1220 夏企画
すっかり冬、どころか街中にはクリスマスソングが溢れていますね。例年のことですがここ1ヶ月ほどクリスマスソングを毎日聞きすぎて食傷気味です。出先でクリスマスのディスプレイを見たり贈り物を選んだりするのは好きなのですが。
…ということで12月半ばですが、ここで気持ちを夏に戻して、#web夏企画 の閉会式めいたまとめ記事を書こうと思います。
主に未来の私が復習として読み返すためのものです。
web夏企画、我ながらよく分からないハッシュタグを最後まで使い続けてしまいました。(短いタグにしたかった結果です)
web夏企画「それは平成最後の夏のことだった。」は、私がある日唐突に「夏を描いた作品たちをまとめて読みたい。絶対に皆さん創るだろう」と思い、平成最後というフレーズにかこつけてその日のうちに募集を開始した突発企画です。
8月、やがて9月の半ばくらいまでの締切ロスタイムを経て、38作品を頂戴しました。
作品ができた方から申し込みフォームでそのURLを提出してもらい、企画サイトにリンク一覧を作成するという形式をとりました。
企画開始からは本当に期間が空いてしまい…、繰り返しになりますが冬になってしまいましたが、この場を借りて個人的な反省と、書いた感想のとりまとめを行おうと思います。
◼︎企画自体について
本当に思いつきで始めてしまったので、サイトも空アンソロの流用で、ほとんどいじっていません。
お休みの日に思いついた→タグを弄って遊んでいて眠らせておくのも勿体ないので公開した、という感じです。
作品紹介ページ、1日もかけず突貫で作ったわりに何だかんだ気に入っています。
あとびっくりするくらい質問(リプライ)がありませんでした。0だったような….?
当初は、参加者さんいないのでは…?と思ったりしましたが、概要ページのQ&Aである程度、想定される質問はカバーできていたのかなとも思います。…できていたらいいなという願望です。
最終的にまさか38作品も集まるとは思いもよらず、本当に嬉しく思っています。
38作品…小学校の1クラスくらい出来てしまう。私が言うのも変ですがわりと誇らしいです。あらすじの抜粋の壮観なこと。
どれもこれも素敵な作品たちで、これが一番好き!という作品があるかと思いきや、本当にランキングが決められないのでびっくりしました。どれも好きです。
今回、短歌や漫画や散文をお寄せいただけたのもこれまでのアンソロ冊子企画と違っていて面白かったです。関心をお寄せくださりありがとうございました。
その作品の提出ですが、今回は「出せたら出す」方式にしました。
つまり、事前の表明不要で、出来たひとからその作品のURLをフォームから連絡する、というものです。
前述したように参加者さんの全体数が見えず、結果として提出者さんが少ないと企画の盛り上がりに欠ける可能性があるな…という懸念はありました。
ただ最終的には、やはりこの方式でよかったなと考えています。
私の中で今回のこの企画は本来予定になかったものであり「ゆるい企画」であったため、このくらいのゆるさで良いやと思っていたものにフィットする形式だったなと。
「出せたら出す」はつまり「出せなかったものは受け付けない」です。出したいな〜と言っていた、けれど締切までに提出がなかった。そういう人を顧みる必要がない。
我ながら非常に冷たい(勝手な)言い分だとは思いますが、リマインダやリスケをしなくて良いし私が気にやむ必要もない。
中にはDM等によるリマインダを希望していた方もいらしたかもしれません(それは例えば、参加したいなあってツイートされていたけれど忙しくて提出に間に合わなかった、だとか)が、縁がなかったんだなあ、くらいに考えていただければ。
私もそういうもの(巡り合わせ)だったのだと考えています。
「出せたら出す」…、主催さんによるとは思いますが、アンソロ企画だとこうはいきません。私のところのアンソロの場合は、参加者さん決定に抽選を行っているので、選ばれた方は最後までご一緒したいし、して欲しい。(そう思うのには色んな理由があります)
いずれにしてもリマインドやリスケには義務めいた感情が伴ってしまう。
その点で、今回は、あらためてますます自分勝手に振る舞ってしまいましたが、作業面でとても楽でした。
なお私自身が書き上げられなかった、出せなかった、という、乾いた笑いが出てくるところもあります…。私も書けなかったので出せなかった人です。まあそういうこともよくある(?)よねと。
自分の書きかけはどこかで供養したいなと思いますがどうなることやら。
そんなゆるい企画でした。
そのため、土壇場の判断で締切も10日くらい延長させていただきました。
締切すぎてからの提出がだいぶ多かったので、まあ窓口開けておいたのは良かったのかなと。良かった、というのは、私にとって嬉しい出会いがたくさんあった、という意味です。
◼︎反省
反省に関しては本当に色々あるのですが、連絡の無精と全体の進行の遅さ、これに尽きるなと。
参加者さんはさぞ色々と苦言を呈したいだろうと推察しますが、皆さんDMのお返事があたたかくて徳の高さを感じました。
やさしいお言葉をありがとうございました。
そうして申し訳ございませんでした。
今回、いただいた作品は主に小説ですが、作品から一文を抜粋し、あらすじを掲載するという形でまとめました。
この一文抜粋とあらすじは、ほぼ全てを私が考えさせていただきました。
これを作者さん本人から頂戴すれば公開ペースははるかに早まったと思うのですが…。
個人的に印象に残った部分を抜粋するのと、得意ではないながらあらすじを考えさせていただくのは、とても楽しかったです。
あらすじは、作者さんご本人がカクヨムやなろうで掲載されているものをだいぶ参考にさせていただきました。一人で書けばページ全体の統一感が出るかなと思ったためにとった形式ですが、実際にまとめてご覧いただくと、頑張って書こうとした感が伝わるかもしれません…。笑
あらすじを書くこと考えること自体はとても楽しかったのですが、得意ではないので良いチャレンジでした。
これまたお優しいことに、参加者の皆さまからリテイクはほとんどなく…。あらすじってつまり作品の概要なので、私の理解が一歩違うと作品へのアクセスの妨げになってしまうとはらはらする気持ちもあったのですが、皆さんあたたかいOKをくださって感無量でした。
ありがとうございます。
今見返しても、作品掲載ページにこれだけの抜粋(イラスト作品はサムネイル的な画像)が集まると、壮観だし心地よいなあと思います。
私としては十二分に満足しています。
私個人が気に入った文章を連ねているので、自分が心地よいのは当然かなとも感じますが……ページを見てくれた方もそう思ってくださったら幸いです。
そうして、これだけ沢山の作品が集まったからこそ、このページがきっかけで一作品でも読んでもらえたらとても嬉しく思います。
別に全作品を読む必要も、必ずしも感想を公にする必要もないのですが、せっかく集まったからには盛り上がれたら嬉しいというのが正直な思いです。企画としてとりまとめる以上、レスポンスがないのは寂しいので。
このページの画像や抜粋で気になるものがあったら、覗いてもらえたらなと思います。
38作品あれば絶対ひとつは、好き!という作品があるかなと思います。
これまでに、既にツイッターで作品の感想をツイートしてくださった方もいらして、共感したりその方の視点を興味深く思ったりしながら楽しく拝見しています。
本当にありがとうございます。
見つけ次第、都度、空アンソロのアカウントでRTさせていただいていますがそのうちモーメントできちんとまとめたいです。
(モーメント、スマホから編集できなくなってしまったのでまとめ滞りがちです…)
参加者さんがRTしてくださったり、言及してくださったり、感想をいただけたり。そういう主体的な活動を目の当たりにできるとき、企画主宰という身での嬉しさとありがたさを強く感じます。
私は企画をグループ活動だと感じているので、気ままに振舞っていながら言うのも何ですが、参加してくださること、一緒に盛り上がってくれること言及してくださることがとても嬉しいです。
そういう方のことを覚えるし、一方的に好きになるし、そういう方とまた楽しいことができると良いなと思います。
…別に今回、その反対のこと(≒悲しい思いや寂しい思い)があった訳では全くありませんが、あらためてしみじみそう感じたので。
なので「構ってツイート」が多いだろうなと自分でも思います。
ストイックに淡々とやっている方もいらっしゃるかと思いますし、自分の見たい作品をお寄せいただいている中で傲慢だなとも感じます。ただ同時に、アンソロにしてもweb企画にしても、「広告収入でマージンを出す投稿サイト」ではないため、これは私の趣味の一つなので好きにやらせてください、と思う自分がいるのも確かです。
(最近、その強い我儘さと、周りが許容してくださるラインの線引きががたがたというか、自分で石灰を真っ直ぐに引けなくなっている感が否めません、何でも隠さず言えばいいってもんじゃないなとも思います)
◼︎今後について
さて。
ゆるいweb企画ですので、12月をもって当企画はおしまい、ということにさせていただくつもりです。
個人的にはあとは、参加者さんにDMでお伝えした感想をそのまま以下に転載してまとめる予定です。
おしまいと言いつつも、企画ページを閉鎖する予定はありませんのでお好きに覗いていただければと思います。
別に読む時期、呟く時期に早い遅いもありませんので、旬(平成)は過ぎてしまうかもしれませんが個人個人に合った時期に楽しんでもらえたら嬉しいです。
…次の元号は何になるんでしょうね。
さて、あとは個人の創作(企画)活動のことを。
そのうちまた年末のまとめにも書くかもしれませんが。
ご存知の方も多いかもしれませんが、私は作業ペースが非常に遅く…。ペースというか、次の作業に取り掛かるまでの間がありすぎる、という言い方の方が正しいですね。
今回の企画も大変楽しくやらせていただいたのですが、長らくお待たせしてしまい参加者さんには申し訳ない気持ちもあります。
なのでせめて、次に何かやるとしたら、作業時間だけでも短縮できるようブラッシュアップが必要だなと常々考えている次第です。
今回は遣り取り自体を省略してしまいましたが…。
最近考えているのはDM一斉送信の活用と、オンライン上でのスプレッドシート共有の管理あたりです。既出のアイディアの拝借ですが…。
web企画はいつやるか、今後またやるかどうか分かりませんが、こうした方が良かった(良くなる)だとか、今回のことでご意見があれば、忌憚なくお知らせいただければ幸いです。
あらためて、本当に素敵な作品たちをお寄せいただけましたし、満足いく掲載ページを作れました。
作品をお寄せくださった方、宣伝などを含めあたたかく受け入れてくださった方、ありがとうございました!
来年は平成とお別れして、新しい元号をお迎えしますが、どんな年になっていくのでしょうか。
また一緒に楽しめたら嬉しいです。
◼︎個人的な感想 (再掲)
作品の感想はDMでお伝えしているので、追い追いそれをここにコピーペーストしていきます。
私個人の確認用も兼ねて。
なお感想の長さの差異に他意はないです。ご了承くださいませ。
(1)天霧朱雀さん/ファクション
彼女の語りにもっともっと寄り添っていたかった。
抜粋した「生きていることは簡単だ。生きることに怯えている。生きてゆくことはとても苦しい。」というところもそうだけれど、流れるような語り、文体が素敵。
「振り返らないで」という言葉がどれほど優しくても、そうせずにいるのは難しいのだろうなと。「分からないから教えて欲しいよ、」の辺りがいっとう好き。
(2)さきがみ紫檀さん/舞台袖のマクガフィン
二人の会話の雰囲気がほかでもない“夏”という感じで、とても浸りながら読み進めさせていただきました。さすが紫檀さんだなあと…。
煙草の煙のとりまく、温度の高すぎない、暑すぎない、まさしく夜のベランダという雰囲気。
とりたてて大きな事件の起きない穏やかさでありながら、けれど凡庸でない、大人の会話を覗き見たようなスパイス感も。
作品世界の空気感がとても心地よかったです。
(3)古月玲さん/名前のない夏
私事ながら、自分もきつい坂の上の高校に通っていたので、主人公に自分を重ねて懐かしさを感じながら拝読しました。
きっと読み手皆、懐かしさを感じるのだろうなと。
経験していないものに懐かしさを覚えてしまうって凄くないですか…?凄い。
主人公の語りや友人たちとの会話が心地よかったです。
(4)鳥鳴コヱスさん/クラスメイトの高遠さんはリアル指向の夢を視る
面白かったです…!
高遠さんの凄い能力は、何か代償があるのではないかと若干そわそわはらはらしながら読み進めたので、目覚めないという状態が分かった時にはどきりとしました。
けれどだからこそ、ラストが際立って良かったです。
「平成最後」というフレーズをああいう風に持ってくるのが、最高だなあと噛みしめながら読み終えました。
(5)星宗介さん/ひび
以前の空の企画につづいてご参加くださり、大変嬉しいです。今回は小説なんですね。
主人公の嫌悪が丁寧に描かれていて読み進めるほどに感情移入しました。
ビー玉の表現、比喩が好きです。
(6)佐宮綾さん/正解
空アンソロにつづいて、作品をお預かりできて大変嬉しいです。
「正解」、本当に何がよかったんだろう、自分ならどうするだろう、と模索するようにして読みました。
考えさせられる作品で、空アンソロのあの幸福な感じとの作風の違い、佐宮さんの多才さに驚くばかりです。
佐宮さんも仰っていましたが、3人ともが幸せになれる世界線があればいいのに、と思わずにいられない。そう上手くいかないから正解を求め続けるのだなと。
(7)十五夜美月さん/夏に轟け Rock'n'Roll
熱い、けれど同時にさわやかな作品で、読んでいて楽しかったです。
光ちゃんが悩んでいる姿がかわいらしく、剛はなんで気づかないの?と良い意味でもだもだしてしまいました。笑
だって高校生の女の子なのに…小学生くらいならまだしも…!(いくら胸元がささやかとは言え)
周りの子たちのフォローが良い感じで友情にほっこりしました。
(8)斉木緋冴。さん/はじめてのなつ
「はじめてのなつ」、空アンソロの作品とはまた趣が違ってよかったです…!
はじめはクラスメイトの目線(電信柱とセミ、といったからかうような)で追っていたのに、実は二人が付き合っていたのを知った時には驚きましたし、二人のやりとりにはほっこりさせられました。
可愛らしいお話で癒されました。
(9)雨伽詩音さん/夢花火
噛みしめるようにして拝読しました。
約380字、ひとつひとつの言葉選びが繊細でうつくしくて、「あなた」へ語る主体の声が、自身の脳内で、想像しうる中で一番うつくしい声で響いてくるようでした。
「あなた」の歌声が夢ではないかと問う、祈るような切ない文章、愛おしくてぐっと来ました。
私の表現が拙くて申し訳ないのですが、本当に好きです。
(10)空野わかなさん/最後の夏をとじこめて
面白かったです。
ひとみちゃんはかわいいし萩本くんは気遣いが出来てかっこいいし、二人ともとても好感が持てました。
かわいい~~!!と何度言ったか分かりません。
平成最後の夏にかこつけてしまうのが、ときめきましたし素敵でした。
ひとみちゃんの、美術にのみ関心があったところから興味が広がっていく過程も自然でここちよかったです。
(11)烏代 杳さん/それは平成最後の夏のことだった。
空アンソロにつづいて作品をお寄せいただけて、本当に嬉しいです。
作品、やっぱり面白かったです。あらすじで抜粋した台詞のところが特に好き。
二人のやりとりが現代っ子らしくて、じれったい感じににこにこしてしまいました。二人の今後をひきつづき応援したいです。友人たちもこんな目線で二人を見ているのかな、なんて。
平成最後の夏という冠言葉を掲げて、宣って、というあたりが今回の企画に近いものを感じて勝手に楽しかったです。
(12)剣持みけさん/向
私のミスなんですが、今回のご応募にtwitterアカウントの記載を必須にしていなかったので、作者さんがこちらにお気づきになることがあれば連絡先を教えていただきたいです。直接感想をお伝えしたい。
ヒマワリ病という奇病、その症状に惹きつけられて、けれど主人公の初期と同じように、そう惹きつけられるのは軽視しているからではないかとか、緩くさまざまなことを考えさせられました。
症状がひどくなっていく様、けして良いことではないのだけれど描かれ方が不快ではなくて、寧ろ雰囲気が好き。
四人に一人かかってしまう病、きっとどこかにも今にも発症しそうな人がいるだろうな。読後感を味わう、好きな作品でした。
(13)真北理奈さん/天翔けるグラツィア
圧倒的な才能を前に打ちのめされる瑠花と、あくまで無邪気に、相手のことを思う流歌くんの会話に考えさせれました。
『平成最後の夏』というキーワードには関係ないような、
かえって「神秘が起きる訳ではない」何でもない日常であることに意味があるような…。
二人の名前が同じであるのが良いなあと思いました。
(14)藤原蛍さん/Hate me in the summer.
藤原さんの作品、タイトルもさることながら、全体の雰囲気が素敵でぐっと引き込まれました。
読点で繋がる文章たち、とくに「平成が終わっても世界が終わっても、君だけを想い続ける僕のことをどうか恨んだままでいて欲しい」という一文がとても好きです。好き。(二度言う)
(15)八重土竜さん/夏の影
作品、最初は「三年に一度人が死ぬ。」にどきりとして、不穏な雰囲気にいつ不幸がやってくるかとはらはらしたのですが、後半の「彼」の良い意味で気の抜ける、やさしい話しにほっとしました。前半後半のギャップが良いなあと。
二人のやりとり、軽妙で「もう社会人だよ。冷静になって」「暑いから冷静になるのは無理」が特に好きです。
ずっと聴いていたい感じでした。
(16)神灘さん/溟海よりきたる
作品、タグにホラーとあったのではらはらしながら読みました。
作品世界を醸成する神灘さんの力がすごい。空アンソロのイラスト世界はあんなにポップで明るかったのに…(びびりつつ)
なので後半、りっちゃんにまた出会えてよかった…と心から安堵しました。
「お風呂には入れた方がいいよ。プールも」という台詞がやさしくてぐっと来ました。
友人たちが皆いいやつで、作品の冒頭がまとう恐ろしさとのバランスが絶妙でした。
(17)ひざのうらはやおさん/夏、平成、「あたり屋」
タイトルの「あたり屋」って何だろう?と思いながら読み始めたのですが、自分が子供のころに友達と駄菓子屋を目指したときが懐かしくなりました。
「銅貨っ子」や「アイスキャンデー」という言葉たちに、ノスタルジックを感じつつ、それでも「過去の物語」ではなく架空の世界の現実として捉えるという、不思議でありながら心地よい感覚で読み進めました。
おばあちゃんに親近感がわきすぎて、最後の二人の様子、決意がつらかったです。
それでも清涼さがあるのは、文体のまとう雰囲気かなと思いました。
(18)不可思転さん/弔いについて
一言でいうと、面白かったです。
語りのひとつひとつが心地よくて、ああこの主体はこういう言葉選びを、比喩をするんだと思いながら読み進めました。
死にゆく平成が静かで、周りの皆が気にも留めず忘れていくのが自然だというスタンスでいるなか、涙を落とす語り手の姿、そしてそれでも何も言わない平成が、暗い中で落ちる線香花火のようで美しく切なく感じました。
「絶滅するものに疎いよね、人間は。」といういとこの発言が強く印象に残りました。
ああ私も疎いんだろうなあと。
(19)花音さん/今年の夏の終わりも
作品、カクヨムのあらすじに糖分多めとあった通り、甘い!と思いました。笑
甘くてかわいらしい、砂糖菓子のような、夏のさわやかさも感じられたのでラムネのような…。
文章から伝わってくるやさしさ、甘さがここちよかったです。
平成最後だから、と言ってとりつけたデートなのに、来年もきっとこうして出かけるだろうなと思う「私」がかわいかったです。企画ページで抜粋したところがいっとう好き。
(20)鶏林書笈さん/今年の夏こそ
正直なところ、私の企画にこういう作品が来るか、と驚きました。
読めば「平成」という元号の最後をテーマに据えた企画として、納得だなあと思います。
短い文章の中に、静かな悲痛さが凝縮されているなと感じました。
(21)せらひかりさん/夏がいく
私事ながら自分の祖母を思い出してしんみりしました…。
「ばあちゃん」のやさしさと、だからこそ「もうここには来るな」という言葉がぐっと来て、この雰囲気に引き込まれてしばらく戻って来れないような感じがしました。
冷蔵庫のスイカや画面の荒れた野球中継…作品を構成するひとつひとつが良かったです。
ずっと帰省できなかった、祖母に顔を見せられなかった後悔で毎夏来てしまう、でも来年はきっと辿りつけないのだろうなと勝手に考えて切なくなってしまいました。
(22)狐塚あやめさん/願いの先
タイトルを拝見して、読みはじめて、苑ちゃん!と嬉しくなりました。(空アンソロ)
彼女が純粋に友人たちと仲を深めていることに嬉しくなりましたし(敬語も外れてきましたし、名前呼び!)
待つ間の暑ささえ夏の思い出と捉えられるほど楽しみにしていることにほっこりしました。
簡単に言ってしまえば「待っているだけ」のお話なのに、こんなにもほっこりエピソードになるとは…。
一年越しに苑ちゃんに出会えて、その成長を見ることが出来て嬉しいです。
(23)こうあまさん/そこから、あなたと
相変わらず、こうあまさんの生み出す雰囲気が素敵でしみじみ浸りながら読みました。
こうあまさんの作品の、登場人物たちが誠実であろうと心をくだき言葉を大切にする姿勢がとても好きです。
口実として「恋人」となった二人が、それを互いに心地よくて、好きだから一緒にいようと確認し合い、結び直したのがぐっと来ました。
(24)たつみ暁さん/夏の終わりの夜の夢は
面白かったです。
「あたし、キレイ?」という冒頭に口裂け女がすぐに思い出されて読み始めたところ、本当に口裂け女で、しかも「私」が怖がるどころか泣き始めてしまって…。
「平成も、終わるのに、あなたがまだ、頑張って、らっしゃるのが、嬉しくて」「ッハアーーーーーー!?」のところでまず笑いました。
予想を裏切る展開が面白く、しかも口裂け女…もとい、お姉さんがとても良い女で、読んでいて気持ちよかったです。
ラムネを飲みながらお姉さんに励ましてもらうような夜が、私にもあったら良いなあと思いながら読み終えました。
元気が出る作品でした。
(25)いろり。さん/🎈
もとは何だったのだろう?と気になって引き込まれるコラージュの、鮮烈な色合いが好きです。
タイトルが赤い風船の絵文字なのですが、どういう意味合いが込められているのでしょうか。
(26)梔子花さん/近くて遠い街
写真とともに、日々を追うようにして読む作品、とても引き込まれました。
彼女を慕うものの受け入れてもらえるだろうかと不安に思う気持ち、実家での母親を疎ましく思う気持ちや妹との会話など、
ほどよくリアルで地に足のついた感覚が心地よかったです。
「僕」を含め少しずつ変化していく家族の様子と、最後に女性からの返事が来て作品世界が一気にぱあっと明るくなる構造が気持ち良かったです。
(27)穂高絢乃さん/2018年8月31日
作品、面白かったです…!
はじめは高校生くらいの男の子たちがだべっているのかな?と思ったのですが、読み進めるうちに長野オリンピックや関ヶ原など…気になるワードが出てきて興味を惹かれ、相変わらずゆるい会話に混じるその雰囲気が絶妙でした。
二人の会話のテンポがよかったです。
(28)藤原湾さん/夏、捨てたものと拾ったもの
今回の作品もとても好きでした。
「あまり交流がない」とあらすじに書いてあった通り、二人の距離感が「級友」という感じでかえって心地よかったです。
何でもかんでも話す親友でもない、近すぎないからこそ少しは話せてしまう、ほどよい距離感。
未央ちゃんも良いのですが、巾木さんが好きです。
語り口は淡々としているようだけれど、絵に向き合う時はその情熱をキャンバスに込めるのかな、などと想像してしまいました。
(29)深山白さん/うたかたの青い夏の日思い出す僕は/私は息をしていた
短歌それ自体で素敵ですし、それが各章タイトルのように挟まれるのがしみじみ良かったです。
「僕」と「私」の視点が交互にくるのも、僕の一方的な思い(初恋?憧れ?)や、彼女の田舎を嫌う視点のみになることなく、多面的にみられていいなあと。
迷路も夜の部屋も、どの場面もどきどきしました…!
「僕」からみた「私」があまりにも憧れの年上美人なのに、私視点になると人らしく地元への不満を抱えていたり反省していたり、で、それがギャップのようにも思えてぐっときました。
(30)困惑さん/平成の蝉は死んだ
作品、1ページ目からぐっと引き込まれました。
続いて2ページ目、そこかしこに赤を纏った「酔った君」のあざやかさに対して「僕」の淡々とした感じ、
それこそ平成に酔ったようなひとを冷静に見つめる目線がとても印象に残りました。
手を合わせる先のヒマワリが枯れてしまっていて、その土の中には一体何があるのか…
蝉を供養しているのか平成なのか、それとも…?と考えてしまってどきどきしました。
「僕」の衣服が汚れているということは「僕」が作ったものなのでしょうか。
決して長い作品ではないのに、端的な言葉の中に奥深い世界が詰まっているなあとしみじみ感じました。
(31)佐々木海月さん/lycopersicum
作品、やはりとても好きでした…!
くらげさんのお話、アンソロ水、空アンソロと拝読して、今回も好みであるだろうと期待して読んだのですが、
やはりその文章の醸し出す雰囲気がとても好きでした。ありがとうございます!
長期休み、あるいは「最後の夏」なんていうと特別なことを求めがちですが、
この二人のように穏やかに淡々と過ごすのだって一つの過ごし方だなと、しみじみ考えてしまいました。
それからトマトラーメンを無性に食べたくなりました。笑
(32)ミズキカオルさん/夏終わる、片道切符で旅に出る
タイトルも、添えられた一言もそうですが、作品それ自体もどこを見ても素敵です。
吊革の形のかわいらしさとつやっと感、窓の外の丁寧なシルエットがいっとう好きです。
全体的にかわいい雰囲気ですが、二人の傷が痛々しくて、でも表情はやさしくて…。
穏やかに見えるこの時間がずっと続いて、二人がこの列車を降りた後に途方にくれたり呼び戻されたりすることがありませんようにと、願うような気持でいっぱいになりました。
ミズキさんの作品は、「ストーリー性」「物語性」などと一言で言ってしまうにはもったいないような、訴えかけてくる奥行きがとてもぐっと来ます。好きです。
(33)あじさいさん/平成の僕と平成のおじさん
「僕」が「おじさん」に容赦なく防犯ブザーを鳴らす冒頭をいきなり突きつけられて、すぐさま作品に引き込まれました。
不審者対策もばっちりな現代っ子らしいところとか、でもアイスには弱い子どもらしいところとか、
好感のもてる「僕」と「おじさん」がだんだんと距離を近づけていくところが読んでいてとても心地よかったです。
大人との良い交流…とほっこりしました。そしてだからこそ、後半とのギャップに打ちのめされて、あじさいさんの手腕に舌を巻きました。
前半の明るさに好ましさを覚えるほど後半がしんどくなるという…。
「おじさん」を一転反面教師のようにして成長した「僕」が、それでも最後にはお人よしに、身を挺して男の子をかばってしまう。
見捨てる「僕」ではあってほしくないと思いながらも、それでも短く連なる言葉たちが胸に迫るのを感じました。
最後の「それでも、この空だけは変わっていなかった」という一文が好きです。
(34)月島あやのさん/最後の夏よ!僕を助けて
絵柄と作風がとても趣深くマッチしていて、読んでいてとても楽しかったです。
細かいのですが一ページ目から、お酒の缶のうつくしい形状と、あっこれスプラトゥーンでは…!っていう分かる人にだけ分かる感じがいいなあと思いました。笑
ポップに思える「最後の夏よ!僕を助けて」というタイトルから「ゲームを引退する」というちょっと寂しい発言…なんだろうと思ったら、
ゼクシィを私が買ってあげたいと思うくらいハッピーな話でほっこりしました。
「すごいね平成最後の夏 嬉しすぎて、もう…」と言いながら背中に顔を預ける女の子のしぐさがとても可愛いです。
顔を伏せてからの満面の笑みが刺さりますね。
(35)汐木カチヤさん/夏は人の夢をみる
とても好きなお話でした。
まず「彼女」の人柄が素敵で、おだやかな「僕」の語りや、語られる数々の夏の要素とともに、とても心地よく読み進めました。
そうして、花火を見るのに良いスポットの下りなど、「僕」が既視感を覚えるあたりで私自身も「あれ?」と思い、
冒頭の心地よさ、夏の魅力をただただ味わうところから疑問を抱く流れまで、まるで主人公と同じような感覚を味わっていることに、汐木さんの手腕を感じました。
地の文で語られる夏ひとつひとつが素敵で、だからこそ最後に幻想から抜け出そうとする「僕」の姿が良かったです。
「死ぬには佳い日だ」と、最後まで悲観することのない「彼女」がやはり好きでした。
最後に背中を押してくれる場面も好きです。
(36)うさぎ少女さん/後顧の憂い
ぐっときました。
最初は、主人公は何に悩んでいるのだろう?と思いながら読み進めていたのですが、
「君」が現れたあたりで作品にぐっと引き込まれました。
「私」が嬉しく感じているのと、対して「君」がつれない様子なのと、その温度差がなんだか心地よかったのですが、
「私」も「皆」と同じであることに気づいてしまって、自己嫌悪して。
「君にも後悔なんて感情があったなら。」「一度転がり出した石を止まらせない。私の思いを言ってしまいたいのだ。」など、
「私」のひとつひとつの語りの流れがすごく好きです。
感情の発露が、作品の研ぎ澄まされたような雰囲気を作り出していて良いなあとしみじみ思いました。
こうした企画を立てた私は、夏のことをどう思っているんだろう、
夏は私のことをどう思っているんだろう(特別視しているのはこちらだけなのだ)などと、引き寄せて考えてしまいました。
(37)秋助さん/冬眠、遠雷、秋を待つ
面白かったです。
ヨルシカさんのオマージュなのかな、「夏」がテーマの作品なのに冬眠→秋を待つ?と不思議に思いながら読み進めたのですが、夏が来ないという世界観がぐっときました。
作品ラストに向けて、胸に迫ってくるしずかな切なさ、雰囲気が素敵でした。
「続いてのニュースです。深刻な寒波が続き、この国の四季は春秋冬にーー」で終わるラストが好きです。
あととても個人的なのですが、「どこにもない夏を探している」というタイトルで歌集を作ったので
「どこにもない夏を探していた」という一文にも共感しました…。
残念ながら文フリにはいけないのですが、「オリオンズ・エンデヴァー」も手に取ってみたいです。
(38)翳目さん/どの夏も行方知れず
作品、エモいと言ってしまったら語彙がなさすぎて恐縮なんですが、エモすぎてくりかえしくりかえし読みふけってしまいました。やはり翳目さんの短歌、大好きです。
連作になったときにますますその真価というか、相乗効果で圧倒的な雰囲気をつくりだしているように感じます。
いくつか拝見したことのある歌も見かけて高揚しました。
特に「いつだって送る側かよ ジーンズのまま泳がれる浅瀬になりたい」「八月の三十二日の証明をできぬまま夏が終わるよ、平成」が好きです。
自分にはけして詠めないこの感情、何だか羨ましくさえ思ってしまいます。
ありがとうございました!