見出し画像

建築家ムンタネーの華やかな世界が広がるレウスのペレ・マタ病院

リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーLluís Domènech i Montaner)というスペイン人建築家を知っていますか?

バルセロナで世界遺産に登録されているサン・パウ病院カタルーニャ音楽堂を設計した建築家と言えば分かる人も多いのではないでしょうか。

サン・パウ病院(上)とカタルーニャ音楽堂(下)

カタルーニャで独自に進化したアールヌーボー、カタルーニャ・モデルニスモを代表する建築家で、バルセロナ市内の建築学校の教授を務めガウディは彼の生徒でした。

ムンタネーの建築はバルセロナ市内に一番多くありますが、バルセロナ以外でも彼の代表作があります。その一つの町がバルセロナから南西に110キロほど行ったところにあるレウス(Reus)。世界遺産のローマ遺跡があるタラゴナからすぐです。

今回はヨーロッパ遺産の日を利用してそのレウスにあるムンタネーの建築、ペレ・マタ病院 (Institut Pere Mata) を訪れてみました。


ペレ・マタ病院とは?

19世紀後半、レウス市周辺には精神病患者が衛生的かつ療養のできる施設がなかったことから、レウス出身の医師が町の有識者を集め、新精神病院建設のための会を発足します。その初代会長がムンタネーと知り合いだったことから彼に設計を依頼。1897年~1912年の間に建設されペレ・マタ精神病院と名付けられました。この病院の設計が後にムンタネーが設計するバルセロナのサン・パウ病院の基礎となったとされています。

庭によって仕切られた11棟の建物から成る病院で、一般公開されている裕福な精神患者が収容されていた1棟(6号館パビリオン)を除いて現在でも精神病院として使用されています。

ペレ・マタ病院の模型

サン・パウ病院を彷彿させるペレ・マタ病院の外観

レウス駅から町の中心とは反対の方面に歩いて20分強、畑に囲まれたのどかなエリアにペレ・マタ病院があります。精神病院なので周りは高い柵で囲まれています。この辺りが正面入り口のよう。

病院を囲む塀や門はサン・パウ病院でもみるようなデザインです。

守衛室兼受付。

青と白のタイルのデザインが素敵です。

フォントもモデルニズモらしいです。

庭には木が生い茂っていて外からは建物は少ししか見えませんが、中央にそびえる貯水槽のような趣の塔が見え、患者なのか庭のベンチに座っている人が何人かいました。

正面向かって左側の角を曲がると一番ムンタネーらしい門がありました。タイルにInstitut Pere Mataと書かれており、アールヌーボー調の花に囲まれた女性がタイルに描かれています。そして正面奥には先ほどの塔が見えます。

こちらが一般公開されている6号館の横からの眺め。タイル装飾も素晴らしく、病院のイニシャルや女性、孔雀などのモチーフが見受けられます。

正面は木が邪魔になって全体像は撮れませんでした。こちらは建物の正面中央部分。

やはりバルセロナのサン・パウ病院を彷彿させます。

外観の装飾の数々。花や植物のモチーフが多いです。

華やかなペレ・マタ病院内部

オーディオガイドで外観の説明を聞いた後は正面中央入口から内部へ。

公共スペースのある1階

1階中央の部屋は患者がくつろげる共有スペースになっています。吹き抜けの天井の花柄のタイルに圧倒されます。

窓のステンドグラスから天井、どこもかしこも花柄でびっしり。

隣のダイニングはオレンジがテーマ。天井も壁のタイルもオレンジが描かれています。

壁もオレンジの木でしょうか。

どこもかしこもオレンジです。

裏口の玄関もこの通り。

ビリヤード室もありました。

一見落ち着いた部屋に見えますが、天井を見上げると…

階段を上がって2階に行きます。

個室が並ぶ2階

2階に上がると大きな窓から光が降り注ぐ廊下があります。サンパウ病院の正面入り口の建物の廊下と似ています。

先ほど1階で見た憩いの部屋の吹き抜け部分。

いくつかの個室へと続く踊り場。

白鳥がテーマの踊り場だそうです。

驚くことに個室は部屋によって装飾が異なります。こちらはバラの部屋。

家具も部屋の装飾に合わせるというこだわり。

富裕層の病棟と言えどもここまでするムンタネーには感服します。

トイレやお風呂のタイルもモデル二ズモらしい装飾が施されています。便器もカラフルですが特注ではなく、既製品だそう。どちらも日が差しこんで明るいです。

同じモデル二ズモ建築でも石などの重厚な建築資材を好んだガウディに対して、師匠のムンタネーは光が降り注ぐ大きい窓のある軽量資材を利用した建築でスタイルは異なります。

どうしてもスペインのモデル二ズモ建築というとガウディに焦点が辺りがちですが、ムンタネーの建築は女性的で優しく、そして華やかでガウディとまた違った魅力があります。レウスに足を延ばすことができなくても、バルセロナを訪れる機会があればサン・パウ病院やカタルーニャ音楽堂を訪れて是非ムンタネーの魅力を感じ取ってみてください。

この後はレウスのガウディ博物館を訪れます。

ペレ・マタ病院
土日祭日のみ開館(7月~8月は毎日)
拝観料:€9(オーディオガイド付)
最新情報:レウス観光局公式サイト 
                   https://www.reusturisme.cat/joia-modernista/institut-pere-mata


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集