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世の中が回っていかへん
全国から女性経営者が一堂に集うイベントが琵琶湖のほとりの街、滋賀県・大津市で開催され、私もすこしだけ関わらさせていただきました。
歓迎前夜祭は湖上に映える花火がサプライズで打ち上げられて締めくくられます。
準備に何年もかけたイベントのスケールに圧倒され、祭りの余韻が冷めやらぬ中、旧友へ会いに行くため、浜大津と呼ばれる街かどにあるスナックを訪れました。
電話や年賀状で何回かやり取りはあったものの、リアルでの再会は実に30年ぶり。
ママがつくる濃い水割りの塩梅も良く、昔話に花が咲きます。
そのうち、この30年間でそれぞれのキャリアの中で遭遇した「理不尽なできごと」について話題が及びます。
ひととおり、仕事上の話、プライベートの話などなど、お互いに酔っていますので、次から次に話が尽きません。
「二人ともタイヘンだったねぇ」
カラオケを歌うのも忘れ、お互いにうなずきあっていました。
そこで、ちょっと質問してみます。
「その理不尽さは、どうやって乗り越えられてきたのでしょう?」
「せやなぁ~」
彼は天井を見つめました。
「理不尽なことがないと、世の中が回っていかへん時もあるからなぁ・・・」
「なるほど!世の中が回っていかないからと、ふん切ってしまうのは気づかなかった視点だ」
「せや!」
理不尽なことが起きれば、なんとかして挽回しようとか、留飲を下げてやろうとか、身に誤りがないことを知らしめたいと躍起になって、もがきまくったりします。
一方で、いやいや、自分の至らなさでそうなったのだから、それはそれで仕方がないのだろう諦めたりもします。
やがて、強い想いがこの二つの中でグルグルと回って、いつまでたってもそこから抜け出せなくなることも。
しかし、
「理不尽さを受け入れないと、物事が回っていかない、収まっていかない、不完全な世界に、あえて生かされている、試されている」
そう腹の中にドンと収めると、この輪廻の中から一歩抜け出せるような気がしました。
彼と別れて、ホテルに戻る途中、宵の口の湖畔で繰り広げられたサプライズ花火の喧騒はとうに収まっていて、
「今宵、新しい気付きをひとつもらったなぁ」
と、人気のない歩道をゆっくりと歩きながら、静かになった夜空を見上げると、雲間から星がのぞいていました。