遺伝(6)-DNAポリメラーゼ-
DNAの合成に必要な酵素を見ていこうと思う。
DNAポリメラーゼは、すべての生物種に存在する酵素である。
生物の遺伝情報を担うDNAを合成するという重要な役目がある。
ヒトにおけるDNAポリメラーゼは、この文献によれば、14種類見つかっている。
アミノ酸配列の類似性に応じて、A、B、X、Yの4つのファミリーに分類されている。(なぜこのアルファベットなのだろう?)
それぞれのファミリー毎に特徴的な機能がある。
例えば、
DNAポリメラーゼδやεなどはBファミリーに属し、ゲノムの複製に関与する
DNAポリメラーゼηの属するYファミリーは損傷を受けたDNAを乗り越えて複製する機能を有する。
さて
DNAポリメラーゼの詳しい働きについて
DNAポリメラーゼは、DNA鋳型鎖と対合するデオキシリボヌクレオチド(dNTP)をプライマー鎖の3’末端に転移させることでDNA鎖の伸長を行う。(デオキシリボヌクレオチド三リン酸はdATP、dCTP、dGTP、dTTPからなるが、混合したものはdNTPと記載される)
DNAポリメラーゼの全体構造は、手に例えられ、Finger、Thumb、Palmと呼ばれるドメインによりDNAを捕まえているような姿をしている
Palmドメインの活性残基にdNTPと2つのMg2+が結合し、このdNTPの結合を介して、Fingerドメインが大きく構造変化し、ヌクレオチド転移反応が引き起こされる。
DNAポリメラーゼは、DNA鋳型鎖の塩基に相補的なdNTPを取り込み、DNAプライマー鎖末端の3’-OHとdNTPのαリンとの間にリン酸ジエステル結合を形成して、dNTPのαとβリン間の結合を切断すると考えられている。
この反応は、2つのMg2+依存的な、5価のαリン中間体を経たSN2反応で進行すると考えられている。
しかし、この文献では、時分割タンパク質結晶学で反応過程を追跡することにより、DNAポリメラーゼηにおいて、第3のMg2+が反応に関与することを示した。
参考:中村照也ほか DNAポリメラーゼηによるリン酸ジエステル結合の形成過程の観察 生物物理 2013;53(5):254-257
個人的には、「相補的なdNTPを取り込み」のところに疑問があって、4種類のうち相補的なdNTPをどのように選択して取り込んでいるのか、についても調べたかった。
DNA合成のときに間違えたヌクレオチドを挿入してしまうこともあったと思うので、4種類が競合しているのは間違いないと思う。
鋳型鎖との結合ができるかどうかも関わってくると考えるほうが自然なのかもしれない。
先に鋳型鎖と結合して、その後DNAポリメラーゼによって先に作られていた鎖と結合する手順で想像する。