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二人、線路の途中。
夫と漫画喫茶に行った。
私たちの共通の趣味に「漫画」がある。
夫は捻ったものより王道のジャンプ系漫画を好む。
私はどちらかというと捻ったものが大好きだ。
しかしそこの違いからお互い漫画を貸し借りできることがあり、そこは助かる。
呪術廻戦を借りたら私の方がオタク的にハマってしまった。
さて、久しぶりに漫画喫茶へ行ったもので「ナナとカオル」が懐かしくなって適当に取ってかりた。
「ナナとカオル」とは、少しセクシーなSM青春漫画である。
SM的な世界はちょっと前にお世話になったこともあったが、現在は遠のいている。
あのフェティシズムに沈むときの甘い感覚に今も私は狂わせられている。狂わせてもらえてよかったとも思う。
あの気持ちは日陰に置く宝箱にしまう様に、大事にして愛している。
そういう酔狂なマローリとした気分になりたくて手に取った。
どこの巻数かは忘れてしまったが、読んだ箇所は主人公のカオルがヒロインのナナを思って頭の全てを覆うマスクを被せる回であった。
ヒロインのナナはいい子だ。だからこそ、カオルは本音を言ってほしい。マスクの中でなら本音を話せる、自分を解放できるはず、だからマスクの中で叫べ!ナナ!みたいな話だったと思う。
感動であった。
涙である。
生まれて身につけざるを得なかった言葉や仕草や教養を今は捨て、野生に戻ってもいいという包み込む優しさ。
あるがままの人間とは!!
みなさん!!
これSMです!!
私は思わず敬語で叫びたくなるほどに感動したのだ。
すぐには感想を話さなかった。
どころか、帰りの車内で、自分はもっぱら「おやすみぷんぷん」の話をしてしまった。
「おやすみぷんぷん」とは。とにかく家庭問題など山積みの話。一緒に働くコンカフェのキャストちゃん達がこぞって好きなので、半年単位で少しずつ読み進めているのだが、自分はあまり耐えらず感情が処理できない。
夫はフンフンきいてくれて「寂しい話だね」と一言感想を残した。
彼はさっき「ワンパンマン」を読んでいた。
帰宅し、やっと話そうと思って寝しなに先程のナナとカオルの話をした。
興奮のままうまく話せなかった。
伝わることもないだろうなと踏んでいた。
しかし話したかったのだ。
案の定、夫は話の途中で「枕を忘れた!」と言い放ち取りに行ってしまった。
こういう人である。
戻ってきた夫は「いやーごめん、それで?」と続け、聞き終わると「ふーん。わからんなぁ」と言って豪快にスピー!!と寝落ちした。
それでいいのだ。
わからなくていいのだ。
頭を使って快楽を楽しむことは、貴方はこれからもしなくていいのだ。
ワンパンマンを、ワンピースを、呪術廻戦を読んでいてほしいのだ(私も好きだ)
でなければ、長く私と一緒には居られないと思う。
寝落ちした夫を横目に、部屋を出た。
時間は0時前だ。
あぁこの時間から昔は縛られたり遊んだりしていたっけなあ。
自室。
海外の男の子のセクシーな写真集、三島由紀夫の自殺風写真集、自分の作ってきた人形、フリルのお洋服、ボンテージ風のゴス服。
悪徳は心にしか栄えていない、が、まだ確実に熱い火を宿している。
静かな部屋でまた明日を思い睡眠薬を飲む。
夢の中で、怪しい女と遊んだ。
怪しい女は、テーマパークにて、ワイヤーで私を釣り上げた。
客の持つ、赤いアイスクリームの色がまるで蝋の様で印象的だった。