シグナル伝達経路(4)-Ras/MAPK経路-
抗原ペプチド提示を受けたTCRからのシグナル伝達を調べていたら、そういえばRasの経路っていろんなところで出てきた!って思ったので次のテーマにしてみる。
Rasにはよく知られている3種類以外にも9種類ある
MAPキナーゼについても4種類が知られている。
そこで、今回はRAS/RAF/MEK/ERKという古典的なRAS/MAPKカスケードと言われるシグナル伝達について調べてみる。
参考:【いまさら聞けないがんの基礎9】Ras/Raf/MEK/ERK(MAPK)シグナル伝達経路とは? ThermoFisher SCIENTIFIC 01.15.2019
まずはMAPKの日本語。
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ=MAPK
マイトジェンとは、有糸分裂促進因子(もしくは誘発因子)のこと。
有糸分裂は、真核生物の細胞分裂における核分裂の様式のこと。
そして、Rasは、ラット(rat)の肉腫(sarcoma)から発見された経緯から名前がついている。最初のヒトがん遺伝子として同定されている。(ヒトに限らない最初のがん遺伝子として同定されたのはSRC)
Rasは低分子量グアノシントリフォスファターゼ(GTPアーゼ)である。
Rasの活性化からシグナル伝達がスタートする。
活性化にはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)が関与している。
不活性型のRasはGDPと結合しているが、GEFが関与することで、GDPとGTPを交換する。
GTPと結合したRasは活性型となり、Rafへとシグナルを伝達する。
Raf、MEK、ERKはすべてキナーゼである。
キナーゼはリン酸化酵素のことである。
下流から今度は見ていきたいと思う。
最後にでてくるERK1/2はMAPK1/3とも呼ばれ、核の中でFOS、MYC、ELK、c-JUNなどの転写因子を制御することで、細胞増殖および生存に必要な遺伝子発現を調節している。
この制御とは、ERK1/2が転写因子をリン酸化することで活性化させることを意味する。
ERK1/2はMEK1/2によってリン酸化される。
RafはMEK1/2をリン酸化している。
この流れが今回のシグナル伝達経路である。
その他に、
Rafの仲間であるBRAFやその下流のMEK、ERKの阻害剤が実際に抗がん剤として使用されている。