免疫(36)-細菌感染に対する感染防御1-
免疫を学ぶにあたって、抗原各種にたいして、どのように生体が反応するのかを横断的に学んでいきたいと思う。
これまでは、各個別の言葉を中心にそれに関連した流れを調べてきた。
つながりを未だ作れていないため、抗原から始まる流れの把握に努めていきたい。
今回は皮膚における細菌感染をみていきたい。
引用文献:斧康雄 細菌感染症と生体防御機構 日本臨床微生物学雑誌 2006;16(2):1-6
図1 細菌感染に対する感染防御機構の流れ
ヒトの皮膚からの感染において、本来は物理的バリアとして働いている皮膚粘膜バリアが存在している。怪我などにより、欠損した病変部が存在した場合は細菌の侵入が容易となり、細菌の定着・増殖を経て、感染症を発症しやすくなる。
皮膚・粘膜に障害がある場合の創傷部感染症の原因菌は、障害部位に常在する細菌であることが多いが、場合によっては、糞便や尿などに含まれる細菌の場合も存在する。
粘膜面では、細菌の定着阻止や細菌毒素の中和作用を示す分泌型IgAなどの液性防御因子が分泌されるほかに、細菌の増殖抑制や殺菌に働くリゾチームやラクトフェリンが分泌されている場所も存在する。
細菌が組織に侵入した場合には、食細胞(好中球やマクロファージ)が活発な貪食殺菌作用によって感染防御にあたるが、補体成分も食細胞の遊走因子やオプソニン因子として作用するだけでなく、溶菌作用などを発揮して感染防御に働いている。
好中球による感染防御の役割は、病原細菌や真菌を貪食・殺菌し病巣から除去することである。
好中球は細胞外で増殖する細菌や真菌に対して感染防御の主役として働くため、ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、腸球菌や腸内細菌であるグラム陰性桿菌(クレブシエラ、大腸菌、エンテロバクターなど)、緑膿菌を始めとするブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌などの細胞外寄生菌、(真菌ではアスペルギルスやカンジダ、ムコールなど)に対してその機能を発揮する。
好中球の機能として、接着能、遊走能、貪食能、殺菌能などがある。
細菌感染が発症すると、好中球の数の増加やその機能が亢進し、増殖する細菌に対抗する。
好中球の活性化には菌体成分(ペプチドグリカン、エンドトキシンなど)やIL-1、IL-8、腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症サイトカイン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)など多くの因子によって起こると考えられている。
しかし、莢膜を有する細菌やMタンパクを有する化膿レンサ球菌は、好中球やマクロファージんどの食細胞の貪食作用に抵抗性を示す。
莢膜やMタンパクに対する特異抗体が結合すると初めて貪食が可能となる。
特異抗体の結合は、補体成分を介して菌体の貪食を増強し、グラム陰性菌などに対しては、膜侵襲性複合体を形成し、菌体に穴をあけて溶菌を引きおこす。
また、結核菌などの抗酸菌やサルモネラ属菌などは、ファゴゾームとリソゾームの融合を阻害したり、食細胞内の殺菌物質に抵抗性を示すことで、食細胞内でも生存できる。
これらに対しては、活性化されたT細胞による細胞性免疫が重要な役割を果たす。
活性化されたCD4陽性T細胞はインターフェロンγを産生し、これがマクロファージを活性化することで細胞内寄生菌の殺菌が可能となる。
最後に、
CD4陽性Tリンパ球やCD8陽性Tリンパ球の活性化にはマクロファージなどによる抗原提示が必要である。
CD4陽性Tリンパ球からはBリンパ球を活性化させるILが放出され、形質細胞に変化し、抗体産生を行う流れとなる。