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一枚の透明なガラスが世界を仕分けています。
写真は老人ホームに入居した母です。施設の二階に母の部屋があります。二十年間暮らした高円寺の元の部屋から、洋服箪笥と木製テーブル、そしてお気に入りの椅子を運び込みました。面会は(感染防止のため)まだガラス越しです。部屋のベランダ側からボクは話しかけています。窓を少し開けてあるので、声は聞こえます。母はボクを見つけて笑いました。とても元気そうです。
母は、ボクがどうして部屋に入らないのか理解できていません。ですが、細かい疑問はすぐに忘れちゃいます。立ったまま嬉しそうに会話してくれました。
今はこの部屋が母の世界です。一枚の透明なガラスがボクの世界と母の世界を仕分けています。だけど世界と世界は隣り合っていますから、こうして笑い合うことができます。
しばらくワイワイとお喋りを交わして、「じゃあまたね」と手を振って帰ってきました。