斗掻圭

趣味で小説や現代詩を書いたりしています。

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最近の記事

2024年 北米で今話題の小説5選

現代アメリカでのノベルトレンド 次のコラムで詳しく扱いますが、近年の北米ではより多様性(BIPOCやLGBTQ+)を意識した作家や、SFやファンタジーといったジャンルと純文学の融合を試みる作品に注目が集まっています。 またこれまでと比べて、SNSでの反響を意識した作品が増えつつある傾向にある様です。 これらを踏まえて、今回は昨今のアメリカで流行った人気を集める小説を5つ紹介します。 1."Yellow Face" by R.F Kuang ジャンル:社会風刺、メタフィクシ

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    • 短編 星々の夜

       「で、土壇場で怖くなって逃げ出したってわけ?」そう葉子は如何にも芝居掛かった呆れ顔をつくる。  それに対し僕はグラスを掲げ「そうだよ、その通り」と返す。  「情けない」彼女はそう首を振り、続けて皮肉っぽい笑みを浮かべる。  「ウブなネンネじゃあるまいし」  僕はそれらをさも意に返していないといったふうに首をすくめ、ワインを呷る。  「別に怖くて逃げたわけじゃない。ただ少し、実際に迫られたら冷めたんだよ、冷めたんだ。それだけ」  「でもその人に送ったんでしょ、”怖

      • 短編 ケセラセラ

        自分は電波が聞こえるのだ、と尚美は言った。曰く、音波のように電磁波が音色を奏でるのだと。 「有り得ないわよ、電磁波が聞こえるなんて。」と私が言うと、「でも聞こえるんですもの。」と尚美が応える。 「人の聴覚は空気の振動を感じとるように出来てるのよ、電磁波でなくてね。電磁波っていうのは光のお仲間よ。百歩譲ってあなたの細胞が電波を感知できたとしても、それは視覚みたいになる筈。”聴こえる”なんて事にはなりっこないわ。」 そうまくし立てる私に、尚美は苦笑いを浮かべた。「ほんと紗江は理屈

        • The Stellar of Organic

          クロム骨格の非知性奴隷。合成サテンの衣を纏いてバラの花弁をまき上げる。 舞い落ちる赤い紙片を受けながら、彼女は僕の肩に頭を乗せ、僕は彼女の肩に手をまわす。 多角スクリーンに映るミルキーウェイ。小波が角からよせては引き、寄せては引く。 波の打ち寄せる度に星々を拭い去り、砕けた飛沫が新たな星となる。 クロム骨格の非知性奴隷が華麗に舞う。カーボン・アクチュエーターの甘美な響き。 人間には不可能な繊細さ。レースを踊らせ空を掴む。 クロム骨格の非知性奴隷。合成サテンの衣を纏