ガウディの世界遺産:神秘的な夜のコロニア・グエル教会
バルセロナのスペイン広場から電車で20分強行ったところにあるコロニア・グエル。そこにあるコロニア・グエル教会の地下聖堂はガウディによる建築で世界遺産に登録されています。一般見学は昼間ですが、今回は夜の地下聖堂を訪れてみました。
コロニア・グエル教会とは?
ガウディのパトロンと知られるエウゼビ・グエルが所有する繊維工場をバルセロナ市内から郊外のSanta Coloma de Cervellóに移転した際に、労働者のために住宅や学校などの公共施設を新工場前に建設し、これをコロニア・グエルと名付けました。グエルは、そのうち教会の設計をガウディに依頼。
このプロジェクトが始まってガウディが糸の両端を固定して吊るすとできる逆アーチの曲線(フニクラ)の実験に多くの時間を費やし、工事はなかなか進みません。そうこうしている間に資金不足となり建設は中止となってしまいました。
完成していたらどうなっていたかガウディのデッサンに基づいた模型があります。なんとサグラダ・ファミリアを彷彿させるデザイン。
正面入口へと続く階段の下の部分が地下聖堂で、その上の部分は残念ながら存在しません。この計画がとん挫してガウディはサグラダ・ファミリアの建設に没頭し、コロニア・グエル教会の計画のフニクラをそのままサグラダ・ファミリアの設計に取り入れます。もしこの教会が完成していたら、ガウディはサグラダ・ファミリアにはそれほど力を注がなかったかもしれず、今のものと違っていたかもしれません。
コロニア・グエルの町
コロニア・グエル駅で下車し駅からすぐのところにコロニア・グエルが開発された当時の宿泊施設がありました。
そこから雰囲気の良い並木道が続きます。
この通りと茂みの間にある柵もモデルニズムっぽいデザインです。
グエルの繊維工場がまだそのまま残っていました。現在はいろいろな会社が入っているようです。
コロニア・グエルは普通のスペインの町と比べると統一感があり、不思議とアメリカの西部劇に出てくる町の雰囲気を感じました。
神秘的な夜のコロニア・グエル教会
コロニア・グエルのコミュニティはかなりこじんまりしているのですぐにコロニア・グエル教会にたどり着きました。どうやら教会のミサか何かをやっているようだったので、まずは教会の周りをぐるりと一周します。
コロニア・グエル教会の外観
門にはいろいろな言語で「教会」と書かれています。
教会の裏手は高台になっていて、地下聖堂はその傾斜を利用した半地下なので階段を下りずに入れるような作りになっています。裏はまるで遺跡のように石や柱がごろごろと転がっています。ここは本来教会が建っているはずの場所。計画が中断しそのまま資材を置き去りにしていったような雰囲気。
地下聖堂は上部半分くらい見えます。塔も未完成。
窓の形もガウディらしいです。
いざ、コロニア・グエル教会内部へ
教会内に入るころにはすっかり日が暮れてしまい、ライトアップが綺麗でした。
教会の正面入口への階段の下、地下聖堂の入口のポーチの部分。
ベンチが備え付けてあります。
地下聖堂への入口は小さいです。ところどころにガウディ特有の割れたタイルで作ったモザイクのトランカディスが見受けられます。ステンドグラスは松ぼっくりのデザインだとか。
単純なアーチではなく少しねじれています。
内部に足を踏み入れると最初に飛び込んでくるのが曲線を描く梁。間接照明が直接あたっているのでより強調されます。
かなり薄いレンガ造りなのが分かります。
祭壇付近。
柱は石が丸々。随分曲がっています。
丸いレンガが積み重ねてある箇所も。見た目が面白いです。
後から付けられたというステンドグラスの色合いが何とも言えません。
丸いレンガがまるで工業用のパイプか何かのよう。
モンセラット修道院と同じ黒いマリア像がありました。
ガウディがデザインした椅子のレプリカ。
コンサートだったのでここに1時間半くらい座ることになったのですが、かなり座り心地が悪かったです。深さが足りず、そして後ろがかなり開いているので後ろにそのまま落っこちそうになりました。
地下聖堂はこれだけなので、一般の拝観料10ユーロは少し高い気がしましたが、世界遺産故なのでしょう。
そしてガウディ建築でラフマニノフを聴くという贅沢。音響もまあまあ良かったです。
若干21歳のバルセロナの音楽大学に通う地元出身の若手ピアニスト。友人や家族も来ていて、地元の世界遺産で演奏する機会を得て感無量のようでした。
ガウディにとってサグラダ・ファミリアの基礎となったこの教会。完成していたら一大観光地となっていたことでしょう。ある程度の観光客は訪れるもののオーバーツーリズムとはほど遠いようです。
帰りにレトロなバルに立ち寄ったら、地元民で賑わっていて良い雰囲気でした。
コロニア・グエルはSanta Coloma de Cervellóの町の中心から離れているため、田舎の町の雰囲気があります。バルで知り合いと鉢合わせて立ち話していたり皆が知り合いのよう。グエルが作った結束したコミュニティが繊維工場が閉鎖した後も絶えず続いているようです。
実はこのコロニア・グエル教会は、スペースをレンタルできるので、ガウディの世界遺産の聖堂でウェディングなんていうこともできそうです。
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