お一人様、お一人様を遠隔介護する ②

遠隔介護のことを考え始めたとき、まず頭を抱えたのは「どうやって、母の状況を把握するか」だった。もちろん電話という手段はあるが「顔が見えない」「目で様子を確認できない」点はいかんともしがたい。昔の人の常で、弱みを他人(娘にはなおさら)に見せたがらないところがあり、彼女の「元気だから、大丈夫よ」という台詞は7掛けで聞く必要がある。

実際、元気(そう)な声を聞いた後で、「実はあの時、体調が悪くて食べ物を受け付けなかったの。病院で点滴を受けてきたわ」なんて話が続くと、電話口で「元気って本当? 嘘ついてない?」と聞くことも増える。互いにぎくしゃくした気持ちを抱える気まずさ以上に、不安の方が勝ってしまうのだ。

母は80歳までボランティアやシルバー人材派遣センターの仕事を続けていたので、父が亡くなった後も常に第三者との接点があった。母も依頼先や派遣先に顔を出すことで、社会から「元気だよ」とのお墨付きをもらうと同時にきちんと見守られていたのである。

しかし、シルバー人材派遣センターも流石に80歳を超えた高齢者に仕事を続けさせるわけには行かなかったらしい。「何か事故があってからでは遅い」と契約を打ち切られ、その日を境に社会との接点は先細っていった。

「4月からは契約しないって」と淡々と話す母の声を聞きながら、こうして高齢者は社会から「隠された存在」になっていくのだな、と思ったのを覚えている。

ところが前回書いたように、母は自ら地域包括支援センターに連絡を入れることで「社会的孤立」をみごとに回避した。万が一のことがあった場合、その窓口につなぐことができれば最悪の事態は避けられるはずだ。

となると残る課題は、母の毎日の体調、状況をこちらから確認することである。そう考えた時にまず思いついたのは「ベビーカメラ」を使って見守る、という方法だった。ただし、母自身というハードルを突破できればの話。

なにせ、良くも悪くも自立心旺盛で「子どもになんか干渉されたくない」と思っている母親である。恐る恐る提案してみると、案の定「監視されるなんて、牢獄に入っているみたい!」「必要ない!」等々。しまいには「孤独死でいい!」と盛大に反発された。

困り果てて何かいい説得材料がないか悩んでいた時、Twitterの炎上案件が目に飛び込んできた。例の「アマゾン・エコー」肉じゃが・マザコン男のCMである。

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