0303 短歌


2018年1月と2月に詠んだ短歌、45首。

特に並び替えたりはせずそのまま放り込みます。せっかくなのでnoteに色々残していこうかなと思った次第。

好きな歌があったら教えてもらえたら嬉しいです。


2018.1

真夜中のパレード、遠くガラス越し光の粒を瞼へ受ける

Fly me to the moon,風を受け今12時を告ぐ時計台

鍵盤を叩く三十一音がもし音楽に聞こえたならば、

何もかもどうでも良いって冷めた瞳のワルツの裾に見惚れてしまう

十帖に夜が溢れる星たちに溺れてこのまま目覚めたくない

助手席で君が小さく口ずさむ曲の名前が思い出せない

シーリングライトの白をやわらかい救いに例えかけて噤んだ

突然の豪雨のように待ちわびるピアノを浴びて立ち尽くす夜を

眠れない眠りたくない朝焼けが水平線を灼く音がする

スマホから溢れた音が天井で弾けて雨に変わって欲しい

例えばさ、よく晴れた日に屋上でひとり燻らす煙のような

シトラスの掠める輪郭/単色に束の間竦む/ノイズ/雑踏

カンカンと外階段の鈍色を鳴らす一度も振り返らずに

灯台を見つめ眠気を焦がしてた波止場で膝を抱えて僕は、

夢で会うばかりの君の表情が(どうしてだろう)思い出せない

吐く息が白く染まって指を指す道路の先の明けの明星

風がない味方もいない気になって立ち尽くしている昼夜の間(あわい)

風が前髪を浚う中ささめいて「今から僕ら共犯者だね」

音よ今すぐに私を包んでよ君の奔流しか触れたくない

「地上行きエレベーターはこちらです」ひとりぼっちで聞くアナウンス

厳かに開く自動ドア、まるで初対面みたいに冷気が滑る

踊り場が落ち合い場所で先に着いた日はひとりでワルツを回る

ねえ準備、出来た?弾丸、懐にペーパーナイフ、そう、忘れないで

とびきりにやさしい歌を口ずさむ眠れぬ君の手をひきながら

眠れないひとの両手に星屑をそっと握らす役を受けたい

夢うつつ、蝶を惑わす重ね塗りされたばかりのネイルポリッシュ

星空が私の上で一周し唇だけのおやすみは愛

一曲のループで時が過ぎていくハーバリウムの静が愛しい


2018.2

「ハロー」って簡単なのよ踏み出して「こんにちは」より音が少ない

「ドアが閉まります」ホームに降り立てば火照った頬を夜風が浚う

幸せになれと言葉をかけるのは背中、影にも聞こえるように

指先を掬うことすら出来なくて(幸せだったって言ってよ、どうか)

今ここがスタートライン、ざりざりとスニーカーにて引いたばかりの

僕のいないところで君は救われて手紙を書くのも忘れてほしい

ねえクジラ、眠れなくてさ君のそのヒレと右手を繋いでて良い?

眠らずにいられたらなと呟いた、ネオンテトラの揺らぐ暗室

「またいつか会えたらまたね」緩やかにエレベーターの扉が閉まる

「次は《月》。お出口は右、終点です。お忘れ物にご注意ください」

満月をダンスホールに寂しさを伴奏にして兎とワルツ

「夜」と「寄る」声を出さずに唇を形作ればあえかな救い

誰かではなくて他でもない君と気づいた道を照らしたいのは

これ以上僕を嫌いになる前にエアーポンプを止めて水槽、

車窓から光の粒が後方へ去るのをひとり見ていた(終電) 

今はもう優しい歌も要らないな、十の指にてミュートをかける

満月を背景にして立つ君の「もう泣くなよ」に思わず縋る


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