アウトプットの始点と終点とスペースシャトル
言うまでもなく、チラシでもWebページでも街角の広告や看板でも、何にしてもデザインというのはアウトプットです。
もし、あなたが何らかのデザイン制作を依頼された折、クライアントにする質問は何でしょうか?
目指している雰囲気、イメージいている色味、訴求したいターゲット層……そういた仕上がりに関わる部分、つまり最終デザインそのものに関する情報でしょうか。
それとも
締め切り、費用、提供される写真やテキスト等の制作条件に関わる部分、つまりあなたとクライアントの関係性にまつわる情報でしょうか。
往々にして、後者の取り決めはあっても前者は丸投げだったり、ぼんやりしていたりする場合が多く見受けられます。これはインハウスでもフリーランスでも変わりません。
理由を挙げ始めればキリがありませんが、そのうちの1つに「日本人は結論を出すのが苦手」という性格もあると思います。しかしそこへ行くと、普段から話している言葉の文法や社会性に由来する気質などなど、無限に脱線しますので割愛します。
ともあれ、デザインそのものに関する情報が丸投げだったら依頼される側は四苦八苦して正解を探す羽目になります。場合によってはクライアントがディレクター化してしまい、お互いに迷子になってしまう長い旅路になることもしばしば。
そうならないよう、あなたは最初の段階である疑問を持っておくことをお勧めしたいと思います。
冒頭で触れたように、デザインはアウトプットです。
そしてその役割は「売れるハズのモノが消費者に届くようにする」ということ。
つまり「商品の本質」を「受け手」に届けられれば、あなたが作ったデザインはお役目を果たしたこととなります。
例えるならば、スペースシャトルのロケットブースター。
ロケットブースターはタンク内の燃料を燃やしてシャトルに推力を与え、シャトルが大気圏を脱した段階で切り離され、放棄されます。
あなたの作るデザインもそれと同じで、商品の本質が消費者に届くだけの推進力を与えて、必要なくなれば放棄される運命です。
消費されるだけの悲しい定めのようにも見えますが、デザインが内包した情報を伝えきって役目を果たし、その上で捨てられるということは、私はとても誇り高い成り行きだと思います。
というわけで、依頼を受けたできるだけ早い段階で
「これから作るデザインはどういうルートを辿って生涯を全うできるのだろう」
という疑問を抱いておくと、制作がスムーズになるでしょう。
詩的な表現なので、このままクライアントにぶつけてもサッパリでしょうが、この疑問を抱いているだけで、あなたはクライアントが持っている様々な情報に対して敏感になれます。
どうしてもアウトプット=制作物という観点からみていると出来の良し悪しだけに目が行きがちですが、制作物と受け手の出会いから忘却まで、というアウトプット自体の始まりと終わりを意識すると、より効果的でスムーズな制作が実現できますよ、というお話でした。
それでは、良いデザインライフを。
お目通しいただきありがとうございます。サポートも受け付けていますが、そんなことよりも自分の暮らしを豊かにしましょう。 そのうえで、私に施すことであなたの気持ちが幸福に傾くようであればぜひお願いします。