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シグナル伝達経路(2)-TCR-
CD4陽性T細胞のTCRに抗原が提示された後のシグナル伝達について調べてみた。
参考:日本免疫毒性学会ホームページ ImmunoTox Letter , Immnotoxicology 最前線 免疫毒性とシグナル伝達 金崎佳世子、中村和市 塩野義製薬株式会社 新薬研究所 2002;7(2):12-13
2度めの登場となるこの文献
TCRが抗原ペプチドを認識した後、TCRとMHC複合体の結合を安定化して、細胞内のシグナルかスタート
CD4/8の細胞内ドメインに会合するLck(SrcファミリーPTK)が活性化されることから開始される。
TCRと複合体を形成しているCD3のITAMがチロシンリン酸化を受ける。
そのリン酸基にZAP-70(SykファミリーPTK)がその分子内に有するSH2ドメインを介して会合し、それによりZAP-70はLckからリン酸化を受けキナーゼとして活性化して、活性化シグナルを伝えていく。
ZAP-70の基質となるのはLAT(linker for activation of T cell)やSLP-76などのアダプター分子である
SLP-76はSH2ドメインを介してVavと会合し、Rac/JNK(c-Jun N-terminal kinase)経路を活性化して転写因子AP-1(activator protein1、FosとJunのヘテロダイマー)のリン酸化を誘導。
という経路が存在する。
また、
LATは多くのチロシン残基を融資、リン酸化によりPLC(phospholipase C)やGrb2などと結合しこれら分子を細胞膜に移行させる。
LATとGrb2が結合すると、Grb2内のSH3ドメインを介してSosが会合し、Ras/MAPK(mitogen-activated protein kinase)経路が活性化される。
MAPKはFosの転写を誘導する。
他にも、
PLCの活性化により小胞体からCaイオン放出が引き起こされる。
細胞内Caイオン濃度の上昇によりホスファターゼであるCN(calcineurin)が活性化され、細胞質内にリン酸化状態で存在する転写因子NF-AT(nuclear factor of activated T cell)を脱リン酸化し核内へ移行させる。
AP-1とNF-ATは核内で会合して、IL-2などのサイトカイン遺伝子の転写を誘導する。