。公共施設などが充実していたのはそのためではないかと考えられているとのこと。
そんな歴史のあるタラゴナのイースターの行列は西暦1550年に遡ると言われ、中でも聖金曜日に行われる行列が最大規模。13の組合が20もの山車を担ぎ、合わせて4,000人が参列する大規模な行列で、カタルーニャ州で唯一国の文化遺産として登録されているイースターの行列だそう。
聖金曜日のタラゴナの町の様子
行列は夜7時半からの開始。郊外の遺跡を見に行ってから行列の開始までタラゴナの町を歩いてみました。タラゴナは世界遺産の遺跡3箇所ほどを巡りに一度訪れています。
未だに日曜や祭日は閉店するお店が多いスペイン。祭日の町中はいつもよりひっそりとしていることが多いですが、イースターのタラゴナは大賑わいでした。
広い遊歩道が続くランブラ・ノバはカフェやバルが並んでおり、その一番海側には「地中海のバルコニー」と呼ばれる展望台があります。
地中海が一望できます。あいにくの曇り模様。
多くの人々が散策していました。
仮設のチュロススタンドもいくつかあり、大行列。
普段甘いものはあまり食べませんが、イースターだからという口実で買ってみました。
ホット・チョコレートのディップと共に。
バルセロナに比べても開店しているお店が多い気がしました。特に飲食店は稼ぎ時のようでどこも大混雑。
暗闇のタラゴナ大聖堂へ
久しぶりに訪れてみて旧市街がかなり良い雰囲気でした。大聖堂の前も良い雰囲気でこの通りの賑わい。
大聖堂の正面玄関の彫刻が素晴らしいです。
大聖堂は普段は拝観料がいりますが、イースターで無料開放中でした。
入ってびっくりしたのは内部がほぼ何も見えないほど真っ暗なこと。調べてみるとキリストが亡くなった金曜日から土曜日の夜に執り行われるイースター・ヴィジルが終了するまで、キリストの死に対する悲しみと絶望を表すため真っ暗にするそうです。
亡くなって棺で眠るイエス・キリストがいました。正しく聖金曜日を象徴する像。
宗教的な祭日に教会に入ったことはないので、いつもとは違った体験できたのは貴重です。
行列前の儀式に遭遇
行列の開始の前には、ローマ帝国時代の兵士がタラゴナ旧市街にある様々な教会から山車を集めて回り、行列の出発地点であるナザレ教会まで届けます。ぶらりと歩いているとたまたまそのうちの一つに遭遇しました。
ドラムの音が通りに響きます。
多くの子供も参加。
手には火の灯ったたいまつが。
イエス・キリストの棺と思われる山車がやってきました。
聖母マリアと思われる山車も。こちらはビデオで。
永遠と続く厳かなイースターの宗教行列
宗教行列やパレードなどの課題が見る場所の確保。一部椅子があるエリアもありましたが、出発地点と終着地点では1~2時間の差が出てくると思われるので出発地点の方へ。
どうにか見える場所を確保すると、ローマ兵がやってきました。
それぞれの組合が旗を掲げやってきます。覆面を被った衣装はスペインの定番。
組合によって、音楽はドラムだけだったり、管楽器だったり。
山車は最後の晩餐から始まり、キリストのストーリーを時系列に綴ります。
かなりたくさんの観客です。
厳かな雰囲気で粛々と。
山車は押し車になっているものが多かったですが、担ぐタイプのものも。ところどころで休憩をとります。
次から次へと山車がやってきます。
参列者が倒れ救急が来るなどの事態もあり5分くらい中断。
一時間ほどしてまだまだ続きそうだったので、行列の開始地点であるナザレ教会前の広場に行ってみることにしました。
広場にはこれから出発する山車がずらりと並んでいます。
明かりが灯ってきれいな山車。
ナザレ教会の前は多くの参列者や観客で賑わっていました。
十字架から降ろされるキリスト。最後の方のシーンでしょう。
向かいにも教会が。
順番を待つ覆面をかぶった参列者。
まだ行列は続いていましたが、組合ごとにあまり変わり映えはしないので最後を見届けず帰ることにしました。
最後に美しい教会を見学
帰り際に通りかかったサン・オーガスティ教会。扉が空いていて人が出入りしていたので覗いてみると素晴らしい装飾の教会でした。
ルネッサンスとバロック様式だそうで、壁や天井全てが見事。
恐らくパーム・サンデーの行列で使われた山車も飾ってありました。
どこの教会もビジター・ウェルカムで気軽に訪れることができたのは良かったです。
タラゴナのイースター行列を見学してみて
クリスチャンでもカソリックでもないのでなかなか宗教行事に触れる機会は少ないですが、イースターの宗教行列は町を練り歩くので信者でなくても経験できる良い機会です。
また、街の雰囲気が普段と違い地元の人達で賑わっていたのが印象的でした。行列に限って言えば、去年訪れたマタロの行列のほうが山車の動きや音楽、出発時の儀式などが断然素晴らしかったです。他方で、タラゴナの行列はその規模とルートである旧市街の美しさが際立っていました。見どころが多い町なので行列以外でも楽しめるのも良いです。
次回は、行列の前に訪れた世界遺産のタラゴナの水道橋です。