中華鍋を買った話
とてつもなく美味しい中華屋に出会った。
40〜50歳ぐらいの中国人の夫婦が経営しているお店で、お店の雰囲気もよく、店内には中国語の音楽が流れている。
いつ行っても店内には人が入っており、その店の味の素晴らしさを物語っている。
まず、何を頼んでも美味い。
蒸し鶏の四川ソースがけなるものがあるのだが、店に行く度、毎度注文するお気に入りメニューだ。
ランチでよく注文する黒酢酢豚は今まで食べてきた酢豚の中でもダントツに美味い。
麻婆茄子なんて美味すぎて、胃袋の塩梅を無視してもう一皿注文してしまう程である。
この店を知った時から、中華料理というものに興味を持った。ほうれん草をただ油で炒めただけ(これは言いすぎだが)がとてつもなく美味いのである。これは何か秘密がある…と。
中華料理の術を調べるべく、Youtubeをすぐに漁った。いまの時代は便利なもので、調べれば一流の中華料理人の厨房がすぐに覗けるのである。
私は「Cooking Premium Japan」なるチャンネルへ辿り着いた。
興味のある方は是非覗いてみて欲しい。
中華鍋、中華包丁の存在は知っていたが、私は中国にルーツがあるだけで、ただの鍋や包丁となんら変わりないと思っていた。
しかし、あの形状、素材には理由があった。
中華鍋、あれはとてつもなく薄い鉄の板で形成されている。ごく一般的な中華鍋の暑さは1.2mmほどだそう。この薄さは熱の伝達に大きく関係してくる。
また、深い半球型の形状をしているため、炒める、焼く、揚げる、煮る、茹でる、がこれ一つの鍋で完結する。
中華包丁、一見、その大きさゆえ重く、扱い辛そうだが、それは違った。あの重さ、刃幅がよいのだ。食材へ中華包丁を乗せるだけでスッと歯が入ってゆく。つまり、包丁の自重のおかげで、切りおろす力がほとんど必要ない。刃幅が広いことで手が添えやすく、刀身で食材を潰したり叩いたりすることも可能だ。
プロのワザに魅入った。
すぐに中華鍋の購入の検討に入った。
調べると、山田工業所というところが制作している中華鍋が、日本で唯一の打出し製法で作成されていると知った。その打ち目は美しくひと目で気に入った。プロが使用しているというその品質の高さも購入意欲を掻き立てた。
台東区にあるかっぱ橋道具街の幾つかの店舗で取り扱いがあるようなので、早速足を運んだ。
通りの中でも一際今風のというか、お洒落な店舗が目に留まった。
「釜浅商店」である。
店舗内に鍋などの調理器具が綺麗に並べられており、それぞれの道具の間隔も他の店に比べて広くとってある印象である。そのおかげか、とても商品が見易く、比較もしやすい。
山田工業所の中華鍋は入ってすぐ、正面にあった。
今回は直径27cm厚さ1.6mmの中華鍋、それから、ジャーレンとおたまを購入した。
1.2mmが主流の中、1.6mmの中華鍋を購入した理由は、その蓄熱性能の違いからである。
一般の家庭用ガスコンロでは火力を最大にしたところで、せいぜいプロの厨房の弱火〜中火程度の火力であろう。分厚い中華鍋は熱を十分に蓄えることが可能だ。火力が弱くとも、食材を追加した際の温度の低下の影響を比較的受け辛く、高温の維持が可能なのである。
新しいものというのはとても心を躍らせる。
美しい紋様も確認できた。
釜浅商店のものは、他の取扱店舗と違い、防錆用のニスが塗布されていないらしい。使用前に防錆用ニス除去の為の空焼きは必要ないとのこと。
最初の一度のみ洗剤で洗う。火にかけて水分を飛ばし、少し多めの油をひきクズ野菜を炒めていく。
油が全体へ馴染めば使用前の準備は完了。
使うたびに育っていくようなのでこれからが楽しみである。どんな料理を作っていこうか…
比較的簡単な炒飯を手始めに、目標は例の店の酢豚の再現としよう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。今回はここまでです。
撮影:Konica C35 FD