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【超能力捜査】妻だけが分かる言葉を伝える夫の霊
1997年3月1日。アメリカ、ペンシルベニア州の小さな町でシェフをしているダリル・コザートは、土曜日の夜、仕事の後にバーへ向かう。しかしその後、家族の元へ戻ることはなかった。
ダリルは妻ジャネットに、仕事の後にバーで友達数人と会うと伝えていた。家族思いのダリルは友達と出かけることはほとんどない。
翌日になっても帰らない夫に、何か良くないことが起きていることを察知したジャネットは捜索願を出す。
警察によると、夫や妻が連絡なしに帰らないと配偶者が捜索願を出すことは珍しくないと言う。しかし多くの場合は48時間以内に帰ってくる。自分の過ちを認めなかったり、仲直りを必要とすることもあるが、たいていは戻ってくると。
警察に言われたのは、大丈夫、おそらく飲んだ後にどんちゃん騒ぎでもしたのだろうということ。
ジャネットは言った。
「違います、夫はそんなことは一度もしたことがありません。仕事に行ったら真っ直ぐ家に帰ってくる人なんです。」
警察は家庭での問題や夫婦の関係を把握しているわけではない。行方不明者リストに載せるのには72時間かかると言われた家族は、自分達の手でポスターを作り始める。
ジャネットの母は、そのポスターを配るために、超能力者、メアリー・エレン・ロドリゲスが経営している売店に立ち寄る。娘婿が行方不明になってから2日が経っていた。
メアリー・エレンはその時のことを語る。
「彼女にポスターを手渡されました。それに触れた時、ダリルのエネルギーが突然現れたのです。彼女の横にダリルが立っていました。彼は手で壁を押すような仕草で、『ドアがどこにあるのか教えてほしい、僕が戻れるように。戻らなくちゃいけないんだ。』と訴えていました。彼女にダリルが亡くなっていることを伝えました。」
彼女はこの奇妙な出会いのことを娘に伝える。
ジャネットは、その見知らぬ女性がダリルの居場所を教えてくれるかもしれないと、母親と共にメアリー・エレンの売店へ出向く。彼女が店内に入るとメアリー・エレンはジャネットを抱きしめて言った。
「I am sorry、I am sorry」
彼女はそう何度も繰り返すと、これを言っているのは自分ではなく、ダリルなのだと言う。ダリルが自分を通してジャネットに伝えているのだと。
ダリルは、戻る方法を探しているけど戻れない、申し訳ない、とジャネットに伝えようとしているのだと言う。
メアリー・エレンは、ダリルは銃で撃たれたが、首にロープの跡があることを伝えた。
彼女は2つの世界の連絡役になっていて、ダリルはジャネットに「ゴースト」と伝えてほしいと言う。ジャネットに、「ゴースト」と言う言葉に心当たりがあるかと聞くと、彼女は驚いて口に手を当てて言った。
「はい。私たちのお気に入りの映画でした。」
ジャネットは言う。
「その言葉を聞いた瞬間、戦慄が走りました。その瞬間、彼だと分かりました。これは本物なのだと。でも同時に、どれだけ彼に戻ってきてほしくても叶わないのだとも・・。」
同日、地元の警察官ジェリー・スミスが売店を訪れた際、メアリー・エレンは行方不明者のダリルは既に亡くなっていることを伝えた。
彼は撃たれて、首の周りにはロープかチェーンがあり、沼地に横たわっているビジョンが見えるというメアリー・エレン。
どうして分かるのかとスミス警官が聞くと、隣にダリルが立っていると言う。最初は冗談かと思ったが、彼女の真剣な表情を見ればそうでないことが分かる。
彼は対処に困った。超能力者が見えるビジョンは証言として使えないからだ。しかし、長年経営者として良い評判を保っているメアリー・エレンへの信頼性から、その情報を担当警察署へ共有することにする。
スミス警官は、「飲んでもいないし薬もやっていないし、自分がイカれてとは思わないのですが・・」と前置きし、メアリー・エレンから聞いたことを伝える。
担当署は「イカれてますね」と言うものの、その情報を書き留め、メアリー・エレンの元を訪れた。彼女は、ダリルが感じていること全てを感じると言う。彼女は銃弾を感じていた。
彼女からの情報提供にも関わらず、担当署は家出以外の可能性があるとは思っていないようだった。
ジャネットは夫のことを語る。
「彼はとても素晴らしい父親だったんです。子供達をとても愛していて、息子と一緒にフットボールをし、娘に自転車の乗り方を教えていました。」
メアリー・エレンは、ダリルから、諦めないで、自分を見つけてほしいと、懇願しされているように感じていた。
ダリルは頻繁にメアリー・エレンの元へ現れた。
「毎朝、州をまたぐ橋を渡る度に、彼はバックミラーを下へ傾け、ミラー越しにこちらを見ていました。私が『グッドモーニング、ダリル』と言って、それが日課となりました。」
ダリルが自分に何かを伝えたがっていることは感じていたが、必ずしもその意味が分かるわけではない。
ダリルはメアリー・エレンの耳元で、「It’s fickle, It’s fickle!」と叫んだ。
fickleには、「気まぐれ」という意味がある。
何が気まぐれなのか、誰が気まぐれなのか、どういう意味なのか、メアリー・エレンもジャネットも全く分からない。
ダリルが行方不明になって72時間が経過すると、警察はダリルの同僚から話を聞き始める。が、誰かに恨まれている様子もなく、容疑者らしい人物も見当たらない。
ダリルと最後に会った同僚シンディも、当日家まで送ってもらったと言うが、疑わしき点はない。
メアリー・エレンは、ダリルに起こったことを経験しているようだった。
「首を吊られて窒息する感覚を覚えました。何かを喉から取り除こうとしてる。首の周りにロープがあると感じました。額が痒くて掻き始めると、そこには調節可能なバンダナのようなものがあります。彼が殺された時、バンダナをしていたのだと感じました。やがてダリルは壁を叩き、電話を鳴らし、注意を引くようになりました。何かアクションを起こしてほしい、警察に電話して伝えてほしいと。既に試みたのですが・・。」
とメアリー・エレンは苦笑する。彼女はダリルの居場所を自分で探すことにする。
「毎晩、ダリルの遺体を見つけに出かけました。私の言うことを誰も信じてくれませんでしたから。それにジャネットの生活はとても混乱していました。ニュースメディアへの対応や、小さい子供達の心のケアなどでいっぱいでした。」
ダリルはメアリー・エレンを自分の居場所へと導こうとする。ダリルの居場所に近いと思われる場所に行くと、彼の感情の高まりを感じた。同じ通りに何度も導かれたメアリー・エレンは、その近くで事件が起こったのだと感じる。
「『この辺だ。この辺りで殺された、この辺りだ』とダリルは伝えてきました。警察が熱心に自分を探してくれないことを彼は、とても悔しく思っているのを感じました。自ら探しに行く以外に、どう力になってあげればいいのか分かりませんでした。」
メアリー・エレンは彼に話しかけていた。
「ダリル、あなたを見つけるために、力を貸して、どこにいるか、このエリアにいるのか、手がかりを見せて。」と。
数日後ついにダリルからの合図だと思われるものを見つける。スニーカーだ。それは西の空港方面を向いていた。これは、このエリア、またはここより西方面という意味かもしれない。
行方不明から1週間後、空港近くで彼の車が見つかる。車の中からは血液が発見された。いよいよ警察に遺体探しの圧がかかる。ダリルはどこで殺されたのか、誰によって殺されたのか。
メアリー・エレンは、沼地の高い雑草小さなフェンスのビジョンを見ていた。ダリルはそこにいる。
ダリルの見つけてほしいという思いは非常に強かった。ある日メアリー・エレンが教会へ車を走らせていると、彼がハンドルをつかんで言う。
「警察署に行きたい。グレーのピンストライプのスーツで埋葬されたいことを知ってほしい。」
メアリー・エレンは、ダリルと取引をしなければならなかった。
「分かった、こうしましょう。とりあえず教会に行かせて。その後に警察署に行くから。」
ダリルはハンドルを手放した。
メアリー・エレンは警察署に行き、沼地を探すように言い、彼女のビジョンを伝える。彼は仰向けになっていることも。
それについて警察が、どこにでもあり得る光景だから、人手が足りなくて派遣できないと言うと、詳細についてダリルがメアリー・エレンを通して答えていた。
「ダリルに伝えてくれませんか?そのスーツを着たければ、すぐ遺体を見つける必要があると。」
警察官が言うと、ダリルはいくつかのやり取りの後、こう言った。
「火曜日・・火曜日の朝の前に発見される、そう伝えてほしい。」
そして月曜日の午後、メアリー・エレンの予測が現実となる。
「ダリルの興奮を感じました。私の手も体も震えていて、彼が見つけられて嬉しいのを感じました。」
トラック運転手によって発見された遺体は、沼地のメアリー・エレンが言っていた通りの場所で見つかる。
警察からの電話が鳴ると、メアリー・エレンはこう応答した。
「見つけたんでしょう?もう察知済みですよ。」
彼女が言った通り、遺体は仰向けで見つかった。銃で撃たれ、首にはロープもあった。
「これで信じてくれますか?」
メアリー・エレンは言った。同時にダリルも同じことを言っていた。
スミス警官は言う。
「彼女が予測したことは、実際に彼女が現場にいたのではないかとも思わされる状況でした。警察が外に公開していない情報もあったからです。偶然と呼ぶか、パノラマと呼ぶか、説明がつきません。」
メアリー・エレンの言う通り、ロープが死因ではなく、銃で至近距離から5発撃たれたことが死因だと分かる。
彼女はビジョンで全てを目撃していた。ダリルは殺されるとは思ってもおらず、計画されていたことも知らなかった。
ジャネットは気持ちを語る。
「ダリルをこんな形でなくすなんて、私の人生で最も怖いことでした。殺されたなんて辛い。でも子供達にそれを伝えることが、これまでの何よりも辛いことでした。」
遺体発見により、犯人の情報が寄せられる。情報提供した男は、友人に家具を運ぶのを手伝ってほしいと頼まれ、友人宅のガレージへ行ったと言う。
そこにはバンがあり、大きな防水性シーツがカーペットを巻いたような形で横たわっていた。それを運んでほしいと言われ、感じたのは人間の足。
男が友人に、もしかして人間なのかと聞くと、ショックなことにその答えはイエスだった。しかし男は通報はしなかった。友情の名のもとに見逃したのだ。通報を決意したのは、ダリルの遺体発見がニュースになってからだった。
ダリルがメアリー・エレンに訴えていたことで、一つだけ何のことか分からないことがあった。
「It’s fickle, It’s fickle!」
彼が繰り返し叫んだ言葉だ。
その謎も解明される。犯人の名前は、「フランク・フリックル」だったのだ。
「It’s fickle, It’s fickle!」
メアリー・エレンもジャネットも、fickleが苗字とは思いもしなかった。
そしてダリルに導かれてメアリー・エレンが何度も通った通りには、彼が殺された家があった。
犯人は証拠を消そうと、殺害現場である地下の壁を塗り替えたり、床を漂白したりしていたが、全てを消すのには無理があった。ダリルの青いバンダナも見つかり、銃で撃たれた穴があった。
警察はフランク・フリックルの別居中の妻に話を聞く。この女性は、以前にも話を聞いた、ダリルに家まで送ってもらったというシンシアだった。
彼女によると、家に到着したのは午前0時ごろで、家の中へあげ、一服するのに地下室に送ったと言う。しかし夫フランクが殺すために待ち伏せていたとは知らなかったと。
フランク・フリックルはとても嫉妬深い男で、妻がダリルと浮気していると信じていた。
マリファナを吸うために地下へ行ったダリルは、フランクに撃たれてしまう。さらにフランクは遺体を射撃練習のために使った。
フランク・フリックルは、1997年3月12日に逮捕され、第一級殺人罪で終身刑となる。
ジャネットは言う。
「自分の夫を殺した男の顔を見た時の気持ちは言い表せません。怒り、悔しさ、虚しさ・・。ダリルが死ぬ理由なんてなかった。一緒に子供達を育てて、愛情を注ぐべき人だった。神が理由があって彼をこの世に送ってくれたのに、フランクには彼を奪う権利なんて一つもない。一つも・・。」
スミス警官は、もし今後、超能力者からの情報があれば、もっと早い段階でその情報に重きを置きたいと思うと語る。
ダリルは自分の葬儀で、ついにグレーのピンストライプのスーツを着ることができた。
ジャネットは、メアリー・エレンなしでは乗り切れなかった、極端に途方に暮れていただろうと言う。二人は現在も親しくしている。
その後メアリー・エレンは超能力を開発することにする。 彼女は精神的な癒しと予言の学校で学んだ後、牧師になった。
「事件は私の人生を変えました」
と、現在フルタイムでリーディングをしている彼女は言う。
「当時は大したことではないと思っていましたが、今では大したことだと思います。精神世界が私の天職になりました。」