0201
11月、12月、1月の短歌、42首。
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春が来るまで君のこと忘れるよ悔しかったら夢に出てきて
音もなくかかる叢雲、それさえも込みで愛しいなんて言えれば
指先に星を灯して、灯台になって佇むから見つけてよ
緑青をしとやかに濃くする慈雨があなたの肩へ降りますように
立ち眩むほどに鮮明、輪郭を曝してひとり踊ってあげる
この熱も伝わらなければ要らないな両手のひらで視界を塞ぐ
もう何も思い出さなくたって良い深夜一時に鳴るリノリウム
眠れてる?返事は別にいらなくて寧ろ無いなら安心だけど
涙ひと雫くらいは差し上げるそれであなたを満たせるのなら
リフレインする音たちよなべて手をとって土星の環にしてあげる
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花に嵐、疾き強風に取り巻かれもう何もかも忘れても良い
指を折り数えてふたつ足りなくて空を仰いだ(一年経ったよ)
海のない場所に暮らしてシーリングライトの白がひたに眩しい
サイリウムを好きな色へと切り替えてネオンテトラのように泳げよ
水槽に足から落ちて希釈して叫び出したい思いも全部
スピーカー越しに伝わる音たちが端から希釈されていたとて
深夜一時、周波数さえ知らせないラジオの一曲目を見繕う
水槽に夜を集めてあなたにはネオンテトラの役をあげよう
親指と人差し指で輪をつくる中に収めた月の目映さ
「何か言った?ごめんね考え事してた」僕らのエンドロールの曲を
ぴかぴかと光るお星さま窓越しに夜空へそっと返すね、おやすみ。
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やり過ごすためのカフェイン、ガムシロの数を考えあぐねる振りを
月に眠るうさぎよ僕の信号が見えたら一度回ってほしい
各々のエンドロールがある夜に陸橋で見る川の眩さ
一輪挿しへと口づける横顔がいつかこちらを向けば良いのに
さよならのたった四音が言えなくてあと何本を消費するのか
紫煙纏う肩甲骨が痛むからきっと明日の今ごろ飛べる
飛び降りる着地地点の鍵盤がどれが良いかは選んで良いよ
ゆっくりと息を押し出し肺のなか空にしたなら踊り場を出る
踏切が鳴る/わざとだと告げたならあなたは泣いてくれるだろうか
利き手ではない方の手を伸ばしてよそこに光を載せてやるから
「流れ星」言うなり君が組む指をほどいて全部叶えてやりたい
7cm稼いだ踵を振り下ろす全部に別れを告げるみたいに
銃声が聞こえぬように引き金を引く前に君の耳を塞いだ
生きていける?生きて欲しいの間違いで全部願望じゃ、話、聞いてる?
ステージのあなたと一瞬目が合った、そんな錯覚さえも愛せる
君というフレーズが出るたびに僕らを指さしてくれるあなたが、
せいいっぱい掲げたピースサインがさ君の背中を押せてたら良い
灯台が終わるその日を知ったとて今夜は照らされるし明日も、
心中に立つ灯台よ、今宵また昨夜と同じ光を撒いて
いつだってさみしいのだとエレベータの▽をまだ灯らせたまま
メリーゴーラウンド/君に追いつける日など来ないと知ってしまった
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