R6予備論文労働法 再現答案
自己評価:D
第1 設問1
1 X組合は、Y学園による会議室の使用拒否が支配介入(労組法(以下、法令名略。)7条3号)に当たるとして、労働委員会に申立て(27条1項)をすることが考えられる。
2(1)Y学園による会議室の使用拒否は支配介入に当たるか。
(2)各労働組合はそれぞれ団体交渉権(憲法28条)を有しているから、1つの企業について複数の労働組合が存在する場合、使用者は労働組合の権利を平等に尊重すべきである。したがって、使用者は中立保持義務を負う。
しかし、労働組合と使用者の間で取り決めがなされている場合、労働組合はこれが継続されるものと信頼するのが通常であるし、かかる取り決めが他の労働組合の権利を害さない限り、このような信頼を保護すべきである。
そこで、①使用者と労働組合の間での取扱いが継続していて、②他の労働組合の団体交渉権を害さず、③使用者が中立保持義務違反を是正する必要性がない場合には、中立保持義務違反を是正する措置は支配介入に当たると解する。
(3)X組合とY学園の間には、X組合が校舎内にある会議室を使用する場合、本件規程と異なり直前に教頭に口頭でその旨告知すれば使用することができるとの取扱いが継続していた(①充足)。
次に、X組合のみ直前に口頭でその旨告知すれば使用許可がなされることは、他の労働組合との公平性がなく、他の労働組合の団体交渉権を害するとも思える。もっとも、上記使用許可は学校運営上の具体的な支障が生じない限りでなされるものであり、他の労働組合の使用予定がある場合には、かかる許可はなされないものである。そうだとすれば、Y学園に対して学校運営上の支障が生じない限りで直前の告知による使用許可を求めることは、他の労働組合の団体交渉権を害することとはならない(②充足)。
Y学園による会議室の使用拒否は、他の労働組合との公平性を回復するためになされたものであるから、中立保持義務違反を是正するものとして必要性が認められるとも思える。もっとも、X組合の要求は、他に会議室の使用を予定している者がいないことを確認してなされたものであり、上記のように他の労働組合の権利を害するものではない。にもかかわらずY学園が会議室の使用拒否をしたのは、X組合とY学園が激しい対立状況にあったことから、Y学園に嫌がらせをすることを動機とするものである。よって、Y学園が中立保持義務違反を是正する必要性はない(③充足)。
以上からすれば、Y学園による会議室の使用拒否は支配介入に当たる。
3 よって、X組合の上記申立ては認められる。
第2 設問2
1 Zは、ビラ配布の行為(以下、「本件行為」という。)に組合活動としての「正当」性が認められ、民事免責(労組法8条)となり、Y学園による戒告処分(以下、「本件処分」という。)は「無効」(労契法15条)となると主張することが考えられる。なお、組合活動が民事免責の対象となるか明文を欠き問題となるも、肯定すべきである。組合活動も憲法28条によって保護されるべきであるからである。
2 では、本件行為に「正当」性は認められるか。
(1)本件行為はY学園内部で行われたものであるところ、このような施設内での組合活動に「正当」性は認められるか。
使用者は企業施設の管理権を有するから、施設内での組合活動に正当性は認められないのが原則である。
もっとも、ビラ配布は対抗手段としてよく用いられてきたものであるし、ビラ配布の態様が平穏なものであれば、使用者の施設の管理権を害するおそれも少ない。
そこで、①ビラ配布の態様が平穏なものであり、②使用者の管理権や業務が阻害されないときは、施設内でのビラ配布にも正当性が認められると解する。
本件において、ビラ配布の内容は部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善の必要性を訴えるものであり、特定の個人を中傷するような過激な内容ではなかったから、ビラ配布の態様は平穏なものであったといえる(①充足)。Zは教職員の休憩時間である昼休みの時間帯に本件行為を行っており、本件行為が労働時間中に及ぶことはなかった。またZは、職員室内に生徒等がいないことを確認した上で、在席している教職員には手渡しで、離席している教職員にはビラを裏返して置くことにより、ビラの内容を生徒等が見ることができないようにしている。これにより、X組合とY学園が対立関係にあることを生徒等が知ることによって校内に広まり、混乱や騒ぎを招くおそれはなかったといえる。そうだとすれば、Y学園の管理権や業務が阻害されない(②充足)。
よって、本件行為の態様の正当性は認められる。
(2)Zは、X組合の一員として、X組合の決定通りに本件行為を行っているから、主体の正当性も認められる。
(3)Zの目的は、部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を訴え、X組合に所属していない教職員に理解と協力を求めることであったから、目的の正当性も問題なく認められる。
(4)Zは、団体交渉後いきなり本件行為に及んだのではなく、部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉がこう着状態にあったことから本件行為に及んだのであり、やむを得ずに本件行為に及んだということができる。よって、手続の正当性も認められる。
(5)以上から、本件行為には「正当」性が認められる。
3 本件行為には「正当」性が認められるから、民事免責の対象となる(労組法8条)。そうすると、「正当」である本件行為についてしたY学園の戒告処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」として、「無効」となる(労契法15条)。
・全体的に論点主義的な答案になってしまった印象。
・設問1については、中立保持義務を負う→中立保持義務違反を是正する措置は原則として支配介入に当たらないというところまで論じるべきだった。ここまで持ってこれないと読み手にうまく伝わらない。
・設問2については、まず懲戒処分の根拠→就業規則に種別と事由が定められていることを絶対触れるべきだった。こういう論点主義には本当に点数入らない気がする。あと民事免責だから懲戒無効の論理正しいのかわからん。
・論点主義的答案であること、事実が全然拾えていないことを考慮すれば、D評価で踏みとどまってくれればすごく嬉しい。