ティッセン=ボルネミッサ美術館で気になった行動
プラド美術館とソフィア王妃芸術センターと並び、マドリードの三大美術館の一つとして知られるティッセン=ボルネミッサ美術館。3つの中では恐らく一番訪れる旅行者は少ないと思いますが、スペインのアートが充実したプラド美術館やソフィア王妃芸術センターとはまた異なったアメリカン・アートなども充実したインターナショナルなコレクション。
それもそのはず、スペイン王室やスペイン政府、スペイン人コレクターのコレクションではないためです。
マドリードに開館したのは偶然それとも必然?
元々はハンガリー系ドイツ人のハインリヒ・フライヘア・ティッセン=ボルネミッサが収集したコレクションで、スイスのルガーノにあるハインリヒの私邸ヴィラ・ファヴォリタ(Villa Favorita)に保管されていました。ハインリヒはドイツの、特にミュンヘンにあるアルテ・ピナコテークのような大きなコレクションを目指していたということ。
1947年にハインリヒが亡くなると、525点の美術作品は4人の子供たちの間で分配されたそうですが、次男のハンスが兄弟が売却した絵画を買い戻すなどして管理し続け、一般公開されていたそうです。そしてハンス自身も父ハインリヒの好みに沿った絵画を購入し、彼の妻カルメンもコレクターとして絵画を購入するようになりました。
ハンスはコレクションが増えたためヴィラ・ファヴォリタを増設することを考えたところ、市から建設許可が下りず、止む無く他の候補地を模索したそう。そして、イギリスやスペイン政府、アメリカのゲティ財団、ドイツのいくつかの町からオファーがあったそうですが、最終的にはスペイン人の妻カルメンの希望でマドリードに美術館を開館することで合意がされ、1992年に開館しました。現在は一部の絵画はスペイン政府に売却され、残りのスペイン政府にローンされている絵画もローン期間終了後購入のオプションがあるそうです。
アメリカン・アートもたくさん、多彩なコレクション
カルメン・ティッセン・コレクション
入口を入ってすぐのところにあるカルメン・ティッセン・コレクション。そのコレクションは見ていて楽しかったり、ついつい見入ってしまう作品が多かったです。アートコレクションというとやはり男性目線が多いので、女性コレクターのコレクションはより女性の目を惹くのかもしれません。美術館の一番良い場所にあることからやはり彼女のコレクションが一番人気なのでしょう。
色彩が美しく何ともいえないモネ。
「叫び」のイメージが強すぎるムンク。こんな温かい作品も。
ポール・ゴーギャン。タヒチで描いた作風のイメージが強すぎて、ぱっと見すぐゴーギャンだとは分からない作品。
もちろんタヒチの作品も。
カンディンスキーももっとアブストラクトな作品の方が有名なので目新しいです。
思わず見入ってしまったポール・デルヴォー。
見ているだけで楽しくなるアメリカ人画家、レジナルド・マーシュの作品。
まるで写真のようなリチャード・エステスの絵。いかにもアメリカ!という作品がいくつかありました。
アンダルシア地方のマラガにカルメン・ティッセン美術館があり、そちらはスペイン人アーティストの作品が主なよう。そちらの作品群も見たくなるようなカルメン・ティッセン・コレクションでした。
充実のアメリカンアートの数々
カルメン・ティッセン・コレクション以外でもアメリカン・アートが充実していました。
見ていると吸い込まれそうなマーク・ロスコ。ちょうど椅子が目の前にあったのでしばらく眺めていました。
アメリカのメジャーな美術館には必ずと言っていいほどあるけれど、久しぶりに見たジョージア・オキーフ。
見ていて楽しいデ・クーニング(オランダ系アメリカ人)。
ウィンスロー・ホーマーの典型の海のシーン。
ポートレートのイメージが強いジョン・シンガー・サージェントはやはりポートレートが映えます。
これらの他にも20世紀のヨーロピアンアートも充実していました。
父ハインリヒが収集した中世以降のクラッシックアートも数多くあります。最上階にあり一番最後に廻ったのでもう既に疲れてしまっていてさっと見る程度にしました。
気になった旅行者の行動
ティッセン=ボルミネミッサ美術館は、写真撮影が可能なので写真を撮っている人も多いです。写真撮影は大体絵だけをスマホで撮る人がほとんどでさほど気にはなりません。ところが、中華系の観光客とみられる女性でポーズをとって有名絵画と一緒に写真を撮っている人たちが何組もいて、絵の前を陣取って納得がいくまで何度も撮っている人たちもパラパラ。かなり他の人の鑑賞の妨げになっていて、どうなのかな?と思いました。
この様子を見て、マドリードで一番人気のプラド美術館で写真撮影が禁止されているのに妙に納得しました。ただでさえ混雑する美術館で写真撮影を許可すれば、余計に混雑するでしょう。ルーブルの様子を見ても分かります↓
最近でも、国籍に限らず、携帯電話で話す人、連れと大声で話す人を度々見ました。絵画は静かに楽しみたいと思う人がほとんどだと思います。監視員に見つかれば当然注意されますが、最低限のルールやマナーは守ってほしいです。
そして今回マドリードで美術館をいくつか巡りました。プラド美術館とソフィア王妃芸術センターはスタンダードですが、スペインらしさという面では個人的に王室コレクション・ギャラリーがおすすめです。