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ゲーム感想 planetarian ~ ちいさなほしのゆめ ~

planetarian ~ ちいさなほしのゆめ ~



「planetarian ~ ちいさなほしのゆめ ~」は、2004年にPC用で発売されたサウンドノベル(2025年現在、20年前のゲーム)で、switch版は2019年に発売されている。ゲームブランドKeyが制作したもので、キネティックノベルと呼んでいる。アドベンチャーゲームにある選択肢が無く、小説を読む感覚のゲームになっている。

クリアしたのは昨年(2024年)、いわゆる泣きゲーというものだけど、とてもいい物語だったので感想を書こうと思う。

概要

舞台は地球。宇宙にも進出し移住もできるぐらいの科学力が発展した地球、宇宙開拓の失敗から戦争が起き多くの人間が死に追いやられた。

とある街では細菌兵器による攻撃があったため、その地域にいる人間は急遽避難することになり街はゴーストタウンと化した。その後は戦争による汚染で止むことのない雨が降り続く。

それから30年、ゴーストタウンへ当時のものを盗掘する屑屋が潜入、目当てのお宝を探すなかで撃退用の戦闘ロボットに追われて、とある建物に逃げ込む。その建物の最上階はプラネタリウムになっており、屑屋はその施設のスタッフ補助用ロボットとして働く「ほしのゆめみ」と出会う。

1年のうちに1週間だけ稼働し、残りの期間は充電による休止をしていた彼女は、業務の1つであるプラネタリウムの呼び込みを続けている。そんななか、30年ぶりにやってきた待望のお客=屑屋を250万人目のお客として、機械部品の寄せ集めで作った花束を渡し歓迎する。

すぐに立ち去ろうとする屑屋だが、あれこれ話題を作っては話しかけてくるゆめみの相手をしている内に、少しずつ彼女を受け入れるようになっていく。ここに訪れた屑屋にとっての束の間の休息、ゆめみとの奇妙な出会いは屑屋の人生を変えていく。

感想

良かったところ


ロボット故の切なさ

細菌兵器により人のいなくなった街で30年間人間を待っていたゆめみ。人間がいつか戻ってきてくれることを信じて疑わず、ずっと呼び込みを続けていた。

おそらく人間ならとっくの昔に絶望していた状況だけど、ロボットであるが故に、ただ一人誰もいないところで彼女は呼び込みを続ける。

本作のポイントは、身も蓋もないけど、いわゆる泣きゲーというもので、しつこいぐらいに続けられる呼び込みは、物語の最後にボディブローの様に効いてくる。

泣きの部分は、ロボットだからこそできる演出で、プレイヤーはゆめみをつい感情のある人間と比較してしまうが故に、ゆめみの事を考え胸が詰まるような気持ちに箇所だと思う。それが押しつけている形にならず、自然に涙が出てくる。そんな切なさがあるんじゃないかと思っている。


人間を信じるゆめみ

30年前、細菌兵器によって急遽この街を放棄せざるを得なくなった街の人々。プラネタリウムのスタッフも同様で、ゆめみを連れていきたくても、断腸の思いでここへ置いていくことを決断する。

人間の身勝手な判断に思えるけど、ゆめみの教育係は最後まで反対していたし、館長も必ず戻って来るとゆめみに約束をしていた。周りの悲壮感とは裏腹に、人間を信頼しているゆめみは、必ず人間が戻って来ることを信じてにこやかに送り出そうとする。

その後何年にも渡って待ち続ける彼女は、途中から人間が戻ってこないことに疑問を感じ自己分析を行う。結果、人間はもう戻ってこない、という結論が出ても、人間を信じる彼女は自分の分析結果が間違っている(壊れている)と結論づけている。

呼び込みの話と同様に泣きのポイントは、人間が戻ってこないことを知ったゆめみの気持ちと、それでも人を信じる部分にプレイヤーが感情移入する部分だと思う。


屑屋の変化

序盤、屑屋はゆめみが何か話しても「黙れ」と威嚇し、喋り続けるゆめみを無視していた。常に死と隣り合わせの殺伐とした環境で生きてきた屑屋にとって、ゆめみは関わる必要のない存在。

それでも、屑屋の態度に構うことなく話しかけてくるゆめみに呆れ、とうとう動かなくなった投影機の修理などを通して受けれ入れ始める。この心境の変化は少しずつだけど、着実に変わっていく様が丁寧に描かれていて、いつのまにか屑屋に感情移入してしまった。

なお、ゲーム本編では出てこないものの、劇場版 planetarian ~星の人~で、屑屋のその後が語られている。

屑屋とゆめみがどうなったのか、ゲーム本編をプレイして気になった人は、是非観てみてもらいたい思う。


ゆめみの願い

ゆめみの願いは「もしロボットに天国があるのなら、人間とロボット、天国を2つにわけないで欲しい」というもの。ロボットの神様がいるのなら、そうお願いすると語る。

彼女は人間を30年待ち続け、それでも人間と一緒に働けることが幸せと考え、天国であっても自分1人ではなく人間とともにありたいと願っている。

彼女が「もう1人にしないで欲しい」と願っているようにも聴こえる。


すれ違い漫才

物語後半は、一気にシリアスムードになるものの、前半はゆめみと屑屋の噛み合わない会話が中心となって物語が進んでいくので、最初はそこまで気にしなかったものの、もう1度プレイしてみるとすれ違いっぷりに笑えてくる。

この物語は、ロボットの悲哀や切なさ、人間の優しさを描いているけど、意外とコメディーな部分もあると知って、ちょっと得した気分になった。


イマイチなところ


コストパフォーマンスの悪さ

switchでは「planetarian ~ ちいさなほしのゆめ ~」単独で1121円、前日譚となる「planetarian ~ 雪圏球 ~」が単独で500円、両方入ったパックが1600円。

物語にシナリオ分岐が無く、およそ2~3時間読むだけで1000円超えは少々かなりコストパフォマンスが悪いと思う。切なくて泣けてくる物語ではあるんだけど・・やっぱりボリュームが足りないと思う。


ということで、泣きゲーと言えるサウンドノベル。人によっては泣ける程感動はしないかも知れないけど、個人的には買ってよかったと思えるし、物語を読んで涙してしまった。コスパは悪いけど、もし読んだことのない人で興味があれば是非オススメしたい。