0504 短歌
2018年4月の短歌、15首。
春風がひときわ強く吹き四月、誰もかれもが輪郭になる
もう何も見たくないのと伏せられた目元に淡い花弁がとける
「ほんとうは、」飲み込んだまま動けずにもうすぐ地上へ着く観覧車
透明な立方体で君の吐く「どこにも行けやしない」って嘘
週末のカフェでひとえに溶けていく氷のように僕はなりたい
またね、って振りかけ握る手のひらに今年最後の春の花びら
うす闇に輪郭線の終わる音、さよならさえも言えずに溶ける
手を繋ぐこともできない君といて宇宙遊泳みたいな恋だ
午前2時気泡の上る音だけが反響しおやすみ、人魚姫
春風の向こうに幻視して何も痛まないって振りをしていた
ただいま、世界。フローリングへ片足を落として今朝も小さく呼吸
あと一度口を開けば泣きそうで瞬きしないようにしていた
電線が絡まり合って解けずに一番星はこの手に遠い
薄氷も鏡のように踏み抜いて貼り付けた笑顔ならもう要らないや、
踊り場に差し込む薄明光線も全部が眩暈みたいに(終われ、)