R6予備論文商法 再現答案


自己評価:E(解答時間75分)


第1 設問1(1)
1 本件株式の買取りは、Dのみを対象として行う、特定の株主からの自己株式の取得に当たる(会社法(以下、法令名略。)160条1項、156条1項)。かかる自己株式の取得においては、156条から160条までの手続及び株主総会特別決議(309条2項2号)が必要となるところ、甲社は必要な手続を経て、株主総会決議により本件株式の買取りの決議を行っているから、手続違反はない。

2 もっとも、「株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額」は、「分配可能額を超えてはならない」(461条1項3号、157条1項3号)。本件株式の買取りの総額は1000万円であり、甲社の当時の分配可能額は800万円だったから、「分配可能額を超え」るものとして、財源規制違反となる。

3(1)では、財源規制違反があった自己株式取得の効果をいかに解するべきか。
(2)財源規制違反となる自己株式取得を決定した株主総会決議は、「決議の内容が法令に違反する」ものとして無効(830条2項)となる。そうだとすれば、かかる決議に基づいてなされた自己株式の取得も無効と解するのが自然である。
  したがって、財源規制違反となる自己株式取得は、絶対的に無効である。
 (3)本件株式の買取りも、財源規制違反に当たり無効である。

4 以上から、本件株式の買取りは無効である。


・手続違反は書く必要多分ないけど、その後の財源規制違反で株主総会について論じるから迷うぐらいなら書いちゃえと簡単に指摘した。
・309条2項2号探せたのよかった。条文摘示しまくる意識この辺はよかった。
・本件株式買取りの日時とその時の分配額まで丁寧に事実摘示するべきだった。この辺が雑になったの反省点。現場だとやっぱり焦っちゃう
・財源規制違反の論証は吐き出せた。ただ手続違反が相対的効果で財源規制違反が絶対的効果だっけ?と迷った。暗記はしてたけど理解は全くできてない、低く評価されそう。


第2 設問1(2)
1 Aの責任
(1)Aは、本件株式の買取りを決議した株主総会の「総会議案提案取締役」に当たるから、甲社に対し、「交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭」を支払う義務を負う(462条1項2号イ)。
(2)Aは、「その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した」場合、上記支払義務を免れる(462条2項)。
 Aは甲社の代表取締役を務めており、甲社の経理及び財務を担当しているから、計算書類の作成と分配可能額の基礎となる会計帳簿の作成についても、これに誤りがないか確認する義務があった。にもかかわらず、AはこれをGに任せきりにし、自ら確認することを怠っているから、上記義務違反が認められる。
 よって、Aは「注意を怠らなかった」とはいえない。
(3)以上から、Aは上記責任を負う。

・改めて振り返ると条文の引用の仕方とかこれでいいのかなとか思う。
・注意を怠ったのがどの時点なのかよく分からなかったけど、問題文の事実からGに任せきりにしたことが義務違反になると考えた。あんまり点数入らないかなと思ったし、この辺は正直テキトーに条文通り処理した

2 Dの責任
 Dは、「金銭等の交付を受けた者」として本件株式の買取りにより得た金銭を返還する義務を負う(462条1項柱書)。なお、甲社自ら交付をしておいて返還請求をするのは、不当利得(民法703条)の趣旨に反し許されないのではないかとも思われるが、返還請求ができないとすると、違法状態を継続させることとなりかえって不当な結論となるから、やはり返還義務を負うと解するべきである。

・句読点多すぎて読みにくい。答案いつもこんな感じ、文章力欲しい
・不当利得じゃなくて不法原因給付だった、このミス痛い。別に書かなくてもいいかなと思ったのに調子乗って書いたのがほんともったいない
・これ書いてて463条1項の存在に気づいたが、これ気づける人は試験時間が自分の2倍ある人としか思えないのであんまり気にしてない。

3 Fの責任
Fは、甲社に対して任務懈怠責任(423条1項)を負うと考えられる。
 Fが「任務を怠った」といえるか。Fの職務は会計監査であり、その業務は会計帳簿が適正に作成されたことを前提として計算書類と会計帳簿の内容の照合を行うことに限られていたため、会計帳簿に誤りがあるか否か確認することは業務内容に含まれていなかった。よって、「任務を怠った」とはいえない。
 以上から、Fに任務懈怠責任は認められない。

・設問が「どのような責任を負うか」だからFが責任を負うのは間違いないんだろうけど、設問2に時間かけたかったから簡略に記載、責任自体否定した。かなり時間に追われていたからこの選択自体は後悔してない
・計算規程?が問題となるみたいなのをTwitterでチラッと見たけど、監査役がどこまですべきなのか理解してないからここは現場での判断で正しかったと信じたい。

4 なお、AとDは「連帯して」上記支払義務を負うこととなる(462条1項柱書)。

・一応書いた。この記載はいらなかったかも。


第3 設問2
1 Eは、本件売渡請求により「不利益を受けるおそれ」があり、179条の2第1項2号に掲げる事項が「対象会社の財産の状況に照らして著しく不当である」として、本件売渡請求をやめるよう請求する(179条の7第1項3号)ことが考えられる。しかし、Eの株式の取得日は既に到来しており、AはEの株式を全部取得している(179条の9第1項)から、令和6年9月2日時点で上記請求をすることはできない。


2 次に、AによるEの株式の全部取得は無効であるとして、売渡株式の取得の無効の訴えを提起する(846条の2第1項)ことが考えられる。
(1)Aの株式の全部取得は令和6年9月2日になされたものであり、甲社は非公開会社であるから、「当該取得日から1年以内」(同条項)の要件を満たす。また、Eは「取得日において売渡株主」であった(同条2項1号)。
(2)いかなる場合にAによるEの株式の全部取得が無効となるか、「無効」(同条1項)の意義が明らかでなく問題となる。
 株式が全部取得された後は、取得した株主はこれを自由に譲渡することができるから、これを無効とすることは法的安定性を害するとも思える。しかし、非公開会社においては、その性質上、株式が多数人に譲渡されることは少なく、法的安定性を害する程度は低い。
 そこで、非公開会社の場合で、不当に株主に不利益を負わせるものであるときは、無効原因になると解する。
 甲社は非公開会社である。Aは、B、C、Dに対しては保有株式を1株当たり10万円で取得しているのに対し、Eからは1株当たり6万円として本件売渡請求をしているから、Eのみに不当に不利益を負わせている。なお、Hによれば、甲社の株式の評価額は1株当たり6万円から10万円であるから、この範囲に収まっていれば不利益性はないとも思える。しかし、B、C、Dの株式取得とEへの本件売渡請求は近接した時期でなされており、Eのみ6万円とする合理的な理由はないから、やはり不当に不利益を負わせるものといえる。
 よって、無効原因が認められる。
3 以上から、Eの上記訴えは認められる。


・取得日勘違いの激ヤバミス、設問2全落とし


<まとめ>
・設問1(2)があてはめ薄かったこと、全体的に理解不足疑われる答案だったこと、設問2ごっそり落としてること考えると、Eでとどまってほしいという印象。Fいったらおわり
・条文引用が下手な気がする。上位合格者の答案参考にして適切に引用できるようになりたい。


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