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シグナル伝達経路(5)-PI3K/Akt/mTOR経路-
Ras非依存性のメカニズムによっても活性される経路なので、やっておこう。
MAPK経路下流と収束点が共有されているみたい。
参考:【いまさら聞けないがんの基礎8】PI3K/Akt/mTORシグナル伝達経路とは? ThermoFisher SCIENTIFIC 01.11.2019
PI3K、Akt、mTORについてそれぞれ記載していきたい。
①PI3K
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼといい、細胞膜の構成要素で、ホスホイノシチドの代謝前駆体であるホスファチジルイノシトールの3’-水酸基をリン酸化するシグナル伝達タンパク質。
広範な細胞活性を調節することによって細胞生存および細胞死を制御する生物活性脂質分子である。
細胞機能の制御に関与するだけでなく、リンパ球の活性化およびシグナル伝達に関与している。
PI3Kの活性化は、サイトカイン、インテグリン、B細胞受容体(BCR)活性化、あるいはGタンパク質共役受容体(GPCR)リガンドなどの複数の上流シグナルを介して行われる。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)およびGタンパク質共役受容体にリガンドが結合すると、受容体誘導性のPI3K活性化が細胞膜で生じる
活性化されたPI3Kは、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸をリン酸化し、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸を産生させる。
続いて、PIP3の蓄積、ならびにAktおよび3-ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)などのプレクストリン相同ドメインを持つタンパク質の動員がシグナル伝達カスケードを誘発する。
また、PIP3からPIP2を産生(もとに戻す)する経路には、ホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)が関わっており、腫瘍抑制因子と呼ばれている。
②Akt
セリン/スレオニンキナーゼであり、プロテインキナーゼBとも呼ばれる。
広範囲に影響を及ぼすシグナル伝達ネットワークの中心的存在(収束ノード)である。
アミノ末端プレクストリン相同ドメイン、中央のセリン/スレオニン触媒ドメイン、および小さなカルボキシル末端調節ドメインが存在する。
PDK1によって触媒ドメインの活性化ループ中のThr308がリン酸化され、その後ほかの酵素によりSer473のリン酸化反応が起こると完全な活性化となる。
ただし、第2の反応の酵素(Ser473リン酸化酵素)は確定しておらず、有力候補がmTORC2であるが、他の酵素の可能性もいまだ否定しきれていない
③mTOR
複合体を形成し、複数のメカニズムによって活性化される。
2種類のタンパク質複合体mTORC1およびmTORC2のコア触媒ユニットである。
mTORC1複合体は、ラパマイシン感受性で、mTOR, Raptor,およびmLST8から構成される。
翻訳抑制因子4E-BP1およびリボソームタンパク質S6キナーゼ(S6K)の両方をリン酸化することによって、細胞の成長および増殖を制御する。
mTORC2複合体は、ラパマイシン抵抗性で、mTOR, Rictor, mLST8, およびmSin1から構成される。
複数のタンパク質-セリンおよびスレオニンキナーゼAkt上のS473、血清グルココルチコイド調節キナーゼ1(SGK1)、ならびにプロテインキナーゼCα(PKCα)-をリン酸化する。
細胞の生存および増殖を制御するために機能する。
参考:岡庭正格ほか 治療に抵抗性の変異を克服する新世代のmTOR阻害薬の創出 Nature,2016;534:272-276
ラパマイシンはイースター島の土壌から単離された放線菌の賛成するマクロライド系天然物として発見され、免疫抑制の活性が確認されている。
ラパマイシンの標的となるタンパク質がmTORである。
細胞に存在するタンパク質FKBP12と結合した後、mTORのFRBドメインとも結合し、三者の安定な複合体を形成する。
これにより、FKBP12の立体障害が原因で、リン酸化が進まずmTORが活性化できなくなると考えられている。
まとめ
mTORがいろいろなところに作用したのはわかったが、世界中で調べられ過ぎていて、多岐にわたるので、一回では理解しきれないことがわかった。