0829 感想

里見透さん(‪@ThorSatomi‬)著『外つ国のゲンマ』を拝読しました。

文庫サイズ600円。
COMITIA125で購入しました。

──これは、己を取り戻すための物語。
『神の声』を奏でるというパイプオルガンの響く国、オルガニストを志す青年トビトは、海上民(アドラハシス)の襲撃で右足と夢を失う。茫然自失のまま生きていた彼は、ある海上民の娘と出会い、嵐に身を投じていく。

(オビ裏あらすじより抜粋、綿津見が多少改変しております)

※以下、未読の方にネタバレを含む可能性があります。お気をつけを。


はー…面白かった…。
するすると読みやすく、何よりクライマックスに至るまでの気持ちの高揚がすごかった。ラストに鳥肌。
パイプオルガンの壮麗な音楽を、全身に浴びているような気持ちになった。
無音の読書に、音が、熱がある。

作者の里見さんは空アンソロを企画した際に知り合った方で、その作品(ヨミゴト)によって魅力ある文章を書かれる方だと存じ上げてはいたのだけど、一冊の文庫本という自由なフィールドにおいて、よりその真価が発揮されているように感じた。
文章も世界観も構成も、重過ぎず(読み手を置いていかず)分かりやすく、かと言ってふわふわした中身のないものでは決してなく、ちょうどいいバランス。
トビトの心情の変遷が良くて、特に一番の大声を挙げる場面がぐっと来た。
はじめはずっと憂鬱で、「どうせ残り3日」という思いに囚われていたのに。

あと先輩、暴力は良くないけれど後半好き。
演奏の交代を提案する遣り取りが良かった。
ばれたら結構問題になったんじゃないのかな。

それからこの御本、装丁がとても素敵。
読みやすいのは勿論のこと、ハイセンスなトレペオビとか、あとホジョイさんの表紙絵、カバー下、扉絵が趣あって好きだった。
挙げるときりがないけれど目次も。(つまりは全部)
デザインは里見さんなのかな…?
いずれにせよ、クオリティもさることながらイラスト作品の、里見さんのお話との親和性が高すぎる。
カバー下、読後に再度見たときの感動…泣き笑いかわいい…。
カバーを外す習慣があって良かったなと。

読後、幸福に満ちた気持ちになれた。
2人の今後に幸あれ。

また、里見さんの添えてくださったカードで知ったのだけど、この御本は『鳴き沙のアルフェッカ』同様、かんむり座という実在の星座をモチーフに書いた異なる物語とのこと。
これはそちらも手に取らなければならないな、と思いました。
面白かったです。
ありがとうございました。

通販
https://twitter.com/thorsatomi/status/1031745548695420929

(追記)
いただいた番外編ペーパーも読みました、2人のやりとりがかわいい。
イナンナちゃんは意外に、3つもお姉さんだった…。
トビトが弟ポジションを脱するのも楽しみです。

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